
投資信託よりもっと効率的に利益を狙うために、海外ETFへの投資を考える方もいるでしょう。しかし、なかには「海外ETFはおすすめしない」といった意見もあり、なかなか挑戦しにくいのも事実です。
結論、海外ETFには低コストで運用できる商品が多いため、投資信託や国内ETFより多くの利益を狙える可能性があります。
本記事では、海外ETFがおすすめしないと言われる理由を紹介し、そのうえで投資するメリットを解説します。
自身に合った投資先を見つけるための参考にしてみてください。
目次
海外ETFとは|海外取引所に上場している投資信託
海外ETFは、海外の証券取引所に上場しているETF(上場投資信託)です。
おもにニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所といった海外取引所で取り扱っている商品ですが、日本の証券会社でも海外ETFを購入できます。
海外ETFが指標とするおもな指数は、以下のとおりです。
- S&P500指数:アメリカの大型株500社で構成される代表的な株価指数
- NYダウ:アメリカの取引所に上場している主要30社で構成される指数
- NASDAQ総合指数:テクノロジー企業が多く含まれるアメリカの株価指数
- FTSE100指数:イギリスのロンドン証券取引所に上場する100社で構成される指数
国内ETFでは投資しにくい海外企業に分散投資できるのが、海外ETFの魅力だと言えます。
海外ETFはおすすめしないと言われる4つの理由
「海外ETFはおすすめしない」と言われるおもな理由は、以下の4つです。
海外ETFの評判を正しく理解すれば、自分に合った投資先なのかを判断できるようになります。
為替リスクを伴う
海外ETFへの投資には、為替リスクが伴います。
為替リスクとは、投資した外貨と円の為替レートが変動することで運用成果に影響を与えるリスクのことです。たとえば、海外ETFを「150万円分」購入した以下のケースでは、為替変動により損失が発生しています。
為替レート | ETF価格 | 口数 | 円換算 | |
購入時 | 1ドル150円 | 基準価額 | 1万口 | 150万円 |
売却時 | 1ドル135円 | 10%上昇 | 1万口 | 148.5万円 |
為替は常に変動しているため、ETFの値上がり益が相殺される可能性がある点を理解しておきましょう。
為替交換に手間がかかる
原則として、海外ETFの購入はその国の法定通貨で取引されます。
日本で海外ETFを購入する場合、日本円からドルやユーロなどの外貨に両替する手続きが必要です。
また、楽天証券は日本円での海外ETF購入(円貨決済)に対応していますが、購入時と売却時にそれぞれ最大22米ドルの為替手数料が発生します。(※人気のETFなどは手数料無料のものもあります。)
海外ETFを頻繁に売買すると、国内ETF以上に手間やコストがかかるかもしれません。
国内外で二重に税金がかかる
海外ETFへの投資では、国内外で二重に税金がかかります。仕組みは以下のとおりです。
- 現地国で「源泉徴収税」が適用される(アメリカなら10%)
- 日本国内でも「所得税」と「住民税」が課税される(20.315%)
- 結果的に二重課税となる
「外国税額控除制度」を活用すれば外国で支払った税金を日本の税額から控除できますが、確定申告の手間がかかります。また、NISA口座で投資しても外国での源泉徴収税は発生するため、完全な非課税にはならない点も理解しておきましょう。
リアルタイムで売買しにくい
ETFはリアルタイムで売買できるのが強みの投資先です。しかし、日本で海外ETFを運用する場合、時差の影響でリアルタイム売買がしにくいです。
実際に、アメリカ市場の取引時間は、日本時間で夜22:30〜翌朝5:00(サマータイム期間中)となります。
日本の株式市場のように日中に売買できないため、仕事や家事で忙しい方は不便に感じるかもしれません。
海外ETFに投資する3つのメリット
海外ETFに投資するメリットは、以下の3つです。
それぞれ解説します。
ETF自体のメリットは、こちらの「ETFとは?初心者向けETFの基礎知識!プロが教えるこれだけは知っておきたいポイント」記事で詳しく解説しています。
運用コストが低い
国内ETFと比較して、海外ETFは運用コストが低い傾向にあります。「経費率」と呼ばれる運用管理費用が低いからです。
