
配当金を狙った株式投資では、できるだけ高配当な株を見つけて、効率よく資産を増やしていきたいものです。
高配当株を選ぶときに見るべきポイントとして、金額以外にも「配当利回り」と「配当性向」という2つの指標があります。
しかし、これから高配当株投資を始める方のなかには、指標が何を示していて、どのくらいの目安で選ぶべきか知らない方も多いです。
本記事では、配当利回りと配当性向の概要について解説します。
高配当株の基準値や指標を見るときの注意点についても説明しているので、この記事を読んで、継続的に配当金で収入が得られるようになれば幸いです。
目次
配当利回りとは
配当利回りとは、買ったときの株価に対して、1年間でどれくらいの配当金がもらえるのかを示す指標です。
企業の株価や配当金はどれもバラバラなので、金額だけを見ても、どの企業が効率よく配当金で資産を増やせるのか判断できません。
しかし、配当利回りを求めれば、企業ごとに同じ基準で投資効率を比べられるので、どちらの株を買うべきか判断しやすくなります。
配当利回りの計算式は、以下のとおりです。
● 配当利回り(%)=1株あたりの年間配当金額 ÷ 株価(1株の購入金額) × 100
配当金が高い、もしくは株価が低いと配当利回りが上がり、効率よく資産を増やせると判断できます。
配当性向とは
配当性向とは、企業が稼いだ利益(税引後)のうち、どのくらいの割合を配当金として株主に支払うのかを示す指標です。
以下の計算式で、配当性向を求められます。
● 配当性向(%)=1株あたりの配当額 ÷ 1株あたりの当期純利益 × 100
配当金や純利益は企業ごとに異なるので、配当性向を求めれば、企業ごとの株主への還元率を同じ基準で比べられます。
ただし、あくまで「株主にどれくらい還元したか」を示す数値なので、必ずしも配当性向の低い企業の業績が悪いとは限りません。
企業の成長に向けた設備投資や新しい事業の立ち上げに利益を回していれば、配当性向が低い企業の株でも、将来的に増配や株の値上げが生じる可能性があります。
配当利回りと配当性向の違い
配当利回りと配当性向の違いを、以下の表にまとめました。
指標 | 概要 | わかること |
配当利回り | 株価に対する配当金の割合 | 投資効率(投資家の視点) |
配当性向 | 企業の利益に対する配当金の割合 | 経営方針(企業の視点) |
長期的に配当金で利益を狙うには、株を選ぶときに、上記2つの指標をバランスよく見る必要があります。
たとえば、ある企業が利益の多くを配当金として還元している場合、配当利回りと配当性向はどちらも高くなりやすいです。
しかし、企業側は運営に回せる資金が不足しやすくなるので、企業が成長できずに株価や配当額が下がる可能性があります。
逆に、配当性向が低すぎると、もらえる配当金が少なくなって投資効率は下がるでしょう。
高配当株を探すときは、配当利回りと配当性向をバランスよく見て、総合的に判断する必要があります。
配当利回りと配当性向の計算方法
配当利回りと配当性向の計算方法を、具体的な例を使って解説します。
配当利回りの計算例
配当利回りの計算方法を解説します。今回は、以下の2つの企業を例に比較してみましょう。
企業名 | 株価 | 年間配当金 | 配当利回り |
A社 | 2,000円 | 100円 | 5.0% |
B社 | 5,000円 | 150円 | 3.0% |
配当利回りの計算式は、それぞれ以下のとおりです。
- A社:100円 ÷ 2,000円 × 100 = 5.0%
- B社:150円 ÷ 5,000円 × 100 = 3.0%
上記のケースでは、B社の方が配当金は高いものの、A社の方が株価に対する配当金の効率が良いと判断できます。
株価や配当金額が違う企業の株を比較するときは、配当利回りを計算すれば、高い配当金に惑わされずに冷静な投資判断ができるでしょう。
なお、株価は日々変動するため、配当利回りも変動します。
リアルタイムの株価をチェックしたいときは、企業のホームページやYahoo!ファイナンスなどの株価がわかるサイトを利用してみてください。
配当性向の計算例
2つの企業を例に、配当性向を計算してみましょう。
企業名 | 1株あたりの純利益 | 年間配当金 | 配当性向 |
A社 | 500円 | 100円 | 20% |
B社 | 400円 | 150円 | 37.5% |
配当性向の計算式は、それぞれ以下のとおりです。
- A社:100円 ÷ 500円 × 100 = 20.0%
- B社:150円 ÷ 400円 × 100 = 37.5%
なお、配当性向は企業の経営方針によって大きく異なります。上記の例では、B社の方が株主に多くの利益を還元しています。
