
三菱重工業株式会社(東証プライム7011)は、三菱グループの御三家と呼ばれる「三菱商事」「三菱UFJ銀行」と並ぶ企業のひとつです。
船や航空機、発電機などの部品を製造している企業で、コロナ禍明けに業績がV字回復した影響により、2024年に入ってからも業績と株価が上昇しています。
2024年度の配当金は4期連続の増配が見込まれており、三菱重工の株主になって値上がり益と配当益を同時に狙おうと考える方もいるでしょう。
本記事では、三菱重工業の配当金額やもらえる時期、配当性向、配当利回りについて解説します。
三菱重工業の株はNISAの成長投資枠でも買えるので、非課税での運用も可能です。
目次
三菱重工業の配当金はいくら|予想は4期連続の増配
2024年度(2024年4月1日〜2025年3月31日)の三菱重工業の配当金は、1株あたり年間22円(予想)です。
支払い回数は、年2回に分かれています。中間配当(2024年9月30日)は1株あたり11円で確定しており、期末配当(2025年3月31日)も同じく11円が見込まれています。
過去5年度分の配当金の推移(1株あたり)を、以下の表にまとめました。
事業年度 | 中間配当 | 期末配当 | 年間合計額(株式分割を考慮) |
2025年度3月 | 11円(予想) | 22円(予想) | |
2024年度3月 | 8円 | 12円 | 20円 |
2023年度3月 | 8円 | 12円 | 20円 |
2022年度3月 | 6円 | 7円 | 13円 |
2021年度3月 | 4.5円 | 5.5円 | 10円 |
2020年度3月 | – | 7.5円 | 7.5円 |
2019年度3月 | 7.5円 | 7.5円 | 15円 |
参照元:三菱重工 | 株主還元・配当
三菱重工業の配当金は2020年度に減配していますが、2021年度には2.5円の増配。2024年度の1株あたりの配当金が予想どおり22円であれば、4期連続の増配となります。
今期に受け取れる配当金額は、100株(単元株)あたり年間2,200円の見込みです。
三菱重工業の配当情報は、こちらの三菱重工業公式サイトで確認できます。決算後45日以内に公表される「決算短信」にも記載されるので、株主になったら2025年5月中旬に公表される資料を確認しましょう。
株式分割と配当金の考え方
三菱重工業は2024年4月1日付で株式分割を実施し、1株を10株に分割しました。
株式分割とは、発行済みの1株を複数の株に分ける施策です。株数が増えた分だけ理論上の株価も下がるので、株の購入ハードルが下がり、投資家が新たな企業に参入しやすくなります。
たとえば、三菱重工業の株を100株持っていた場合、2024年4月に行われた株式分割後の保有株数は1,000株です。しかし、保有株数が10倍になっても、1株あたりの配当金が1/10になるので、年間の配当金額は変わりません。
それでも、株式分割で三菱重工業の新たな株主が増えやすくなるので、企業が成長すれば株価や配当額が上がりやすくなるでしょう。
配当金にかかる税金|手取り
三菱重工業の株を課税口座(一般、特定)で運用している場合、配当金に対して20.315%の税金がかかります。税率は、以下のとおりです。
- 住民税(5%)
- 所得税、復興所得税(15.315%)
2024年度の三菱重工業の配当金は、100株あたり年間2,200円(予想)なので、税引後に受け取れる配当金額は、1,753円です。
【計算式】(100株×22円)×(1−20.315%)=1,753円
SBI証券、楽天証券のNISA口座では、成長投資枠で三菱重工業の株を購入できます。2,200円の配当金を満額受け取りたいときは、ご利用を検討してみてください。
三菱重工業の配当利回りと配当性向
三菱重工業の配当利回りは0.97%(2024年度予想)で、配当性向は30.3%(2023年度実績)です。過去5年分の推移については、以下の表をご覧ください。
事業年度 | 配当利回り | 配当性向 |
2024年度(2024/4/1〜2025/3/31) | 0.97%(予想) | ー |
2023年度 | 1.38% | 30.3% |
2022年度 | 2.67% | 33.5% |
2021年度 | 2.49% | 29.6% |
2020年度 | 2.17% | 62% |
2019年度 | 5.49% | 57.8% |
参照元:IR BANK|7011 三菱重工業 | 配当金の推移
直近4年間の配当利回りは、約1.3〜2.7%で推移しています。しかし、2024年度の予想利回りは1%を切っている状態です。
今年度の配当利回りが低い理由は、2024年に三菱重工業の株が3倍以上に値上がりしているからだと考えられます。
三菱重工業は、新たな事業への投資と経営の安定性のバランスを保ちながら、継続的に配当金を支払うと公表しています。そのため、三菱重工業の株主になれば、今後も安定的な配当益が期待できるでしょう。
競合他社との比較
投資先を判断しやすくするために、2024年度の三菱重工業の配当利回りと配当性向を、競合他社と比較しました。結果は、以下の表をご覧ください。
