
NISAは国が推進する投資制度ですが、なんとなく怪しいと感じている方もいるでしょう。
日本人は投資に対してネガティブなイメージを持つ方が多いので、公的な制度でさえ疑念を抱かれることがあります。しかし、NISA制度には多くのメリットがあるため、投資初心者こそ利用すべきです。
そこで本記事では、NISAが怪しいと言われる理由や、制度の仕組みについて解説します。また、NISAのデメリットやおすすめしない人についても説明します。
この記事を読めば、投資に対して不安がある方でも、NISAを活用した資産運用のイメージができるようになるでしょう。
そもそもNISAとは何か、より基本的なことから知りたい方は、NISAの定義や仕組みについて初心者向けに解説した以下の記事をご覧ください。
新NISA活用ガイド!初心者にわかりやすく新NISAの仕組みとメリットや活用事例を解説
目次
NISAが怪しいと言われる5つの理由
NISAが怪しいと言われる主な理由は、以下の5つです。
- 制度を理解していないから
- 国や政府がすすめているから
- SNSや無料セミナーですすめられるから
- 買える商品が株だけだと思っているから
- 投資はギャンブルのイメージがあるから
それぞれ見ていきましょう。
NISA制度を理解していないから
NISAを怪しいと感じる理由は、制度の仕組みを正しく理解していないからです。
そもそもNISAは「少額投資非課税制度」の略称で、特定の商品名ではありません。
2024年に新NISAが始まり、CMやSNSなどのメディアで見かける機会が増えましたが、制度の内容をきちんと理解している人はまだ少ないです。
NISA制度の仕組みを知らないと、特別な投資商品と誤解しやすいので、投資初心者はとくに「怪しい」というイメージを持ちやすいでしょう。
国や政府がすすめているから
国や政府がNISA制度をすすめているから、NISAを怪しいと感じる方もいます。具体的には、以下のような考えが挙げられます。
- 将来的な増税への不安
- 過去の政策に対する不信感
- 政府の利益誘導だという疑い
- 投資の損失リスクに対する懸念
政府に対する不満から、NISAにも「隠れた意図があるのではないか」と疑いを持つ方も多いです。しかし、NISAで国民を失敗させても、国にはメリットがありません。
むしろ国民が投資で成功した方が、国の社会保障費の負担が減ったり、経済活動が活発になったりといったメリットがあります。
それでも、国や政府がすすめている事実に、なんとなく不信感を持つ方がいるようです。
SNSや無料セミナーですすめられるから
SNSの広告や銀行が主催するセミナーなど、無料でNISAに関する情報が入ってくる機会は多いです。
なかには、無料での情報提供に対して「高額な商品を買わせられるのではないか」や「怪しい意図があるのではないか」と考える方もいます。
本来、無料セミナーが開催される主な目的は、NISAの口座開設を通じて、銀行や証券会社の顧客を増やすことです。
しかし、投資に関する詐欺の事例には「絶対儲かる」といった過度な表現を使って高額な商品を買わせたり、リスクに関する説明なく契約させたりするケースもあります。
そのため、無料での情報提供に対して「怪しい」と感じやすいのです。
買える商品が株だけだと思っているから
個別株は値動きが大きくなりやすいので、投資をやっていない方のなかには「NISAで株を買っても損する」と考える方も多いです。
NISAでは株しか買えないと誤解しているケースもあり、怪しいといったイメージに繋がっているのかもしれません。
しかし、実際には投資信託やETFなど、株より値動きの少ない商品もNISA口座内で購入できます。
月100円から買える商品もあるため、低リスクで始められる事実を知っておけば、NISAでの資産運用を始められるようになるでしょう。
こちらの記事では、初心者向けにNISAで損をしないための戦略について解説しています。
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投資初心者向け!損をしないための投資信託入門ガイド
投資はギャンブルのイメージがあるから
日本人は投資に対して「ギャンブル」のイメージを持つ方が多いため、NISAに対しても怪しいと感じる方が多いです。
実際に、1990年ごろの「バブル期」と呼ばれる時代には、銀行の普通預金でも年2%の利益が生じていました。
元本割れのない銀行預金で資産が増えていたので、今でも損失リスクのある投資に対して積極的になれない方が多いと考えられます。
しかし、現在の銀行普通預金は約0.1〜0.2%なので、預金だけではなかなか資産が増えません。貯金と投資をバランスよく組み合わせれば、安全かつ効率の良い資産運用ができるようになるでしょう。
