
投資信託より効率よく資産を増やすために、ETFを長期的に運用したいと考える方もいるでしょう。
結論、商品選びと運用方法が適切であれば、ETFの長期投資でも十分に利益を狙えます。
しかし、短期トレード向きの商品や高リスクな取引方法などがあるため、一部の投資家の間では「ETFは長期投資に向かない」と言われているのも事実です。
そこで本記事では、ETFが長期投資に向かないと言われる理由と、利益を狙うコツについて解説します。
投資信託やほかの投資先についても紹介しているので、コツコツ資産を増やしながら、お金に余裕のある状態で老後を迎えたい方は参考にしてみてください。
ETFが長期投資に向かないと言われる5つの理由
一部の投資家の間で「ETFが長期投資に向かない」と言われる理由は、以下の5つです。
ETFのデメリットを知っておけば、自分にあった投資先なのかを冷静に判断でき、老後に向けた資産運用を安心して続けられるでしょう。
分配金の再投資に手間がかかる
ETFでもらえる分配金は、原則として「再投資型」を選べません。
分配金で同じ商品を買い増すには、一度現金で受け取ってから再び自分で注文する必要があります。
一方、投資信託でもらえる分配金の使い道は、以下の2パターンから選べます。
- 再投資型:分配金で同じ商品を自動で買い付ける方法
- 受取型:分配金を現金で受け取る方法
再投資型は購入時手数料がかからないうえに、自動で買い付けが完了するので、手間をかけずに資産を増やせるでしょう。
分配金をフル活用したいときは、投資信託の方が長期投資に向いているかもしれません。
分配金の仕組みやおすすめの受取コースは、「新NISAの再投資型とは?受取型とどっちを選ぶべきかを解説」記事で詳しく解説しています。
積立に対応している証券会社が少ない
投資信託の場合、基本的にどの証券会社でも「積立設定(自動購入)」ができます。しかし、ETFの場合、積立に対応している証券会社が少ないです。
長期間ほったらかしで運用したい方は、定期的な買付が必要なETFを避けた方がよいでしょう。ちなみに、一部のネット証券は、ETFの積立サービスを提供しています。
ただ、ETFは株式とおなじ「1口単位」での購入となり、指定した金額ピッタリでの購入はできません。
指定した金額が1口あたりの価格より少ない場合は買付されないので、投資信託より積立のハードルは高いと言えます。
短期トレード向けの複雑なETF商品がある
ETFには、短期トレード向けの複雑な商品があります。仕組みを知らずに長期保有していると、どんどん損失が膨らむ可能性があります。
短期トレード向けのおもなETFの種類と特徴を、以下の表にまとめました。
種類 | 概要 | メリット | リスク |
レバレッジ型 | 指数(日経225やTOPIXなど)の値動きに対し、2倍や3倍の値動きを目指すETF | ・少額投資でも利益が狙える ・小さな値動きでも利益が狙える | ・短期の値動きを指標としているので、長期予想ができない ・一度でも株価が下がると、回復が見込みにくい |
インバース型 | 指数と反対の値動きを目指すETF | ・株価が下がったときに利益が狙える ・少額投資でも利益が狙える(ダブルインバース型の場合) | ・運用手数料が高い ・短期の値動きを指標としているので、長期予想ができない |
テーマ型 | 特定の業種や分野に投資するETF | ・個別株より分散投資効果がある ・トレンドに応じて売買すれば利益が狙える | ・業界の人気がなくなれば値下がりするので、長期の値動きが読めない |
レバレッジ型とインバース型の商品について、金融庁は「主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品」※であると、改めて注意を呼びかけています。
※引用:金融庁|レバレッジ型・インバース型ETF等への投資にあたってご注意ください
リターンが大きい一方で損失リスクも高いので、長期で運用したいときは、短期トレード向けの商品は避けましょう。
インバース型ETFのリスクと活用方法については、ダブルインバース型ETFは危険!?メリットやデメリット、おすすめの活用方法などを紹介 の記事で解説しています。
アクティブ運用のETFはリターンが少ない
多くのETFには、日経225やTOPIXなどの指標に連動する「パッシブ運用」が取り入れられています。
指数を上回る成果を目指す「アクティブ運用」の商品と比べ、長期投資向けのETFでは大きな利益が狙いにくいでしょう。
