
2024年スタートの新NISAはメリットの多い制度です。その中でも非課税期間が無期限となることで、特に積立投資においては、より安定した資産形成が可能となります。
今回は、新NISA制度の解説をして、投資信託の種類や年代別の積立額など積立投資の考え方をお伝えします。
目次
2024年スタートの新しいNISA制度とは
新NISAを始めるには
新NISAで投資を始めるには、まずNISA口座が必要です。
すでにNISA口座を保有していれば、2024年に自動的に新NISAの口座が開設されますので心配はありません。
まだNISA口座を持っていなければ、口座を開設する金融機関を選んでおきましょう。金融機関によって手数料が大きく違うこと、投資信託の取り扱い本数も異なるため金融機関選びは慎重に。
一般的にネット証券は実店舗証券会社より手数料が安く、投資信託の本数も多い傾向です。
年明けすぐから投資を始めたければ、新年を待つことなく年内に口座開設の手続きを済ませておきましょう。NISA口座は18歳から保有できます。
新NISA制度とは
NISAは少額投資非課税制度といって、一定額までの投資から発生した利益を非課税にするという制度です。
このNISA制度が2024年から再スタートします。非課税投資の限度額の拡大、非課税投資期間の無期限化などが拡充のポイントです。
【新NISA制度概要】
成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
年間投資枠 | 240万 | 120万 |
非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
非課税保有限度額(総枠) | 全体で1800万円(内成長枠投資枠:1200万円) | |
口座開設期間 | 恒久化 | 恒久化 |
投資対象商品 | 上場株式・投資信託等 (①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託及びデリパティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外) | 長期の積立分散投資に適した一定の投資信託 (現行のつみたてNISA対象商品と同様) |
購入方法 | スポット・積立 | 積立 |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
現行制度との関係 | 2023年末までに現行の一般NISAおよびつみたてNISA制度において投資した商品は、新しい制度の外枠で現行制度における非課税措置を適用 ※現行制度から新しいロールオーバーは不可 |
出典:金融庁 NISAとは
新NISAのつみたて投資枠で積立額はいくらにする?
新NISAには成長投資枠(年間240万円)とつみたて投資枠(年間120万円)の2つの枠があります。成長投資枠対象の商品をつみたて投資枠で購入することはできませんが、成長投資枠で積立投資をしても良いことになっています。
つまり、積立投資のみで年間360万円(120万円+240万円)の非課税枠を使用することができるのです。(累計1,800万円上限)
成長投資枠・・・株式や投資信託のスポット購入
【成長投資枠とつみたて投資枠の非課税保有のイメージ】
ケース1)OK 積立投資だけで全ての非課税枠利用
つみたて投資枠 1,800万円(年間360万円上限) |
ケース2)OK 株式など1,200万円 + 積立投資600万円
成長投資枠 1,200万円(年間240万円上限) | つみたて投資枠 600万円 |
ケース3)OK 成長投資枠の一部で積立投資可能
成長投資枠 300万円 | つみたて投資枠 1,500万円 |
ケース4)NG 株式投資は累計1,200万円を超えてはいけない
成長投資枠 1,800万円 |
投資信託の種類
投資が初めての場合、投資信託を選ぶ段階でつまづいてしまい投資を諦めてしまう方がいます。確かに、投資信託は株式投資のように投資先が単一でないため、何を選んだらいいのかわかりにくいです。しかし、投資信託の次のポイントを知っておくと投資信託選びのハードルが下がります。
つみたて投資対象商品
NISAの積立投資対象の投資信託は、長期・分散投資に適している金融庁の基準をクリアした一定の投資信託とETF(上場投資信託)に限られています。
一定の投資信託とは主に次の要件を満たすものです。
・販売手数料が無料
・運用中に継続してかかる信託報酬が一定基準以下
・信託期間が20年以上または無期限
・分配頻度が毎月でない
2023年9月15日現在、つみたてNISA枠対象のインデックス運用の投資信託は209本、アクティブ運用の投資信託等は34本、ETFが8本となっており合計251本がつみたてNISA対象の投資信託です。
国内 | 国内・海外 | 海外 | ||
公募型投資信託 | 株式型 | 48本 | 24本 | 64本 |
資産複合型 | 5本 | 100本 | 2本 | |
ETF(上場投資信託)* | 3本 | ー | 5本 |
*ETFとは株式のように証券取引所で値動きを見ながら売買できる上場投資信託のこと。
出所:金融庁 つみたてNISA対象商品の分類(2023年9月15日時点)
投資の方針
インデックスファンド
インデックスファンドとは、日経平均株価やTOPIX、S&P500やNYダウなどの指数に連動するように設計された投資信託のこと。機械的に指数に連動させる投資手法で、アクティブファンドより信託報酬が安いことが特徴。
アクティブファンド
インデックス運用で使用する指数を上回る運用成果を目指すよう設計された投資信託のこと。膨大な市場の分析から銘柄選びまで工数や人手が必要なため信託報酬は高め。