NISAを活用した低リスクな資産運用方法については、「NISAで赤字を出したくない!低リスクな資産の増やし方を解説」こちらの記事で解説しています。
NISAとは
NISA(少額投資非課税制度)とは、投資の利益に対して税金がかからない制度です。
本来、投資で生じた利益には、20.315%の税金がかかります。たとえば、株や投資信託の取引で10万円の利益が出た場合、税金として約2万円が差し引かれます。
しかし、税金がかからないNISA口座を利用すれば、10万円がすべて手元に残るため資産を効率良く増やせるでしょう。
また、NISAには2種類の投資枠があります。それぞれで買える商品や上限額を、以下の表にまとめました。
投資枠 | つみたて投資枠 | 成長投資枠 |
非課税期間 | 無制限 | 無制限 |
投資上限額(年間) | 120万円 | 240万円 |
投資方法 | ・積立購入 | ・積立購入 ・一括購入 |
投資商品 | ・金融庁が選別した投資信託のみ | ・上場株式(国内、海外) ・投資信託 ・ETF(上場株式投資信託) ・REIT(不動産投資信託)など |
非課税投資枠(生涯) | 1,800万円(成長投資枠は1,200万円まで) |
参考:金融庁|NISAを知る
とくに、つみたて投資枠では金融庁が選んだ低リスクな商品を少額から買えるので、初心者でも投資に挑戦しやすいです。
自分のリスク許容度を踏まえてNISAを活用すれば、老後の生活資金への不安を減らせるようになるでしょう。
NISAのデメリット
NISAには多くのメリットがある一方、いくつかデメリットもあります。主なデメリットは、以下のとおりです。
- 損益通算ができない
- 元本が保証されない
- 1人1口座しか持てない
- NISA口座で買える商品は一般口座より少ない
- NISA口座と他の口座間での商品移動ができない
- 海外転勤中のNISA口座は最長5年間しか維持できない
とくに、投資には元本割れのリスクがあるので、初心者の多くは「損をするかもしれない」というイメージを抱きやすいです。
NISA制度を活用して投資に挑戦するときは、あらかじめ損失が生じたときの対策を立てることで、冷静に資産運用を続けられるでしょう。
NISAのデメリットと対処法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
>>「NISAはデメリットしかない」と思っている初心者が知っておくべきNISA分散投資法を伝授
NISAをやめたほうがいい人
NISAは非課税で資産を運用できる魅力的な制度ですが、すべての人に向いているわけではありません。たとえば、以下の特徴にあてはまる人は、NISA制度をうまく活用できないでしょう。
- リスク許容度が低い人
- 短期間で利益を狙いたい人
- 運用する時間や余裕がない人
- 投資のリスクを理解していない人
- 投資に関する勉強を続けられない人
- 人が勧める商品を何も考えず買ってしまう人
とくに、投資に関する勉強ができない人は、値上がりしない商品を買い続けたり、詐欺に遭ったりするリスクがあります。
また、損失が生じるリスクを理解していないと、急な値下がり時に冷静な判断ができず、途中でNISAを辞めてしまう可能性もあるでしょう。
NISAは長期目線で資産を運用する制度なので、挑戦するときは、仕組みやリスクを理解しながら、情報を取り続けようとする姿勢が欠かせません。
政府がNISAをすすめる2つの理由
政府がNISAを勧めている理由として、以下の2つが挙げられます。
- 市場のお金の流れを良くするため
- 日本人の資産形成をサポートするため
政府の狙いを知っておけばNISAへの不信感が減り、自分がNISAを活用すべきか冷静に判断できるようになるでしょう。
市場のお金の流れを良くするため
政府がNISAを勧めている理由は、市場のお金の流れを良くするためです。市場に多くのお金が出回れば、以下のような好循環になる可能性があります。
- 投資で個人のお金が市場に流れる
- 企業が運用できる資金が増え、新たな事業を展開できる
- 企業の成長につながり、雇用者数や業績が向上する
- 株価や給料が上がり、個人の資産が増える
NISA制度によって市場にお金が流れるようになると、結果的に個人の資産も増えるようになるでしょう。
日本人の資産形成をサポートするため
日本人の資産形成をサポートするために、政府はNISA制度の活用を勧めています。
実際に、金融庁が作成した資料のなかには「家計の安定的な資産形成を推し進める」※という目的がはっきりと示されていました。
※参考:金融庁|新しいNISA制度の概要と改正の狙い
個人の資産が増えれば、以下のような好循環が見込まれるでしょう。
- 外食や海外旅行、新しい家電や車の購入など、個人がお金を使う機会が増える
- 飲食店や旅行会社、さまざまなメーカーの売上が伸びる
