
株式投資をはじめると、グロース株とバリュー株という専門用語を聞くことがあります。
グロース株は成長株とも呼ばれ、企業の成長性や将来性に着目し、業績の伸びが期待できる銘柄です。一方、バリュー株は割安株とも呼ばれ、割安な株価で購入できる銘柄となります。
株価の下落によるリスクを避けるためには、両方に対しバランスよく投資することです。株式投資で損をしないために、グロース株とバリュー株の違いを理解し、メリット・デメリットについて整理しておきましょう。
目次
グロース株とバリュー株の違いは
株式投資を行う上で、グロース株とバリュー株を理解しておくと戦略的に投資ができます。ふたつの違いをまとめると次のようになります。
種類 | 別名 | 多い業種 | 内容 |
グロース株 | 成長株 | ・半導体製造業 ・AI関連業 ・エネルギー関連業など | 企業の将来性を重視し、成長性が期待できる銘柄 |
バリュー株 | 割安株 | ・大手銀行 ・製造業 ・小売業 | 株価が比較的割安な銘柄 |
グロース株は成長株とも呼ばれ、企業の成長性や将来性を重視し、企業の成長性や業績の伸びに期待できる銘柄です。代表的な銘柄は、ニュース等でも話題になる米株ではアップルやエヌビディア、マイクロソフト、日本株では東京エレクトロン(8035)、レーザーテック(6920)、マネーフォワード(3994)などがあります。
一方、バリュー株は割安株とも呼ばれ、株価が比較的割安で業績が安定している銘柄となります。代表的な銘柄は米株ではJPモルガン、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ユナイテッドヘルス・グループ、日本株では東京海上ホールディングス(8766)、日本電信電話(9432)、オリックス(8591)などがあります。まずは、それぞれのメリットとデメリットを理解しましょう。
グロース株のメリット
グロース株は、企業の将来性を重視し、成長性が期待できる銘柄です。グロース株に投資するメリットには次のようなものがあります。
- 株価が短期間に値上がりする可能性がある。
- 投資家に注目され大きな利益が期待できる。
1.株価が短期間に値上がりする可能性がある
グロース株は株価が短期的に値上がりする可能性がある銘柄です。報道でよく取り上げられるなど話題になる企業の株は値動きが激しく、値上がりしている期間が一定期間以上あるとグロース株と呼ばれます。株価が注目されている銘柄は、証券会社の値上がりランキングなどからも分かります。
2.投資家に注目され大きな利益が期待できる
グロース株は、公表される業績やプレスリリースなどが投資家に注目されています。情報によって株価が上がり、大きな利益を上げるのが特徴です。経済紙や一般紙の報道により株価が敏感に変動するので、大きな利益が期待できます。
グロース株のデメリット
グロース株投資のデメリットは次のとおりです。
- 配当が期待できない
- 割高な場合、業績が悪ければ下落する可能性がある
1.配当に期待ができない
グロース株を発行する企業は、スタートアップ企業など株価を重視する企業が多いです。そのような企業では株価を上げるために配当を抑える傾向がみられるため、配当目的の購入には向いていません。長期的に株を保有して配当で利益を得るインカムゲインではなく、短期的な売買により利益を得るキャピタルゲインが主目的になっています。
2.割高な場合、業績が悪ければ下落する可能性がある
グロース株は勢いよく業績が上がり続けることを期待されているため、何らかの事情で業績が停滞もしくは悪化すると株価が急落する可能性があります。投資家は決算発表やプレスリリースなどに注目しているため、業績が悪ければ大幅に株価が下落することもあるでしょう。
バリュー株のメリット
バリュー株は株価が比較的割安な銘柄です。メリットは次のとおりです。
- 株価の値動きが少ない
- 配当や優待を期待できる
1.株価の値動きが少ない
