
株の値下がりでNISAの資産がマイナスになっていると、投資に慣れていない方は「このまま運用を続けても良いのだろうか」といった不安を感じやすいです。
投資には損失リスクがつきものなので、NISA口座でも含み損が生じる可能性はあります。
しかし、NISA口座で資産がマイナスになっていても、これまでと同じように投資を続けるべきです。
本記事では、NISA口座で投資を続けるべき理由と、損失につながる失敗パターンを解説します。
資産がマイナスになったときの対処法についても解説しているので、本記事を読めば冷静に投資を続けられ、老後でもお金の不安なく生活できるようになるでしょう。
目次
NISAで資産がマイナスになったらどうするか
結論から言うと、NISAは長期的に資産を運用する制度なので、口座内の資産がマイナスになっても、これまで通り投資を続けましょう。
たとえば、株式よりも値動きが安定している投資信託でさえ、一時的な値下がりは避けられません。
実際に、投資信託「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の価格は、2023年7月11日に27,282円でしたが、8月6日には22,688円となり、4,500円以上も値下がりしています。
出典:Yahoo!ファイナンス|eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
さらに、NISAでは信用取引(借入金での投資)ができないので、含み損が生じても借金にはなりません。
長期的に運用を続ければNISA口座でも利益が狙えるので、資産がマイナスになったときでも、余剰資金内での投資を続けましょう。
短期的な値動きに左右されずに投資を続ける方法については、【投資初心者向け】ほったらかし投資で失敗しないポイント解説 で解説しています。
NISAで資産がマイナスになる確率
NISAで資産がマイナスになる確率は、運用期間によって異なります。
過去のデータをもとに金融庁が行った調査では、 投資信託の運用期間が5年間と20年間の場合の成績は、それぞれ以下の結果となりました。
運用期間 | 投資金額 | 最終金額(最少〜最大) | 含み損になる確率 |
5年間 | 100万円 | 72〜173万円 | 約15% |
20年間 | 100万円 | 185〜321万円 | 0% |
参考:金融庁|教えて虫とり先生(第3回)
投資信託を5年間運用した場合、含み損が生じる確率は約15%です。しかし、20年間運用すれば、含み損が生じる確率は0%でした。
つまり、長期目線で投資を続けていれば資産がマイナスになりにくいので、NISAでの投資期間は20年以上を目安にすると良いでしょう。
NISAで資産がマイナスになる5つのパターン
NISA口座で資産がマイナスになるのは、以下の5パターンです。
- 商品を一括で購入している
- 毎月の積立金額を頻繁に変えている
- 含み損が出たときにすぐ売ってしまう
- 損失リスクの高い商品を運用している
- 運用にかかる手数料が高すぎる(信託報酬)
失敗パターンにあてはまらないようにNISAを活用すれば、自信を持って資産運用を続けられるでしょう。
商品を一括で購入している
値上がりしたタイミングで一括購入してしまうと、NISA口座の資産がマイナスになりやすいです。
たとえば、1株1,000円のときに一括で50万円分の株(500株)を買った場合、1株800円に値下がりすれば10万円分の資産が減ります。
商品をまとめて買うと、株の値動きによる影響を受けやすいので、安全に資産を増やしたいときは同じ金額の積立を続けるのが良いでしょう。
毎月の積立金額を頻繁に変えている
毎月の積立額を頻繁に変えていると、NISAで資産がマイナスになる可能性があります。ドルコスト平均法の効果が薄まり、購入金額が高くなりやすいからです。
ドルコスト平均法とは「安いときにたくさん買って、高いときに買う量を抑える」という調整を自動で行う投資方法です。
たとえば、毎月10万円ずつ積み立てる場合、投資信託1口あたりの価格が2万円のときは5口、1万円のときは10口を購入でき、1口あたりの購入単価を平均1.5万円に抑えられます。
しかし、値下がりによる不安から積立額を5万円に減らしたり、値上がりによる期待から積立額を20万円に増やしたりすると、かえって高い価格での購入が増えます。
結果、NISA口座での含み損につながってしまうのです。
含み損が出たときにすぐ売ってしまう
証券口座で含み損が出たときに、商品を売ってしまえば損失が確定します。
まだ投資に慣れていない方は、NISA口座で資産がマイナスになっていると不安に感じやすいので、すぐに売りたくなるかもしれません。
しかし、NISAは長期目線で資産を増やすための制度です。また、投資信託を20年間運用すれば損失がでないというデータもあります。