- 雇用者の給料が上がり、個人の資産が増える
- 市場へのお金の流れが良くなる
利益を非課税で受け取れるNISAを活用すれば、長期的に自分の資産が増え、気兼ねなく趣味や旅行などを楽しめるようになるかもしれません。
NISAを始める3つのメリット
NISAを始めると、以下の3つのメリットがあります。
- 年間で最大360万円を非課税で運用できる
- いつでも売却して辞められる
- 少額から始められる
それぞれ詳しく解説します。
年間で最大360万円を非課税で運用できる
NISA口座では、年間最大360万円までの投資が可能です。
また本来、株式や投資信託で生じた利益には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座内では税金がかかりません。
具体的に得られる利益を、年間360万円を投資して5%の利益が出た場合でシミュレーションしてみましょう。
- 通常口座:14.34万円(利益18万円 − 税金3.66万円)
- NISA口座:18万円
長期間になれば、さらに差が広がる可能性があります。NISA口座を活用すれば、ほかの口座での運用より効率よく資産を増やせるでしょう。
いつでも売却して辞められる
NISAでの資産運用を始めても、積立設定を解除すればいつでも辞められます。
さらに、購入した金融商品はいつでも売却が可能です。
お金に余裕がないときや大きな出費が予想されるときなど、自分の経済状況に合わせて柔軟に対応できるので、NISAは初心者でも活用しやすい制度だと言えます。
少額から始められる
NISA口座では、少額から投資を始められます。大手ネット証券である楽天証券やSBI証券では、100円から投資信託の積立が可能です。
損失リスクへの不安が強い方でも、少額からNISAに挑戦すれば、徐々に投資に関するスキルが身につくでしょう。
結果、老後の資産形成を続けられるようになります。
NISAの始め方
NISAを始めるには、まず金融機関でNISA口座を開設します。
資産を効率よく増やすために、手数料が安いネット証券を利用するのがおすすめです。
なかでも、楽天証券やSBI証券を利用すれば、毎月100円から資産運用を始められるので、初心者でも投資に挑戦しやすいでしょう。
利用する証券会社が決まったら、以下の手順でNISAを始めていきます。
- 公式サイトからネット証券の口座に申し込む
- 本人確認書類を提出する
- NISA口座の初期設定をする
- 毎月の積立設定をする
楽天証券とSBI証券でNISAを始める手順は、こちらの記事でそれぞれ詳しく解説しています。
楽天証券のつみたてNISAの始め方!お得に活用する5つのコツを紹介
SBI証券のつみたてNISAの始めかた!スマホアプリやお得な設定方法を解説
よくある質問
NISAに関するよくある質問に回答します。
- NISAで損する可能性はある?
- NISAの非課税メリットは今後も続く?
それぞれ見ていきましょう。
NISAで損する可能性はある?
投資には元本割れリスクがあるので、NISA口座でも損失が生じる可能性はあります。
しかし、過去のデータを元にした金融庁の調査によると、投資信託を20年間運用し続けると元本割れが生じないという結果が示されています。(参考:金融庁|教えて虫とり先生(第3回))
NISAで長期的に資産を運用し続ければ、投資に詳しくない方でも利益を狙えるかもしれません。
NISAの非課税メリットは今後も続く?
NISA制度は、これまでに何度も改正されています。
そのため、NISAの非課税メリットについて、今後も続くかどうかはわかりません。しかし、これまでNISA口座内で運用を続けている資産については、今後も非課税で運用できる可能性が高いです。
非課税で運用できるうちに、無理のない範囲でNISAを活用してみてください。
まとめ
投資経験がない方のなかには、NISA制度に対して「怪しい」と感じている方は多いです。
しかし、NISAの仕組みを理解すれば、決して怪しいものではないことがわかります。
NISAの最大のメリットは、投資で得た利益に税金がかからないことです。
通常20.315%の税金がかかるところ、NISA口座内で発生した利益はすべて自分の資産になるため、初心者でも効率よく資産を増やせます。
政府にとっても、投資で国民の資産が増えれば市場のお金の流れが良くなるといったメリットがあるため、NISAを積極的に勧めているのです。
NISAを始めようか迷っているときは、100円から商品を買えるネット証券を利用すれば、投資に挑戦しやすいでしょう。
投資に関する知識を深めながら、自分に合った方法でNISAを活用し、将来の資産形成に役立ててみてください。
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