バリュー株は、株価の値動きが少ない傾向にあります。株価が大幅に上昇する可能性は少ないですが、もともと割安であるため大きく下落するリスクも少ないです。一定期間中に株価が暴落することが少ないということは、企業の業績が安定しているとも言えます。知名度が高い銘柄の中にも、割安に評価される企業があるので探してみましょう。
2.配当や優待を期待できる
バリュー株は株価の短期的な値動きが少ないため、売買による収益(キャピタルゲイン)よりも配当や優待による収益(インカムゲイン)を期待できます。グロース株のように短期的な売買で収益を上げるよりも、配当を得ながら長期的に保有して株価の上昇を待てる人に向いているでしょう。
バリュー株のデメリット
バリュー株のデメリットは次のとおりです。
- 大きな利益を得にくい
- 株価が上がらない可能性がある
1.大きな利益を得にくい
バリュー株は株価が長い間割安の状態で安定していることが多いです。これまでも値動きが少ないことが多く、今後も大きく値上がりするか不明なため、短期的な売買で利益を得ることには向いていません。
しかし、健全な経営状態であれば、投資家により株価が見直されることもあります。いつかバリュー株の株価が上がって売却益を得るとしても、長期的な視野で待つとよいでしょう。
2.株価が上がらない可能性がある
バリュー株の株価が割安なのは、株価が企業の実態に見合うほど上がっていないためです。
株価が上がらない原因はさまざまです。優良企業でも投資家の注目が集まらない場合があります。バリュー株を購入する際は、割安となっている原因を探る必要があります。収益が上がりにくい構造などで成長が見込めない場合は、将来も株価は上がりにくいでしょう。
もし経営に問題があって株価が上がらない場合には、将来業績不振により株価が下落することも考えられます。実際に業績がよくなくて低い株価のままで低迷している株もあります。こうした株を割安と考えて投資してしまうことをバリュートラップといい、投資したとしても株価は上昇しません。
一方、経営状態がよくても注目されていない場合もあり得ます。割安だからといってすぐに買うことなく、専門家の意見を参考にするなど経営分析は怠らないようにしましょう。
グロース株とバリュー株を判断する指標は
グロース株とバリュー株を判断するには、複数の銘柄をさまざまな観点から比較しなければなりません。どのような場合でもあてはまる万能な指標はないので、複数の指標を判断材料にします。ここでは主な指標を4つ紹介します。複数の銘柄で購入を迷ったときは、複数の指標を使って比較してみましょう。
銘柄の分析になれてきたら、ここで紹介する以外の指標も活用してみるのもよいです。また、指標だけで判断するのではなく、企業から公表される決算情報やプレスリリースも合わせて考慮するとよいでしょう。
PER(株価収益率)
PER(株価収益率)とは、株価が1株当たり当期純利益の何倍かを示す指標です。計算式は次のとおりです。
株価に対して当期純利益が高ければ、効率よく利益が出ていると考えられます。そのため、PERが低いほど割安で、一方PERが高いほど割高と判断されます。一般に、PERが低ければバリュー株とされることが多いです。
PBR(株価純資産倍率)
PBR(株価純資産倍率)とは、株価が1株当たり純資産の何倍かを示す指標です。計算式は以下のとおりです。
PBRが1倍であれば1株当たりの純資産と株価が同じことになります。したがって、1倍を超えていれば割高、1倍未満であれば割安と判断できます。一般に、PERが低ければバリュー株とされることが多いです。
ROE(自己資本利益率)
ROE(自己資本利益率)とは、企業の自己資本でどれだけ当期純利益を生んでいるかを示す指標です。計算式は以下のとおりです。
自己資本に対して当期純利益が高ければ効率的に利益を生んでいることになります。ROEが高ければ投資家から注目されやすく、グロース株と判断する材料となるでしょう。
EPS(1株当たり純利益)
EPS(1株当たり純利益)は、企業が1株当たりどれだけの純利益を生んでいるかを示す指標です。
1株当たりの当期純利益が高ければ投資家は効率よく収益を上げられます。EPSが高いほど収益力が高く、グロース株と判断する材料となるでしょう。