短期的な値下がりで商品を売ってしまうと損失が確定してしまうので、たとえ含み損が出ていても売らずに運用を続けましょう。
損失リスクの高い商品を運用している
値動きが大きい商品を運用していると、NISAで含み損が生じやすいです。
NISAで購入できる商品の中で、とくに損失リスクが高い商品の一部を以下の表にまとめました。
ジャンル | 運用方法 | リスクが高い理由 |
個別株 | 1社の株式に投資 | 企業の業績が悪化すると、大きな値下がりが生じやすい |
新興国ファンド | 中国やインドなど、発展途上国の株式に投資 | 政治や為替の影響を受けやすく、値動きが大きい |
テーマ型ファンド | 特定の業界に集中して投資 | ブームが過ぎれば、業界全体で値下がりが生じやすい |
中小型株ファンド | 中小企業の株式に投資 | 大企業と比べて業績が安定しにくく、株の値動きが大きい |
安定的に成長が見込める「全世界株式の投資信託」よりも、ハイリスクハイリターンな運用になるので、資産が大きく減る可能性があります。
運用にかかる手数料が高すぎる(信託報酬)
運用にかかる手数料が高すぎると、NISAで利益が出にくいです。投資信託の運用には、以下のタイミングで手数料がかかります。
- 信託財産留保額: 投資信託を売るときに発生する手数料
- 購入時手数料: 投資信託を買うときに発生する手数料
- 信託報酬: 投資信託の運用に必要な手数料
とくに、信託報酬は運用期間中ずっと発生する手数料なので、複数のファンドと比較しながら、できるだけ低コストの商品を選びましょう。
信託報酬の参考値としては、約0.05〜0.2%の投資信託を選ぶと良いでしょう。
投資信託の手数料の考え方については、 SMT グローバル株式インデックス・オープンの評価は?信託財産留保額ってどんな手数料?でも解説しています。
NISAで資産がマイナスになっているときの3つの対処法
NISA口座の資産がマイナスになっているときは、以下の3パターンで対処しましょう。
- そのまま運用を続ける|つみたて投資枠
- 買い増しする|成長投資枠
- 損切りする|成長投資枠
対処法を知っておけば、含み損が発生したときでも冷静に対応できるので、資産を減らしにくくなります。
そのまま運用を続ける|つみたて投資枠
つみたて投資枠で投資信託を買っているときは、含み損が出ていても運用を続けましょう。
一時的に資産がマイナスになっているだけで、長期的に運用を続ければ利益が生じやすいからです。
金融庁の調査によると、投資信託を20年間運用すれば、元本割れしなかったとの報告もあります。
焦って売却すると資産がマイナスになる可能性があるので、つみたて投資枠では含み損の有無に関わらず、投資を続けていきましょう。
買い増しする|成長投資枠
NISAの成長投資枠では、投資信託や個別株、ETFなどの商品を自由なタイミングで買い増しできます。
株価が下がったときに商品を追加で購入すれば、価格が回復したときに利益が狙えるでしょう。
たとえば、一株あたり1,000円値下がりしたタイミングで100株買い増しすると、株価が戻ったときに10万円の利益が生じます。
運用している商品の値下がりを「買い増しのチャンス」と捉えれば、冷静に投資を続けられるかもしれません。
損切りする|成長投資枠
成長投資枠で買っている商品が値下がりしたときは、損切りも選択肢のひとつです。
損切りとは、設定した基準値まで株価が下がったときに、商品を売って損失を最小限にする戦略です。
具体的には、投資信託を買ったタイミングで「15%値下がりしたら売る」や「3万円値下がりしたら売る」といった基準を決めます。
含み損が生じているときは冷静な判断がしにくいので、あらかじめ損切りのラインを決めておきましょう。
関連記事
NISAでは損益通算や繰越控除ができない!損失が出た時の対処法を解説
NISAで資産をマイナスにさせないための対策
NISAで資産をマイナスにさせないためには、以下のような対策が効果的です。
- 債券ファンドに投資する
- 長期と短期の投資を併用する
- 手数料が安いファンドを選ぶ
- インデックスファンドに投資する
- 成長投資枠で高配当株を買っておく
- 不動産や金(ゴールド)への投資を併用する
- ディフェンシブ(値動きが小さい)銘柄に投資する
短期投資や配当金の利益でカバーしたり、値動きが小さい商品を買ったりすれば、NISAで資産がマイナスになるリスクを減らせます。
しかし、どんな投資にも損失リスクはあるので、短期的な値動きに一喜一憂していると冷静な判断ができません。
長期での運用を前提に、上記のような戦略を参考にしてリスクを抑えていけば、老後に向けた資産形成を着実に進められるでしょう。
株価の暴落に備え、NISAでやっておくべき対策については新NISA初心者向け!株価暴落に備える5つの対策とは?で解説しています。