たとえば、月3万円分の積立を20年間運用した場合、利回り5%と6%では最終的な金額に以下のような差が生じます。
年利 | 20年後の最終金額 |
5% | 1,233万円 |
6% | 1,386万円 |
参照元:金融庁|つみたてシミュレーター
上記のケースでは、たった1%の年利の違いでも、20年後には「153万円」の差が生じています。
しかし、一般的に「パッシブ運用」の方が成績が良い傾向にあるので、長期投資向けのETFを持っていれば、アクティブ運用より効率よく資産を増やせるかもしれません。
希望どおりに売買できない可能性がある|流動性リスク
ETFは株式と同じように、市場で売買される商品です。そのため、取引量が少ない(流動性が低い)ETFは、希望どおりに取引できない可能性があります。具体的には、以下のようなパターンが挙げられます。
- 希望より高い価格でしか買えない
- 希望より安い価格でしか売れない
- 取引相手が見つからず、売買が成立しない
- 売値と買値の差額(スプレッド)が大きく、取引コストが増える
流動性の低いETFは、毎月決まった金額で買えなかったり、資金が必要なときでも売れなかったりするので、長期投資には向いていません。
ETFを長期投資で成功させる4つのコツ
ETF投資で利益を狙うには、以下の4つのコツを意識しましょう。
リスクとリターンのバランスが取れていれば、ETF運用でも老後の生活資金を確保できるでしょう。
ETFと投資信託を使い分ける
ETFと投資信託を使い分ければ、より効率的に資産を増やせる可能性があります。たとえば、以下のように組み合わせると、両者のメリットを活かした運用ができるでしょう。
- 投資信託(70〜90%):インデックスファンドで長期的にリターンを狙う
- ETF(10〜30%):レバレッジ型やインバース型で短期的にリターンを狙う
投資信託で「守りの投資」をしつつ、ETFで「攻めの投資」に挑戦すれば、投資信託1本で運用するよりも大きな利益が期待できます。
ETFと投資信託の違いや向いているタイプを知りたいときは、こちらの章から読んでみてください。
長期投資に向いているETFを選ぶ
ETF運用で長期的に利益を狙うには、以下の項目をチェックしながら商品を選びましょう。
- 取引量が多いか
- 過去の運用成績はどうか
- 投資先が分散されているか
- 運用コスト(売買手数料、信託報酬)が低いか
- 短期トレード向けの商品(レバレッジ型、インバース型など)ではないか
たとえば、米国株ETFの「iシェアーズ・コア S&P500 ETF」は、S&P500の値動きに連動した成果を目指しているETFです。
信託報酬が低いうえに、金融やエネルギー、通信などの幅広い分野の米国株に投資しているので、低コストで分散効果も高いETFだと言えます。
こちらの記事では、ほかにも おすすめのETFを紹介しているので、どの商品を買えば良いか迷っているときは参考にしてみてください。
SBI証券で購入できる S&P500連動型投資信託・ETF
楽天証券で購入できるS&P500連動型投資信託・ETF
セクターの異なる複数のETFに分散投資する
リスクを抑えて長期投資するために、異なるセクター(業種や分野)のETFに分散投資しましょう。特定のセクターだけに投資していると、トレンドの波によって損失が大きくなる可能性があるからです。
【ETFで投資できるセクター例】
- 金融:銀行、保険
- ヘルスケア:医療、製薬 例:VHT(Vanguard Health Care ETF)
- 生活必需品:食品、日用品 例:VDC(Vanguard Consumer Staples ETF)
- テクノロジー:半導体、クラウド 例:SOXL(フィラデルフィア半導体3倍連動型ETF)
- エネルギー:石油、再生可能エネルギー 例:VDE(バンガード・米国エネルギー・セクターETF)
さまざまな分野に投資していれば、特定のセクターで価格が下がってもほかの分野でカバーできるので、損失リスクを抑えられます。
1本で多くのセクターに分散投資している商品もあるので、まずはセクター分散に優れたETFを1本買ってみるのがおすすめです。
分散投資の種類やポイントについては、株初心者向け!分散投資の種類やメリット・デメリット徹底解説 で解説しています。
定期的にポートフォリオを見直す|年1回程度
長期投資でリスクを抑えるには、年1回程度のポートフォリオの見直しが欠かせません。
時間が経つと、はじめに設定した資産配分のバランスが崩れるからです。
たとえば、はじめに「米国株ETF50%、日本株ETF50%」と決めていても、米国株が値上がりすると「米国株ETF70%、日本株ETF30%」のように配分が変わります。