一方、A社は企業の成長に向けて、利益を自社の設備投資や新しい事業の立ち上げに利用しているかもしれません。
配当利回りと配当性向の目安
配当利回りと配当性向の目安は、それぞれ以下のとおりです。
- 配当利回り|3〜4%以上
- 配当性向|20〜50%
これから株式投資を始める方でも、基準値を知っておけば、配当金で効率よく資産を増やせるでしょう。
配当利回り|3〜4%以上
一般的に、配当利回りが4%を超えている銘柄は「高配当株」と言われます。おもな株式指標における配当利回りの平均値は、以下のとおりです。
(2024年12月19日現在)
指標 | 前期の基準値 | 今期の予想値 |
日経平均 | 1.88% | 2.02% |
JPX日経400 | 2.02% | 2.12% |
日経300 | 1.89% | 2.04% |
プライム全銘柄 | 2.28% | 2.49% |
スタンダード全銘柄 | 2.49% | 2.54% |
グロース全銘柄 | 0.65% | 0.82% |
参照元:日本経済新聞|国内株式指標
平均的な数値を見るかぎり、どれも3%を超える指標はありません。
また、利回りが高すぎると、株の急な値下がりによって「見かけ上の高利回り」が起きている可能性があるので、業績の悪さや減配リスクも考えられます。
高配当株を探すときは「平均以上」かつ「水準が高すぎない」という値で、利回り3〜4%以上の銘柄を選ぶと利益が狙いやすいでしょう。
配当利回りが4%を超えるおすすめの高配当株については、新NISA向け【成長投資枠】配当利回り4%超!アナリストおすすめ高配当株10選 の記事で解説しています。
配当性向|20〜50%
一般的に、配当性向を20〜50%で設定する企業が多いです。
上記の範囲内であれば「株主への還元」と「企業への投資」のバランスが良いと判断できます。
配当性向が20%を下回る株は株主への還元が少なく、50%を超える株は企業の成長投資が不足する可能性があるからです。
ただし、上記の基準にあてはまらない株でも、成長が見込める株はあります。
有名な企業の2023年度の配当性向を、いくつか見てみましょう。
企業 | 配当性向 |
日本郵政 | 62.3% |
ANAホールディングス | 14.9% |
デンソー | 52.39% |
東京エレクトロン | 50.14% |
日本郵政 | 62.3% |
任天堂 | 50.1% |
トヨタ自動車 | 20.4% |
マツダ | 18.2% |
三菱重工 | 30.3% |
三菱商事 | 30.42% |
積水ハウス | 39.76% |
KDDI | 46.5% |
キリンホールディングス | 51.02% |
オリエンタルランド | 17.7% |
日本製鉄 | 26.81% |
TOTO | 45.59% |
丸紅 | 30.4% |
日本郵船 | 29.9% |
川崎汽船 | 57.37% |
有名で成長率の高い企業でも、配当性向が20%を下回る企業や50%を超える企業もあります。
成長段階や業界の特性によって目指す水準が違うので、配当性向だけでなく、その他の指標を見ながら企業の成長率を判断しましょう。
配当利回りと配当性向を調べる3つの手順
配当利回りや配当性向を企業が公表していない場合、以下の3ステップで調べられます。
- 決算短信で配当額や業績を確認する
- 株価を確認する
- 計算する
順番に見ていきましょう。
1.決算短信で配当額や業績を確認する
まずは、配当の金額や企業の業績を確認する必要があります。それぞれの詳細は、決算後に公表される各企業のホームページ等にある「決算短信」で確認できます。
たとえば、三菱商事の2024年3月期の決算短信は、以下のとおりです。
配当金については「配当の状況」で、年間の合計配当金額(1株当たり)を確認します。
次に、業績については「連結経営成績」の「基本的1株あたり当期純利益」の数値を確認しましょう。
楽天証券やSBI証券などのネット証券では、証券会社の公式サイトにある「会社四季報」でも業績や配当金額を確認できます。
2.株価を確認する
企業の業績や配当金を把握したら、購入時の株価を確認しましょう。これから株を選ぶ場合、現在の株価を見れば「配当利回り」を計算できます。
リアルタイムの株価は、利用している証券会社の取引画面やYahoo!ファイナンスで確認が可能です。
3.計算する
それぞれ以下の情報を計算式に当てはめ、購入を検討している株の配当利回りと配当性向を計算します。
- 配当利回り(%)=1株あたりの年間配当金額 ÷ 1株の購入金額 × 100
- 配当性向 (%)=1株あたりの配当額 ÷ 1株あたりの当期純利益 × 100