経費率とは、海外ETFの運用にかかる手数料のことで、投資信託では「信託報酬」にあたります。
アメリカ大手運用会社のバンガード社のETFと、主要な国内ETFや投資信託のコストを比較してみました。
商品名 | 年間コスト |
VOO(Vanguard社) | 0.03% |
iシェアーズ・コア 日経225 ETF | 0.0495% |
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | 0.0814% |
参照元:Vanguard|VOO-Vanguard S&P 500 ETF、日本経済新聞|iシェアーズ・コア 日経225 ETF 楽天証券|eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
取引銘柄によって差があるものの、海外ETFの運用コストの低さは長期運用にも向いているポイントだと言えます。
投資先のバリエーションが多い
海外ETFでは、日本では取り扱いのない特定セクターや投資テーマに細かく分散投資できます。たとえば、アメリカ市場では以下のような専門性の高いETFが豊富です。
また、日本よりアメリカの方が企業の数が多いため、投資先が充実しています。
日本の投資信託やETFでは再現しにくい、より専門的な企業に投資できるのが海外ETFの強みです。
運用会社の実績や信頼性が高い
海外ETFを提供している企業には、世界でも信頼性の高い運用会社が多いです。
たとえば、バンガード(Vanguard)社やブラックロック(BlackRock)社などは数十年の運用実績があり、運用総額も数兆ドル規模に達しています。
詳細は下表を参考にしてみてください。
運用会社 | バンガード(Vanguard) | ブラックロック(BlackRock) |
設立年 | 1975年 | 1988年 |
本社 | アメリカ合衆国ペンシルベニア州 | アメリカ合衆国ニューヨーク州 |
運用資産総額 | 6.2兆ドル※1(2020年1月31日時点) | 11.6兆ドル※2(2025年3月時点) |
※1)参照元:SBI証券|バンガード(Vanguard)|ETF運用会社|外国株式・海外ETF|
※2)参照元:ブラックロック・ジャパン株式会社|ブラックロックのご紹介
長期的に資産を増やしたい方にとって、信頼性の高い企業の商品に投資できる海外ETFは魅力的に感じるでしょう。
海外ETF投資が向いている人の特徴
海外ETFへの投資は、以下のような投資家に向いています。
- 為替リスクを許容できる方
- 長期運用で利益を狙いたい方
- 世界中の株に分散投資したい方
- 運用コストを最小限に抑えたい方
- 株に関する確定申告の経験がある方
海外ETFの魅力は、世界中の企業に分散投資できる点です。リスクを抑えつつ、長期的な資産形成を目指す方にはピッタリの投資先だと言えます。
また、海外ETFは外国税額控除や配当所得の申告が必要なため、確定申告に慣れている投資家の方がスムーズに手続きを進められるでしょう。
海外ETFのおすすめ運用方法3選
海外ETFに挑戦するときは、以下の3つの方法で運用するのがおすすめです。
ETF投資で失敗しないための参考にしてみてください。
NISA枠を活用する
NISA枠を活用すれば、海外ETFの利益にかかる税金を最小限にできます。
NISA口座で海外ETFを運用すると、売却益や配当金に対する日本での税金(20.315%)が非課税になるからです。
ただし、NISA制度では「外国税額控除制度」を利用できず、海外の源泉徴収税(10%)が発生します。それでも日本の税率の方が高いので、積極的にNISA制度を活用しましょう。
長期目線で積立投資を続ける
海外ETFは運用コストが低いので、長期運用に向いています。
為替リスクもありますが、長期的には経済成長に伴う株価上昇により、為替変動の影響を上回るリターンが期待できるでしょう。とくに、毎月一定額を積み立てれば、ドルコスト平均法の効果により平均購入単価を抑えられます。
ETFへの長期投資についてはこちらの「ETFは長期投資に向かない?成功させるコツや投資信託との違いを解説」記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。
分散投資で損失リスクを抑える
国内ETFと比べて、海外ETFは投資先のバリエーションが豊富なので、複数の商品に分散投資して損失リスクを抑えるのがおすすめです。
