ETF(上場投資信託)の中には、セクターETFと呼ばれる、特定の業種の株式にまとめて投資する商品があります。エネルギーや金融、ヘルスケアなど、特定の分野に絞って投資する際に便利なETFです。
今回紹介する「VGT」は、ソフトウェアやハードウェア、半導体などテクノロジー関連の銘柄にまとめて投資できるのが特徴です。VGTのメリットやデメリット、買付方法など解説していきます。
目次
VGTとは?セクターETFの特徴についても紹介
VGTは、正式名称:バンガード米国情報技術セクターETFで、米国大手資産運用会社バンガード社が販売するセクターETFです。VGTは、米国株の中の情報技術セクター313銘柄に投資しているのが特徴で、「MSCIインベスタブル・マーケット・インフォメーション・テクノロジー・インデックス」に連動するように設計されています。
セクターETFとは、特定の分野業種にまとめて投資できるETFのことをいい、その分野が今後伸びると期待できるときに投資すると大きなリターンが得られます。
ここでは、VGTとあわせてセクターETFの特徴や使い方についても紹介します。
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セクターETFの特徴と効果的な使い方
セクターETFとは、特定の分野や業種にまとめて投資ができるETFです。土地の価格が高騰していて不動産分野の株が高騰すると予測できれば、不動産セクターにまとめて投資をする、コロナの拡大で医療関係が伸びると考えて、ヘルスケアセクターに投資するなどの使い方があります。
セクターの分類としては、S&Pとモルガン・スタンレーが編成した、GICS「世界産業分類基準(Global Industry Classification Standard)」と呼ばれる分類を使うのが一般的です。
GICSでは、世界中の産業を以下の10のセクターに分類しています。
- エネルギー
- 素材
- 資本財
- サービス
- 一般消費財
- サービス
- 生活必需品
- ヘルスケア
- 金融
- 情報技術
- 電気通信サービス
- 公共事業
VGTの上位銘柄や組入割合
VGTに含まれる上位銘柄や、さらに細かいセクターを確認していきます。
【VGT上位組み入れ企業】
順位 | 企業名 | 組入比率 |
1 | マイクロソフト | 18.31% |
2 | アップル | 15.38% |
3 | エヌビディア | 11.76% |
4 | ブロードコム | 4.24% |
5 | セールスフォース | 2.11% |
6 | アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 2.11% |
7 | アドビ | 1.65% |
8 | アクセンチュア | 1.57% |
9 | オラクル | 1.50% |
10 | シスコシステムズ | 1.46% |
※2024年4月バンガードHPより
IT関連の上位企業が多く含まれており、ほとんどの名前は聞いたことがあったり、使ったことがあったりすると思います。
続いてセクターの中でもさらに細かい分類も確認していきます。
順位 | セクター | 組入比率 |
1 | 半導体・半導体関連 | 31.40% |
2 | システムソフトウェア | 23.90% |
3 | ハードウェア・周辺機器 | 17.40% |
4 | アプリケーションソフトウェア | 14.30% |
5 | 電子機器関連 | 4.30% |
6 | ITコンサルティング | 3.80% |
7 | 通信機器 | 3.20% |
8 | インターネットサービス | 1.70% |
※引用:2024年4月 バンガードHP
AI関連で好調な半導体関連が30%以上の構成比を占めているのが特徴です。半導体需要は今後も拡大していくと考えられるため、今後の株価上昇が期待できます。
VGTのチャートや配当を確認
続いてVGTの値動きやリターンの推移、配当を確認していきましょう。
VGT月足チャート
コロナ時に一時下がりましたが、そこから大きく伸び、23年末に向けて下げたものの、現在は伸び続けています。
【VGTのトータルリターンの推移と配当利回り】
ティッカー | 1年トータルリターン | 3年トータルリターン | 5年トータルリターン | 直近配当利回り |
VGT | 35.52% | 9.61% | 19.41% | 1.00% |
※2024年4月Bloombergより
AIブームにより、直近1年間のリターンは35.52%と驚異的な実績です。ただし、配当利回り1%はそれほど高くありません。IT関連株は配当金を出すよりも、投資をして新しい価値を見出すことに使われることが多いため、配当金はあまり期待できません。
VGTに投資するメリットとは?
今後の伸びが期待できるVGTですが、投資するメリットはどのようなものでしょうか?メリットとしては、以下の2点があげられます。
- 今後の成長により高いリターンが期待できる
- 分散投資できる
それぞれ詳しく解説していきます。
今後の成長により高いリターンが期待できる
23年末にかけて、米国の利上げの影響で一時的に下げたIT関連株ですが、ChatGPTをはじめとする生成AIが発表されたことや、米国の利下げがいずれ行われることもあり。株価は大きく伸びています。
スマホやネットでの決済、動画配信などIT関連は、現在私たちの生活に欠かせないものとなっていますので、この先も継続して成長すると考えて良いでしょう。
IT関連など今後の大きな成長が期待できる株をグロース株(成長株)といいます。これらのグロース株は、金利上昇局面に弱いため、23年米国FRBの利上げにより、一時大きく下げました。
しかし現在は、利上げが終了し、今後利下げが見込まれるため、回復傾向といえるでしょう。
分散投資できる
VGTは、セクターを情報技術分野に絞ってはいますが、2024年4月現在で、米国情報技術株、313銘柄に分散投資しています。
マイクロソフト・アップル・エヌビディアなど上位の構成が高いといっても、残り半分で300以上の銘柄に投資しています。
個別株に投資する場合は、このように分散するのは難しく、メインの投資先が大きく下がった場合には、ほかでカバーするのは難しい状況です。
ETFの場合は、多くの銘柄に分散投資しているうえに、状況によっては組み入れ銘柄の入替えも行いますので、分散投資のメリットが生かせるのです。
VGTに投資するデメリットとは?