上記の状態を放っておくと、いざ資金が必要なタイミングで米国株が下落し、老後資金が足りなくなる可能性があります。
年1回程度の見直しで資産配分を調整すれば、長期投資でもリスクを抑えられるでしょう。
ただし、頻繁に売買するとドルコスト平均法の効果が薄れるので、調整は最小限に抑えるように意識してみてください。
長期運用で失敗しないためのポイントは、【投資初心者向け】ほったらかし投資で失敗しないポイント解説 で詳しく解説しています。
ETFと投資信託の違い
ETFと投資信託は、どちらも複数の銘柄に分散投資できる商品です。長期投資におけるおもな違いを、以下の表にまとめました。
商品 | 概要 | メリット | デメリット |
ETF (上場投資信託) | 株式と同じように、市場で売買できる投資信託 | ・手数料が安い 値動きを確認しやすい ・理想のタイミングで売買しやすい | ・定額積立が難しい ・分配金の再投資に手間がかかる ・価格がリアルタイムで変動するため、感情的な売買につながりやすい |
投資信託 | 投資家から集めた資金を、運用会社がまとめて運用する商品 | ・定額で積立ができる 分配金を自動で再投資できる | ・ETFより運用コストが高め ・リアルタイムでの売買ができない |
長期投資における両者の違いは、おもに「運用の自由度」と「管理のしやすさ」です。
ETFは手数料が安いうえに、市場価格をリアルタイムで確認できるため、理想のタイミングでの売買を低コストで実現できます。ただし、分配金の再投資や定額での積立ができません。
管理に手間がかかりやすい点は、ETFが長期投資に向かないポイントです。その点、投資信託は定額積立や分配金の再投資が自動で完了するので、長期間ほったらかしでも資産を増やしやすいでしょう。
ただし、手数料はETFより高いといったデメリットがあり、どちらに投資すべきかは投資スタイルや重要視するポイントによって変わります。
もっと理解を深めたうえでETFに挑戦したいときは ETFとは?初心者向けETFの基礎知識!プロが教えるこれだけは知っておきたいポイント参考にしてみてください。
ETFでの長期投資が向いている人
ETFでの長期投資は、以下のような方に向いています。
- 運用コストを最小限にしたい人
- リアルタイムでも取引したい人
- 投資信託より高いリターンを狙いたい人
ETF最大のメリットは、株式と同じようにリアルタイムで取引できることです。積立を続けつつ、理想のタイミングで追加投資やポートフォリオ調整ができるので、柔軟に運用を続けられます。
投資信託での長期投資が向いている人
投資信託での長期投資は、以下のような方に向いています。
- 投資に慣れていない人
- NISA枠を使い切っていない人
- 短期的な値動きに不安を感じやすい人
- 資産運用にかかる手間を最小限にしたい人
投資信託の最大のメリットは、資産運用にかかる手間がとにかく少ないことです。
定額積立に加えて、分配金も自動で再投資できるため、ほったらかしでも複利効果を活かしながら効率よく資産を増やせます。
投資初心者やNISA枠を使い切っていない人は、少額で始めやすい投資信託の運用から始めてみてください。
ETF以外で長期投資に向いている投資先
ETF以外で長期投資に向いている商品を、以下の表にまとめました。
投資先 | 長期投資に向いている理由 |
株式投資 (配当金狙い) | ・株の値動きに左右されず、継続して配当収入が得られる ・業績が安定、または伸びている企業なら増配や株の値上がりでも利益が狙える |
債券 | ・満期まで持っていれば、約束した金額で売却できる ・保有期間中に一定の利子を受け取れる |
不動産投資信託 (REIT) | ・株式や債券より、高配当が期待できる ・株式と値動きが異なり、長期での分散投資に適している |
コモディティ (金、プラチナなど) | ・実物の資産なので、不景気のときでも価値を維持しやすい ・株式と値動きが異なり、長期での分散投資に適している |
すべての投資には、為替変動や市場の値下がりなどのリスクがあります。投資する前に商品の特徴やリスクを理解し、自分のスタイルに合った投資先を選びましょう。
また、上記はETFや投資信託を通じても投資できるので、分散投資の選択肢の1つとして検討してみてください。
ETFの長期投資に関するよくある質問
ETFの長期投資に関するよくある質問を紹介します。
ひとつずつ回答していきます。
新NISAでETFは買える?