ポートフォリオで分散投資を
株式に限らず投資にはポートフォリオが必要と言われます。ポートフォリオは、さまざまな金融商品を組み合わせ、リスクを分散するために作成します。分散投資の主な手法は、「資産の分散」や「時間の分散」、「地域の分散」です。
株式投資であれば、株価の上下に応じて購入量を調整することで時間の分散を行い、購入金額を平準化できます。また、投資先を日本国内など特定の地域に偏るのではなく、全世界を視野に入れて地域の分散を図ることも大切です。さらに、資産の分散として、グロース株とバリュー株などに分散する手法も有効です。
これらの分散投資を行うことで、金融資産の偏りを防ぎ株価の上下に伴うリスクを避けられます。また、定期的にポートフォリオを見直しして再構成(リバランス)することも重要です。グロース株とバリュー株へ投資するメリットとデメリットを考慮し、自分に合ったポートフォリオを考えていきましょう。
投資するならグロース株とバリュー株のどちらがおすすめか
株式に投資するには分散投資が大切です。その際、グロース株とバリュー株のどちらがおすすめということはありません。特定の銘柄に偏ることなくバランスよく投資することが必要です。
グロース株は成長が期待される株なので短期の売買に向いていますが、業績によっては下落幅が大きくなる可能性もあります。バリュー株は株価が安定しており割安ですが、配当や優待を期待できます。長期的に保有するのに向いているでしょう。
株式投資をする際には、両方をポートフォリオに組み入れてリスクの分散を図るとよいでしょう。組み入れる比率は投資する個人のリスク許容度によります。投資期間の長短や期待する利益率・許容できるリスクに応じて、自分に合った投資方法を選択しましょう。
また、購入する銘柄を選定する際に万能な指標はありません。企業からの公表資料や複数の指標を使って総合的に判断することが大切です。バリュー株とグロース株の両方をポートフォリオに組み入れて投資していくのがよいでしょう。
まとめ
この記事では、株式投資においてグロース株とバリュー株の違いとそのメリット・デメリットについて解説しました。
・グロース株:成長株: 企業の将来性を重視し、成長性が期待できる銘柄
・バリュー株:割安株: 株価が比較的割安な銘柄
グロース株は、将来の成長性を重視した投資対象で、注目される企業の株価が短期的に値上がりする可能性があります。また、公表される業績やプレスリリースが投資家の注目を集め、大きな利益が期待できる一方で、配当目的の購入には適していないという特徴があります。
さらに、割高な株価や業績の悪化は株価の急落を引き起こす可能性があります。これらの特性を理解し、リスクを適切に管理しながら投資戦略を練ることが重要です。
バリュー株は、比較的割安な銘柄で、株価の大きな変動が少なく、大幅な下落リスクも少ないという特徴があります。その安定性から、配当や株主優待の期待ができ、長期的な保有と配当を通じた収益(インカムゲイン)が主目的になります。
しかし、株価の上昇が少ないため、大きな利益を得るのは難しく、短期的な売買での儲けは期待できません。株価が割安な理由を理解し、それが企業の実態に見合ったものであるかをチェックすることが重要です。
バリュー株は長期的な視野で待つことが求められ、割安な株価は企業の経営状態に起因する場合は注意が必要です。
グロース株とバリュー株を判断するには、複数の銘柄をさまざまな観点から比較しなければなりません。どのような場合でもあてはまる万能な指標はないので、複数の指標を判断材料にします。
両者を理解することで、リスクを回避しながら株式投資を行うことが可能です。ただし、分散投資が大切であり、特定の銘柄に偏ることなくバランスよく投資することが求められます。
株式投資は知識と経験が不可欠ですが、丁寧な調査と分散投資を実践すれば、それぞれの投資家に合った投資スタイルを構築することができます。難しいと思われるなら弊社のような投資顧問などプロを頼るのも1つの解決方法かもしれません。
コメントComment