非常にメリットの多いVGTですが、デメリットや注意点もあります。次の点への注意が必要です。
- 少額投資はできない
- 市場の下落局面に弱い
それぞれ解説していきましょう。
少額投資はできない
現在のVGTの価格は、約500ドル。ETFの場合、買付はこの1株あたりの価格となりますので、投資するには、円が1ドル150円とした場合、一度の投資に75,000円必要です。
毎月少額からコツコツ投資したいといった場合には、不向きな商品です。この場合は、毎月定額で投資ができる投資信託も検討してみましょう。
市場の下落局面に弱い
先ほど解説した通り、IT関連株は、金利の上昇に弱いため、一旦落ち着いてきた米国のインフレがまた再燃して利上げといった状況になると、大きく下げる可能性はあります。
また、分散投資されているといっても、IT関連株に絞った中なので、株価全体が下がった際にも下落率がS&P500などに比べて高くなるのが特徴です。
その分、伸びる分には大きく上がりますので、投資する際はご自身のリスク許容度の範囲内で投資することをおすすめします。
VGTとほかのETFを比較
VGTに近いETFとしては、QQQがあげられます。QQQは正式名称「インベスコ QQQ トラスト シリーズ1」といい、NASDAQ100指数に連動するETFです。NASDAQ100もVGTと同様に、IT関連株を多く含む指数となるため、VGTに近い動きとなります。
また、米国の株式全体に投資するVOO「バンガード・S&P500 ETF」も比較してみましょう。
VGT・QQQ・VOOの月足チャート(数字は指数)
デメリットの部分でも解説した通り、IT関連株を多く含む、VGTやQQQは、下落局面で大きく下がる変わりに、伸び率も高いのが特徴です。安定した値動きを目指すのであればVOOもおすすめです。
あわせてトータルリターンと経費率も確認しておきましょう。
VGT・QQQ・VOOのトータルリターンと経費率を比較
ティッカー | 1年トータルリターン | 3年トータルリターン | 5年トータルリターン | 直近配当利回り | 経費率 |
VGT | 35.52% | 9.61% | 19.41% | 1.00% | 0.10% |
QQQ | 18.50% | 8.73% | 18.50% | 0.53% | 0.20% |
VOO | 27.70% | 8.41% | 13.46% | 1.32% | 0.03% |
※2024年4月Bloombergより
トータルリターンを比較しても、VGTのパフォーマンスが非常に高いのがわかります。経費率は若干高くでも0.1%ですので、100万円を1年間運用しても1,000円の経費です。
安定していて、経費率が低い銘柄を選ぶのであれば、VOOですが、さらにリスクをとって、高いリターンを目指したいといった方にとってVGTは非常に魅力的な投資対象ですね。
VGTに投資する方法
VGTに投資するにはどのように進めたら良いでしょうか?VGTは、NISA成長投資枠での投資対象となっていますので、おすすめはNISAでの投資です。
NISAでの投資やほかの方法も紹介します。
NISA成長投資枠で投資する
2024年から開始した新NISAでは、つみたて投資枠で年間120万円、成長投資枠で年間240万円の計360万円まで投資でき、合計で1,800万円までの投資に対する売却益が非課税となる仕組みです。
通常の株や投資信託、ETFなどの売却益については、約20%の税金がかかりますので、この分が非課税となるNISAは、非常にお得な制度といれるでしょう。
VGTは、NISA成長投資枠の対象となりますので、年間240万円まで買付することが可能です。
ただし、NISAで投資する場合の注意点としては、以下の2点があります。
- 配当金については、米国で源泉徴収される
- 損失があっても、利益が出ている銘柄との損益通算はできない
上記は理解したうえで投資を行いましょう。
米国 IT関連株へ投資信託で投資する
毎月一定の金額を、NISAつみたて投資枠などで投資したいという場合は、VGTに近い、NASDAQ100へ投資ができる投資信託「eMAXIS NASDAQ100インデックス」もおすすめです。
VGTに投資する場合は、7万円以上の資金が必要となりますが、投資信託の場合、1,000円程度からも投資が可能です。
毎月、10,000円など一定の金額を積立することで、株価が下がったときには多くの口数を買い、株価が上がったときには少ない口数を買うことで、平均単価を下げることができます。
まとめ
VGTは、米国最大級の資産運用会社バンガード社が販売する、米国情報技術セクターETFです。情報技術セクターとは、マイクロソフトやアップル、エヌビディアなど、IT関連の企業に絞って分散投資ができるETFで、今後AI関連株などが、市場を牽引する中で、大きく伸びることが期待できます。
VGTに投資するメリットとしては、今後の成長に対して投資できることや、IT関連株の中ではありますが、313銘柄に投資するため、分散投資できることがあげられます。それに対して、少額から投資できないことや、市場が下がった場合、大きく下がる可能性があるなど注意点もあります。
2024年から新NISAが開始となり、多くの方が、オールカントリーやS&P500に連動した投資信託を選択しています。資金に余裕があり、よりリスクをとってでも多くのリターンを目指したいのであれば、VGTが選択肢の一つとなるでしょう。
チャートの推移で確認した通り、価格の変動は激しい銘柄となりますので、余裕資金での投資をおすすめします。
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