会社名 | 配当利回り (2024年度予想) | 配当性向 (2023年度実績) |
三菱重工業(7011) | 0.97% | 30.27% |
川崎重工業(7012) | 2.29% | 33% |
IHI(7013) | 1.45% | −22.18% |
参照元:みんかぶ
上記3社は、国内の「日本三大重工業メーカー」として有名な企業です。2023年度の三菱重工業の配当性向は競合に並ぶ成績なので、株主に還元している利益は妥当だと判断できます。
2024年度の三菱重工業の配当利回りは競合他社より低い水準ですが、三菱重工業の株価が高騰している影響が考えられるので、純粋な比較はできません。
2023年度の配当利回りは川崎重工業と同じ水準だったので、これから株価が安定すれば配当利回りが高くなる可能性があります。
三菱重工業の配当金はいつもらえる
三菱重工業の配当金が支払われる時期と権利確定日を、以下の表にまとめました。
項目 | 中間配当 | 期末配当 |
権利確定日 | 9月30日 | 3月31日 |
支払い時期(予定) | 12月上旬 | 6月下旬 |
三菱重工業の配当金を受け取るには、株主名簿への登録が必要です。反映に時間がかかるので、三菱重工業の株主になるためには、基準日の2営業日前までに株を買う必要があります。
2024年度の期末配当に向けて、2025年3月27日(木)の15時30分までに三菱重工業の株を買いましょう。
三菱重工業の業績
三菱重工業の事業年度は、4月1日から翌年3月31日です。過去5年分の業績を、以下の表にまとめました。
(単位:百万円)
決算情報 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
2024年度(2024/9/末時点) | 4,900,000 | – | 168,279 | 107,120 |
2023年度 | 4,657,147 | – | 315,187 | 222,023 |
2022年度 | 4,202,797 | – | 191,126 | 130,451 |
2021年度 | 3,860,283 | – | 173,684 | 113,541 |
参照元:三菱重工|業績ハイライト
直近3年間の業績は、右肩上がりです。2024年度の中間決算内容を前年同期と比べると、売上高は2,288億円の増加、純利益は151億円も増加しています。
三菱重工業の業績が伸びている理由のひとつは、発電機に使われる部品「GTCC」の受注率が大幅にアップしている点です。とくに、南北のアメリカ大陸での発注が増えていて、ガスタービン世界市場(出力ベース)では2年連続で世界トップシェアを記録しました。
また、防衛産業として「航空エンジン」や「原子力発電」の需要も高まった影響で、コロナ禍以降に業績が伸びたと推測されます。
三菱重工業は、2024年度の純利益が2,300億円を超える(前年比80億円アップ)と予想しているので、今年度も業績アップが期待できるでしょう。
三菱重工業の事業内容
三菱重工業は、おもに4つの領域で事業を行っています。
- エナジー
- プラント・インフラ
- 物流・冷熱・ドライブシステム
- 航空・防衛・宇宙
それぞれ紹介します。
エナジー
エナジー事業は、環境に配慮したうえで安定したエネルギー供給ができるように、世界中に発電システムを提供している部門です。
既存プラントの安全な運転を目指す「原子力発電」や、水素燃料に対応した「火力発電」など、さまざまな発電技術の開発を行っています。
とくに、世界最高水準の効率性と信頼性を備えた火力発電システム「ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)」は、2年連続で世界シェア1位を達成しています。
物流・冷熱・ドライブシステム
物流・冷熱・ドライブシステム事業では、暮らしや産業に欠かせない製品を作っている部門です。おもに3つの分野に分かれて、以下の製品を作っています。
- 物流:倉庫や工場で使う無人フォークリフト、重量物運搬車、紙を作る機械
- 生活:家庭用や業務用のエアコン、給湯機、食品を包装する機械
- 自動車:自動車のエアコン、タイヤ、ターボチャージャー
できるだけ少ない電力で稼働できる製品を開発し、環境にやさしい未来社会の実現を目指しています。
プラント・インフラ
プラント・インフラ事業は、人々の生活に必要な施設や設備を作っている部門です。環境に配慮するために、以下のような製品やサービスを提供しています。
- 工場のCO2を減らす回収設備
- ごみを電気に変える発電設備
- カーボンニュートラルな製鉄設備
- 船舶用のLNG燃料ガス供給システム
- 水素やアンモニアを作る化学プラント
工場、交通、エネルギーなど、暮らしに欠かせない設備をより環境にやさしい形で提供しています。
航空・防衛・宇宙
三菱重工業は、空と宇宙、そして日本の安全を支える事業を行っています。おもな事業分野は、以下のとおりです。
- 航空機事業:航空機「ボーイングシリーズ」の主翼や胴体などの製造
- 宇宙事業:人工衛星やロケットの打ち上げ
- 防衛事業:戦闘機や潜水艦、救助用ヘリコプターなどの製造
高い技術力と信頼性で、人々の安全な暮らしを支えています。