NISAで資産がマイナスになっても損益通算ができない
NISA口座は税金が発生しない口座なので、資産がマイナスになっても損益通算ができません。
たとえば、特定口座で100万円の利益が生じている場合、ほかの特定口座で50万円の損失が生じていれば、両者を差し引きした50万円分の利益に対してのみ税金がかかります。
一方、NISA口座で50万円の損失が出ていても、証券会社Aの特定口座で発生している100万円の利益と相殺できないので、そのまま100万円に対して税金が発生します。
特定口座や一般口座どうしでは損益通算ができるので、短期的な取引やデイトレードなどをするときは、NISA以外の証券口座を利用しましょう。
NISAでの運用シミュレーション
NISAで資産を運用したときの、最終金額をシミュレーションしてみましょう。
以下の表では、毎月同じ金額を積み立てたときの最終金額を、運用期間ごとにまとめました。
10年 | 20年 | 30年 | |
1万円 | 155万円(収益35万円) | 411万円(収益171万円) | 832万円(収益472万円) |
3万円 | 466万円(収益106万円) | 1,233万円(収益513万円) | 2,497万円(収益1,417万円) |
5万円 | 776万円(収益176万円) | 2,055万円(収益855万円) | 4,161万円(収益2,361万円) |
参考:金融庁|つみたてシミュレーター
積立額が少なくても、できるだけ長期間投資を続けていれば、複利の効果によって狙える利益は徐々に増える可能性があります。
上記の表をみると、毎月1万円の積立を10年間続けたときの最終金額と比べて、20年後の利益は4倍、30年後は13倍と、雪だるま式に利益が増えているのがわかります。
新NISAの非課税期間は無制限なので、少額からでも早めに資産運用を始めれば、老後に必要な生活資金を確保できるかもしれません。
よくある質問
NISAで資産がマイナスになったときのよくある質問を紹介します。
- NISAでマイナスが出たら確定申告が必要?
- NISAで資産がプラスになっているときはどうする?
- 旧NISAの非課税期間が終わるタイミングでマイナスになっていたら?
それぞれ回答します。
NISAでマイナスが出たら確定申告が必要?
NISA口座は税金が発生しない口座なので、損益通算や繰越控除などの制度は使えません。
つまり、NISA口座で資産がマイナスになっても、確定申告は不要です。
短期トレードや個別株取引など、損失リスクが高い投資をするときは、一般口座や特定口座を利用しましょう。
NISAで資産がプラスになっているときはどうする?
NISAで資産がプラスになっていて、直近でお金が必要なときは売却を検討しましょう。
たとえば、住宅の購入や結婚、子供の教育資金など、ライフイベントに必要な資産を作るのもNISA口座の効果的な使い道です。
NISAで積み立てた資産を取り崩す「出口戦略」については、こちらの記事で解説しています。
旧NISAの非課税期間が終わるタイミングでマイナスになっていたら?
非課税期間の終了間近で、旧NISA口座に含み損が出ているときは、非課税期間内に売却しましょう。
含み損のある商品を課税口座に移すと、利益が出ていなくても税金が発生する可能性があるからです。
たとえば、以下のようなケースが挙げられます。
- NISA口座で100万円の商品を購入
- 80万円に値下がりした状態で課税口座に移管
- 移した後、90万円に値上がりしたタイミングで売却
- 本来は10万円の損失(90万円-100万円)
- しかし、課税口座では10万円の利益(90万円-80万円)として扱われて税金が発生
事実上は利益が出ていなくても税金が発生するので、旧NISAで運用している商品は非課税期間内に売るのが無難です。
まとめ
NISAで資産がマイナスになっていると、投資に慣れていない方はとくに不安な気持ちになりやすいでしょう。
また、損失リスクの高い商品の運用や一括購入、積立金額の頻繁な変更をしていると、NISA口座でも含み損が出やすいです。
一時的な値下がりであっても、不安な気持ちで焦って商品を売ってしまうと、20年後に狙えるはずだった利益を手放すことになるかもしれません。
NISA口座で長期的に資産運用を続ければ、十分に利益を狙える可能性があります。
本記事で紹介した「資産をマイナスにさせないための対策」を意識して戦略を立てれば、損失リスクを最小限に抑えながら投資を続けられます。
老後にお金の不安なく生活できるように、少しずつお金に関する勉強をしながら、NISAでの資産運用を続けていきましょう。
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