投資のエリア(地域)
投資信託の投資先は、国内、海外、内外の区分があり、その中でも先進国、新興国、米国、など投資エリアが細分化されている。
投資対象の資産
投資信託の投資対象となる資産は、株式、債券、不動産、コモディティ(小麦、トウモロコシ、金、銀、石油など)など、さまざま。
投資資産によって、株式投資信託、公社債投資信託、不動産投資信託などに分けられる。また、コモディティを含めこれらに広く投資する商品をバランス型投資信託という。
投資の方針、投資エリア、投資対象資産の情報は投資信託の目論見書で確認することができます。
自分が何に投資をしたいのか。どのエリアを投資対象とするのか。など、明確にすることで選択肢を絞れます。
一般的な投資信託のリスクとリターンは下表の通り。
ハイリスク・ハイリターン | ローリスク・ローリターン |
アクティブファンド | インデックスファンド |
株式 | 債券 |
海外ファンド | 国内ファンド |
自分の投資方針とリスク許容度を勘案して投資信託を選ぶようにしましょう。
年代別つみたて投資の活用術~積立額の決め方を伝授
NISAで積立投資を始めると言っても、積立額はどうやって決めたらよいでしょうか。
積立投資は少額ずつ長期運用するほど損失リスクが低くなるため、投資期間を長く確保できる20代の投資術と50代以降の投資とでは考え方が異なります。
リスクの取れる20代
投資は早く始めるほど有利に働きます。なぜならNISAの積立投資は運用益が再投資されるため、投資期間が長いほど複利効果が高くなるからです。
たとえば、18歳の人が30年後に2,000万円の資産を作りたいと考えたとき、目標達成に必要な積立額と想定利回りは次の通りです。
投資期間:30年
想定利回り(年率):5%
=================
目標達成のための毎月の積立額:2.4万円
投資元本:865万円
運用益:1,135万円
30年の期間中の利回りの平均が5%であった場合、目標金額の2,000万円を達成するための毎月の積立額は2.4万円です。長い投資期間の複利効果で運用益が投資元本を上回ります。
(出所:金融庁 資産運用シミュレーション)
老後まで余裕の30代
生活の基盤ができて人生のライフイベントが見え始める30代は、住宅ローンなどの負担が大きい年代ですが、積立投資で老後資金の準備を始めるための時間は十分取れます。
たとえば、35歳~25年間で2,000万円の老後資金を目標とする。利回り4%と想定し積立投資を始めた場合の毎月積立額は次の通り。
投資期間:25年
想定利回り(年率):4%
====================
目標達成のための毎月の積立額:3.9万円
投資元本:1,167万円
運用益:833万円
(出所:金融庁 資産運用シミュレーション)
まだ間に合う40代
住宅ローンの返済に加えて教育費に最もお金が必要な年代ですが、65歳まで働くことを考えれば積立投資を始めるのに遅すぎることはありません。目標金額を1,500万円と仮定すると毎月の積立額は次の通り。
投資期間:20年
想定利回り:3%
======================
目標達成のための毎月の積立額:4.6万円
投資元本:1,097万円
運用益:403万円
(出所:金融庁 資産運用シミュレーション)
無理は禁物50代
子育ても終盤となり住宅ローンも完済すれば、自分の老後のための保有資産が見えてきます。将来受け取れる退職金や公的年金額なども確認して、老後の生活設計を立てる時期です。
しかし、この年代はリスクの高い投資は避けたほうが無難です。老後資金を着実に準備できるようなリスクが低めの投資が望まれます。目標金額を設定するというより、投資に回せる資金からリスク許容度と相談して投資信託を選びましょう。
たとえば、55歳で年金開始までの10年間、月10万円を利回り2%と想定して積立投資する場合。
投資期間:10年
想定利回り:2%
=======================
10年後の金額:1,327万円(元本1,200万円+運用益127万円)
(出所:金融庁 資産運用シミュレーション)
運用しながら消費する60代以降
退職後は保有資産をなるべく減らさない工夫が大切になります。これまでに築いた資産を取り崩しながら残りの資産で運用を続けましょう。
たとえば、65歳の時に2,000万円の資産を保有していたとします。利回り1.3%で運用を続けながら、毎月7万円ずつを取り崩しても、資産が尽きるまで32年間(97歳)かかります。
年金の他の収入があれば、より安定した老後の生活が遅れます。
注意)計算は全て万円未満を四捨五入
まとめ
投資信託には、投資の方針、投資エリア、投資先の資産など一定のテーマがあります。自分の投資方針を明確にすれば投資対象となる投資信託を絞ることができます。
新NISAスタートを機に新たに投資を始める方が増えるでしょう。ただ、NISAは税制面では優れていますが元本を保証する制度ではありません。特に積立投資では短期売却をしてしまうと損失を出してしまう可能性は高くなります。
積立投資で損失リスクを低減するコツは、長期運用と運用中のコストの削減です。
投資資金をすぐに取り崩すことのないように、近い将来に使うお金は預貯金で管理して、10年以上使う見込みのない資金を投資運用するなど資産の振り分けが大切になります。
何か新しいことを始めるときは家計を見直すチャンスでもあります。自分の家計に合った方法で上手にNISAを活用し資産形成をすすめましょう。
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