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三菱重工業と競合他社の業績比較
三菱重工業と競合他社の業績を比較します。前年度(2023年度)の業績を、以下の表にまとめました。
(百万円)
会社名 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 |
三菱重工業(7011) | 4,657,147 | – | 315,187 | 222,023 |
川崎重工業(7012) | 1,849,287 | – | 31,980 | 25,377 |
IHI(7013) | 1,322,591 | −70,138 | -72,280 | -68,214 |
参照元:みんかぶ
上記3社は、コロナ禍による飛行機利用の減少や中国の景気悪化により業績が下がった企業です。
しかし、三菱重工業の業績は回復が早く、2023年度の決算では三菱重工業の売上高が約4.6兆円、純利益が2,220億円を記録。競合他社のなかでも、ダントツ1位の結果となりました。
今後は、いつまで業績の伸びが続くのかが懸念点です。それでも、2024年度の大量受注を年度内に消化しきれない可能性があるので、今後も良好な業績が続くと予想されます。
三菱重工業の株主優待
三菱重工業は、株主優待を実施していません。
企業の成長に向けて新しい事業に投資し、増配や株の値上がりで株主に利益を還元しています。
三菱重工業の株価|10倍になった理由
三菱重工業の株価は、2,256.5円(2024年12月10日終値)です。以下のチャートでは、直近10年間の株価の推移を示しています。
出典:Yahoo!ファイナンス|三菱重工業(株)【7011】
2016年から2023年頃までの約8年間の株価は、約200〜500円で推移していました。
2024年には自社の業績アップに伴って株価が上昇し、2024年2月には1,000円を突破。2024年12月には、過去最高額の2,485円を記録しました。2020年11月の約220円台と比べると、直近3〜4年間で三菱重工業の株価は約10倍に伸びています。
1年後の株価が最高2,800円になると予想しているアナリストもいるので、今後も株の値上がりが続くかもしれません。
三菱重工業の株価が上がったおもな理由は、以下の2つが考えられます。
- 業績の伸びによる、企業の期待値アップ
- 株式分割による、新規投資家の参入
ただし、コロナ禍の反動による一時的な値上がりの可能性もあるので、これから業績の伸びが少なくなれば株価や配当金の伸びも減っていくでしょう。
三菱重工業と競合他社の株の値動きを、以下の表にまとめました。どこの株を買うか迷っているときは、他社の株価と比べると判断しやすいでしょう。
会社名 | 現在の価格 | 年初来高値 | 年初来安値 |
三菱重工業(7011) | 2,256.5円 (2024/12/10終値) | 2,485円 (2024/12/5) | 815円 |
川崎重工業(7012) | 6,097円 (2024/12/10終値) | 7,155円 (2024/11/8) | 3,087円 (2024/1/4) |
IHI(7013) | 8,225円 (2024/12/10終値) | 9,479円 (2024/11/11) | 2,729円 (2024/1/4) |
参照元:Yahoo!ファイナンス|日本株
三菱重工業の自己株式取得
2024年度において、三菱重工業は自己株式取得を行っていません。
ただし、2023年度には「会社法第155条第7号」に基づく普通株式の取得(100株に満たない株の買取)を行っています。概要は以下の表をご覧ください。
区分 | 株式数(株) | 価額の総額(円) |
当事業年度における取得自己株式 | 4,632 | 39,285,894 |
当期間における取得自己株式 | 740 | 1,019,010 |
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まとめ
本記事では、三菱重工業の配当金について解説しました。
2024年度において、三菱重工業の配当金は、1株あたり年間22円(予想)です。期末配当が予想通りの11円(1株あたり)であれば、2021年度から4期連続での増配を達成します。
単元株(100株)の配当金額は年間2,200円の予想で、実際に入金される金額は、税抜き後の1,753円です。配当金の権利確定日は、9月30日(中間)と翌年3月31日(期末)です。支払い時期は、中間で12月上旬、期末は翌年の6月下旬を予定しています。
三菱重工業には株主優待制度がありません。それでも、コロナ禍明けの業績のV字回復によって株価が高騰しており、2024年には過去最高額の2,485円を記録しています。
今後も株価が上がると予想するアナリストも多いので、三菱重工業の株を持っていれば、配当益と値上がり益の2軸で資産を増やせる可能性があります。銘柄選びの参考になれば幸いです。
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