たとえば、以下のような組み合わせなら分散効果を発揮させられるでしょう。
- 米国株ETF + 欧州株ETF + 新興国ETF(地域分散)
- 株式ETF + 債券ETF + 不動産ETF(資産クラス分散)
- 大型株ETF + 小型株ETF + 高配当ETF(投資スタイル分散)
- テクノロジーETF + ヘルスケアETF + 金融ETF(セクター分散)
もちろん、すでに運用中の国内ETFや投資信託を組み合わせることで、さらにバランスの取れたポートフォリオになります。
海外ETFを購入する手順
国内の証券口座で海外ETFを購入するには、以下の手順で手続きを進めましょう。
- 国内の証券口座を開設する
- 外国株式取引口座を開設する※1
- 証券口座に日本円を入金する※2
- 購入する海外ETFを選んで注文する
※1)SBI証券の場合(SBIで海外ETFを購入する場合はこちらをご覧ください)
※2)日本円での決済に対応していない証券会社の場合、外貨を口座内に入金する
注文が約定(取引完了)すると証券口座内に商品が反映され、取引画面で損益状況を確認できます。海外ETFは数千円から買えるものもあるので、まずは少額から挑戦してみてください。
海外ETFに関するよくある質問
海外ETFに関するよくある質問に回答します。
それぞれ見ていきましょう。
海外ETFでおすすめの銘柄は?
海外ETFのなかでおすすめの銘柄は、以下の3つです。
- バンガード 米国高配当株式(VYM):高配当銘柄で構成されている
- バンガード トータルストックマーケットETF(VTI):米国株式市場全体へ投資する
- バンガード S&P500 ETF(VOO):米国株式市場のうち上位500銘柄への連動を目指す
いずれもアメリカの大手運用会社「バンガード社」が運用するETFであり、信頼性が高いです。経費率も0.03〜0.06%と低いため、運用コストを最小限にしながら長期投資ができるでしょう。
海外ETFは長期投資に向かない?
適切な商品選びと運用方法を実践できれば、海外ETFは長期投資でも十分に利益を狙えます。
ただし、以下のような理由で「ETFは長期投資に向かない」と言われているのも事実です。
- 分配金の再投資に手間がかかるから
- 積立に対応している証券会社が少ないから
- 短期トレード向けの複雑なETF商品があるから
- アクティブ運用のETFはリターンが少ないから
- 流動性リスクにより、希望どおりに売買できない可能性があるから
それでも、海外ETFには「運用コストの低さ」や「商品バリエーションの豊富さ」といった長期運用向けの強みがたくさんあります。
こちらの「ETFは長期投資に向かない?成功させるコツや投資信託との違いを解説」記事を参考にしながら、ETFへの長期投資を検討してみてください。
ETF投資は少額だと意味ない?
ETF投資は少額でも十分に利益が狙えます。
たとえば、毎月5,000円の積立を年利5%で運用すれば、20年後の資産額は約206万円(約86万円の利益)です。※
また、慣れない時期に一括でETFを買ってしまうと、正しい投資判断ができずに損失が膨らむ可能性があります。
ETFは数千円程度から始められるので、まずは少額ずつの積立運用から始めてみてください。
少額投資のメリットについては、こちらの「新NISAで毎月5,000円積立したら将来いくら?少額でも積立投資をしたほうが良い理由」記事で解説しています。
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まとめ
海外ETF投資には、為替リスクや二重課税、通貨交換の手間といったデメリットがあるため、一部の投資家からは「おすすめしない」といった声も聞かれます。
それでも、海外ETFは運用コストが低いうえに、豊富な投資先のなかから自分のスタイルに合った商品を選べます。
そのため、海外ETFは長期投資に適した投資先だと言えるでしょう。
とくに、以下のポイントを抑えて運用すれば、ETF初心者でも十分に利益を狙えます。
- NISA枠を活用する
- 長期目線で積立投資を続ける
- 分散投資で損失リスクを抑える
自分のリスク許容度を把握したうえで、海外ETFを投資先のひとつとして検討してみてください。
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