新NISAでは、ETFの購入ができます。NISAでのETF運用は利益が非課税であるうえに、購入できる商品も金融庁の一定の基準を満たした商品のみです。
ETF投資を始めるときは、まずはNISA口座でETFを買ってみるのがおすすめです。
ETFでおすすめの銘柄はどれ?
ETFでおすすめの銘柄は、iShares S&P500に連動しているETFです。たとえば、米国株ETFの「iシェアーズ・コア S&P500 ETF」は、信託報酬が低く、低コストで長期運用ができます。
米国株の上位500銘柄に分散投資しているので、長期でも低リスクで運用しやすいでしょう。こちらの記事では、ほかにもおすすめのETFを紹介しているので、銘柄選びの参考にしてみてください。
ETF投資を少額で始めるのは意味ない?
少額からのETF投資でも、十分に利益が狙えます。むしろ投資に慣れるまでは、リスクを抑えるために少額で始めるのがおすすめです。
金融庁の「投資信託」の運用データを見ると、20年間運用を続けた場合は2〜8%の利益※がでています。※参照元:金融庁|教えて虫とり先生(第3回)
毎月5,000円を積み立てて年利5%で運用できれば、20年後に86万円の利益が得られるので、まずは少額からETF投資を始めてみましょう。
もっと詳しく知りたい方は
新NISAで毎月5,000円積立したら将来いくら?少額でも積立投資をしたほうが良い理由
ETFで長期投資をしても8%程度しか増やせないという。もう少し高いリターンを狙いたいけれど個別株投資は難しいし怖い気がするという方には、投資顧問の利用をおすすめします。当サイトを運営するライジングブル投資顧問は、株の「売買サポート」を行っております。ライジングブルの売買サポートサービスは、3ヶ月9,000円で買い推奨だけではなく、売却、銘柄入替するところまで、リスク管理をしながらサポートします。
個人の方には難しい売り推奨のアドバイス実績も豊富にあり、
・これから株をはじめる方
・株をやっているが資産が一向に増えない方
・損切ができず株を塩漬けにしがちの方
・損切ができない方
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まとめ
ETFは、長期運用でも十分に利益が狙える投資先です。
しかし、定額積立や分配金の再投資ができないこと、リスクの高い商品があるなどの、長期投資に向かない部分もあります。効率よく老後資金を作りたいときは、以下のポイントを意識しながらETFに投資してみましょう。
- ETFと投資信託を使い分ける
- 長期投資に向いているETFを選ぶ
- セクターの異なる複数のETFに分散投資する
- 定期的にポートフォリオを見直す(年1回程度)
柔軟に運用したいときは「ETF」がおすすめですが、まだ投資に慣れていない方には、管理に手間がかかりにくい「投資信託」もおすすめです。
お金についての勉強を続けながら、少額でETFや投資信託を運用すれば、生活資金に余裕を持った状態で老後を迎えられるでしょう。
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