それぞれの目安となる数値は「配当利回りと配当性向の目安の章」で解説しているので、検討中の株の数値と比較してみてください。
配当利回りと配当性向を見るときの3つの注意点
配当利回りと配当性向を見るときは、以下の3つに注意すべきです。
- 予想値と実績値は異なる
- 利回りが低くても利益が狙える可能性がある
- 利回りや配当性向が高すぎるとデメリットも生じる
冷静に高配当株を見つけられるように、抑えるべきポイントを知っておきましょう。
予想値と実績値は異なる
企業やメディアが公表している配当利回りには、予想値と実績値の2種類があります。それぞれの概要は、以下のとおりです。
- 予想値:見通しに基づく予測値なので、変わる可能性が高い
- 実績値:前期の利回りなので、今期の数値ではない
たとえば、企業が「1株当たり年間100円(予想)」と公表していても、業績が悪くなると配当金は減るかもしれません。
公表されている予想値はあくまで参考値なので、低くなる可能性を考慮して投資を検討しましょう。
利回りが低くても利益が狙える可能性がある
配当利回りが低い企業でも、利益を自社の成長に向けて投資していれば、将来的に株の値上げや増配で利益が狙える可能性があります。
むしろ、これから成長していく企業の場合、利益を配当に回していると成長できないので、株主に利益を還元できなくなるでしょう。
投資先を判断するときは、配当利回りや配当性向の数値だけでなく、業績や企業の成長戦略などを見ながら総合的に判断すべきです。
利回りや配当性向が高すぎるとデメリットも生じる
配当利回りや配当性向が高すぎると、かえって損失リスクが高くなる可能性があります。
たとえば、成長資金を削って高額な配当金を出していると、一時的に利回りは高くなるでしょう。
しかし、資金が足りなくなると経営を維持できないので、株の値下がりや減配が起きるかもしれません。
また、配当性向が高すぎる企業は、業績が悪化している状態で無理に配当金を出している可能性もあります。
配当利回りと配当性向以外に銘柄選びで見るべき指標
配当利回りと配当性向以外にも、高配当株を探すときは以下4つの指標を確認しましょう。
指標 | 概要 | 特徴 |
株価収益率 (PER) | 株価が1株あたりの利益の何倍かを示す | 低いほど割安と判断される |
株価純資産倍率 (PBR) | 株価が1株あたりの純資産の何倍かを示す | 1倍未満なら割安と判断される |
自己資本利益率 (ROE) | 純資産を使って、どれだけ効率よく利益を出しているかを示す | 高いほど企業の収益性(稼ぐ力)が高いと判断される |
総資本利益率 (ROA) | 借入金を含むすべての資産を使って、どれだけ効率よく利益を出しているかを示す | 高いほど効率的な経営ができていると判断される |
上記の指標を参考にすれば、配当金以外の面で企業を評価できます。
たとえば、配当利回りが高くてもPERが低すぎる場合は、業績が悪くなるサインかもしれません。
また、ROEが低くなっていると、将来の増配が期待できない可能性があります。
配当金以外のさまざまな指標をチェックすれば、成長が見込める株を見つけられるので、長期的に配当金で資産を増やし続けられるでしょう。
株式投資に関する指標については、株式投資に役立つ指標とは|明日から使える数値をわかりやすく解説!の記事で詳しく解説しています。
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まとめ
できるだけ高配当がもらえる株式を運用していれば、株式投資で安定した収入を得られる可能性があります。
ただし、高配当株のなかには、実質的に投資の効率が悪い株もあります。
そのため、配当利回りや配当性向などの指標を見ながら、企業の配当金を総合的に評価したうえで投資先を決めるべきです。
企業の「決算短信」を見れば、配当金額や業績を把握できるので、以下の計算式にあてはめて数値を求めましょう。
- 配当利回り(%)=1株あたりの年間配当金額 ÷ か1株の購入金額 × 100
- 配当性向(%)=1株あたりの配当額 ÷ 1株あたりの当期純利益 × 100
配当利回りや配当性向が高すぎると、株の値下がりや減配などのリスクもあります。
そのため、これから高配当株を探すときは、配当利回りは3〜4%以上、配当性向は20〜50%を目安に銘柄を選ぶのがおすすめです。
配当金を含む株式投資には、損失が生じるリスクがあります。
株の値動きに左右されず、安定して資産を増やすために、配当金に関する基本的な知識を身につけながら投資を続けていきましょう。
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