ETFの中には、一定のセクター(業種)に特化して構成される「セクターETF」といわれるものがあります。セクターETFは、その業界の指数や将来性から投資すべきか判断できるため、市場の状況を見て購入の判断をしたり、売却したりと比較的短期でも利益を出せる投資商品です。
今回は、そんなセクターETFの中から、VDE(バンガード・米国エネルギー・セクターETF)を紹介します。
VDEの構成銘柄や配当などとあわせて、セクターETFへの投資方法もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
VDEとは?セクターETFの特徴もあわせて紹介
VDEとは、世界最大級の投資運用会社バンガード社が販売する商品です。
エネルギー関連の銘柄に特化して運用しているため、セクター(業種)ETFとも呼ばれ、商品名は「バンガード米国エネルギー・セクターETF」といいます。
セクターETFやVDEの特徴について紹介していきましょう。
セクターETFとは
セクターETFとは、特定の業種(セクター)の銘柄を集めて投資する商品のことをいいます。
VDEのようなエネルギー関連のほかに、銀行中心に投資するバンクETFや、バイオテクノロジー、不動産、生活必需品などさまざまな種類があるのが特徴です。
セクターETFは、業種を絞っているものの複数の銘柄に投資をするため、個別株に投資するよりリスクが少なく、市場のトレンドを見ながら、短期で売買をすることで利益を得られます。
逆に市場トレンド次第では大きく下がる場合もあるため注意が必要です。
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VDEの組み入れ銘柄と上位企業を紹介
VDEは、米国の石油やその他のエネルギー関連の企業102銘柄から構成されています。上位銘柄の企業名と構成比を確認していきましょう。
上位10銘柄は以下のようになっています。
順位 | 銘柄名 | 組入比率 |
1 | エクソンモービル | 21.91% |
2 | シェブロン | 14.45% |
3 | コノコフィリップス | 7.10% |
4 | シュルンベルジェ | 3.67% |
5 | EOGリソーシズ | 3.55% |
6 | マラソン・ペトロリアム | 3.42% |
7 | フィリップス66 | 3.33% |
8 | パイオニア・ナチュラル・リーソーシズ | 2.92% |
9 | バレロ・エナジー | 2.56% |
10 | ウィリアムズ・カンパニーズ | 3.55% |
※2024年3月バンガードHPより
上位企業3社で40%以上の構成比となっています。
とくにエクソンモービルやシェブロンの業績次第では、大きな影響があることがわかります。
上位2社の特徴も確認しておきましょう。
エクソンモービル
エクソンモービルは、1882年1月に設立された、世界最大級の国際的エネルギーおよび石油化学会社。石油メジャーの1社で、石油・ガスの探査・生産から燃料・化学品生成精製まで幅広く事業を展開しています。
2024年上期にシェールオイル大手パイオニアの買収を完了。41年連続増配を実施している企業です。
シェブロン
シェブロンは、エクソンモービル同様に石油メジャーの1社。石油・ガスの探査から生産・輸送・精製・販売まで手掛ける垂直統合型の企業です。
米国内以外に、ブラジル、カザフスタンなどでも採掘し、パイプライン運営や海上輸送も実施。ガソリンスタンドとして、「シェブロン」「テキサコ」「カルテックス」のブランド経営を手掛けています。
VDEのチャートと配当利回りを確認
VDEのチャートの動きを確認していきましょう。
2022年コロナショックで大きく下げましたが、そこからは右肩上がりの伸長している状況です。とくに石油関連銘柄は、物価上昇とともに価格が上がっていく傾向にあるため、現状大きく伸びています。
しかし、長期的に見ると、地球温暖化や脱炭素の動きの中で、石油関連企業が伸び続けるかは疑問です。市場の状況を見ながら売買するのが良いでしょう。
<VDE週足チャート>
VDEの配当利回りとトータルリターン
VDEの配当利回りやトータルリターンを見ても、米国の物価高の影響もあり、好調に推移しています。
配当利回りも、高配当ETFには及ばないものの、2.9%は高めの推移といえるでしょう。
ティッカー | 1年トータルリターン | トータルリターン3年 | トータルリターン5年 | 直近配当利回り |
VDE | 22.28% | 27.80% | 12.32% | 2.90% |
VDEに投資するメリットは?
ここまでチャートやトータルリターンを確認してきましたが、VDEに投資するメリットはどのようなものでしょうか?
VDEの投資には以下のようなメリットが考えられます。
①市場の動向にあわせて投資できる
②インフレ時の利益を受けられる
それぞれ解説していきます。
①市場の動向にあわせて投資できる
ETFは、上場投資信託ですので、市場に上場しており、リアルタイムで売買ができます。投資信託の場合は、基準価格での売買となりますが、ETFは市場での売買のため、指値などでも注文できます。
エネルギーセクターについては、現在物価上昇などにより価格が上昇していますので、どこかの利益が乗った時点で利確をすることで大きな利益を得られるでしょう。
②インフレ時の利益を受けられる
エネルギー関連株は、物価上昇などインフレ時に大きく伸びる株式です。
原油や石炭、天然ガスといったエネルギー価格は、ほかの商品にくらべて価格転嫁がしやすく、市場価格が上昇すると売上や利益の増加に結びやすいといわれています。
現在米国では、まだインフレが続いていますので、エネルギーセクターETFを買っておくことで、インフレ時の利益を受けられるのです。
VDEに投資するデメリットと注意点
続いて、VDEに投資するデメリットについても確認していきましょう。
大きなデメリットとしては、以下の2点が考えられます。
①少額投資ができない
②為替の影響を受ける
それぞれ解説していきましょう。
①少額投資ができない
現在のVDEの価格は、約131ドル(2024年3月)。
1ドル150円で考えると、投資するには、少なくても19,650円必要になります。
毎月1,000円からなどの少額投資には向かない商品です。
また、ETFの場合は、毎月定額の10,000円を固定で投資するといった投資方法にも向きません。1株からの投資となりますので、価格変動がある分、買い付けのタイミングによって、買える金額は変わってしまいます。
②為替の影響を受ける
VDEに限らず、米国ETFに投資する場合は、為替の影響を受けます。
現在は、155円を超える円安となっており、このまま円安が進めばさらに利益が出やすい状況となりますが、一旦円高にふれると、株価が上昇しても為替の状況により含み損を抱える可能性があります。
米国の利下げの可能性や、日銀の金利引き上げの可能性もあるため、為替の動きには注意が必要です。
VDEとほかのセクターETF(VDC、VGT)も比較
セクターETFには、エネルギーだけでなくさまざまな分野を集めたETFが発売されています。ここでは、 VDEとあわせて比較したいバンガード社のセクターETFを紹介します。
• VDE:バンガード・米国生活必需品セクターETF
• VDC:バンガード・米国生活必需品セクターETF
• VGT:バンガード・米国情報技術セクターETF
バンガード社セクターETFのトータルリターン比較
トータルリターンは少ないものの、手堅いのがVDC、変動幅が大きいのがVGTといえます。
ティッカー | 1年トータルリターン | 3年トータルリターン | 5年トータルリターン |
VDE | 22.28% | 27.80% | 12.32% |
VDC | 8.31% | 7.22% | 9.77% |
VGT | 37.08% | 14.44% | 22.28% |
※2024年3月Bloombergより
VDC:バンガード・米国生活必需品セクターETF
VDCは、米国で日々使う生活必需品を販売している企業にまとめて投資するセクターETFです。
生活する上で必ず必要になる商品のため、景気の変動に左右されず、安定した値動きをする特徴があります。
構成比が高い銘柄としては、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)、コカ・コーラ、ペプシコなど過去から安定した値動きをしている企業が多い傾向となっています。
VGT:バンガード・米国情報技術セクターETF
VGTは、マイクロソフト、アップル、エヌビディアといった、IT関連や半導体などを投資対象としたETFです。
AI関連株が大きく伸びている影響もあり、今後についてもさらに伸びることが期待されます。
このような将来の成長が期待できる株式をグロース株といいます。グロース株は、配当は少ないですが、今後の成長を考えると割安なものが多いことや、利下げの状況に強いなどのメリットがありますが、同時に変動が激しいなどのデメリットもあるのが特徴です。
VDEに投資する方法
VDEは2024年から開始された新NISAの成長投資枠でも投資可能な商品です。先ほど紹介した、VDCやVGTもNISAの対象となりますので、NISAを使うことでおトクに投資ができます。
NISA成長投資枠で購入する
NISAは、つみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円の合計360万円、最大で1,800万円までの投資に対する利益が非課税になる制度です。
通常、株式や投資信託、ETFの売却益に対しては、約20%の税金がかかりますので、その分が非課税になるのは非常におトクです。
NISAの上限まで投資をした場合でも、売却すれば、その分投資枠が復活しますので、セクターETFを市場の状況にあわせて投資し、売却して利確した後に、また別のセクターで投資するといった使い方もできます。
注意点として、NISAの場合、投資対象の株価が下がってマイナスとなった場合でも、ほかの利益が出ている株式との損益通算ができませんので、評価損が出ている場合の売却には気をつける必要があります。
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短期投資を前提に運用する
VDEの投資方法としておすすめなのは、短期投資を前提に投資を行うことです。
エネルギーセクターは、物価上昇時には大きく伸びますが、デフレになった場合、下がる可能性があります。また、長期的に見ると、石油などの依存度が下がっていく可能性もあります。
大きく伸びているうちに利益を確定するなど、短期投資を前提に運用するのがおすすめです。
また、IT関連株のVGTなどと組みあわせてリスクヘッジするのもおすすめの投資方法といえるでしょう。
上級者であれば、自分でポートフォリオを組み、セクターETFを組み合わせて長期投資を行いながら、定期的に中身を見直すなどの使い方も可能でしょう。
まとめ
VDEは、世界最大級の投資運用会社バンガードが販売するエネルギーセクターに特化したETFです。
エネルギー関連株は、物価高騰時に大きく伸びるセクターで、米国のインフレが続く現在では、大きく利益を出せる可能性があります。
デメリットとしては、1株あたりの価格が高く、少額での投資ができないことや、為替のリスクがあるため、円安の現在投資する場合、為替の動きにも注意が必要です。
VDEは、2024年から始まったNISA成長投資枠での買い付けが可能なETFとなりますので、非課税の恩恵が受けられます。
ほかのセクターのETFと組み合わせるなどして、投資してみるのも良いでしょう。
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