
資産形成や投資についての情報がかなり出回るようになりました。2024年から新しいNISA制度が始まり、今まで以上に投資に注目が集まっています。
そんな中で米国株に関連する指数に連動する金融商品もぞくぞくと登場しています。
投資初心者にとっては、どの商品を選んだら良いのか分からないといった人もいることでしょう。
特に代表的な指数である『S&P500』や『NASDAQ100』に投資したくても実のところ、その内容がよく分からないといった人も少なくありません。
この記事では、代表的な指数の基本的なところから、2つの指数の違い、投資先としておすすめの金融商品について網羅的に説明します。
まずは、しっかりと投資信託の基準となる指数について理解し、自分なりの投資戦略を立てるための参考にしていきましょう。
目次
米国株に関連する代表的な株価指数とは
まず、株式市場全体の値動きをあらわす指標である株価指数について説明します。
株価指数とは、複数銘柄の株価を一定の計算式で総合的に数値化したものです。
投資家にとっては相場を理解するための基準になるものであり、日本の代表的な株価指数には、日経平均株価(日経225)やTOPIXなどが挙げられます。
米国においては、S&P500やナスダック100などが代表的で、その他にも代表的な株価指数がいくつかあります。
株価指数(かぶかしすう)とは
株価指数とは、取引所全体や特定の銘柄グループの株価の動きを表すもので、個々の株の値動きを一定の方法で計算し数値化したものです。
S&P500の特徴
S&P500とは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が公表する米国株式市場の代表的な株価指数です。
名前に500とついている通り、ニューヨーク証券取引所またはナスダックに上場している企業のうち500社の株価を基に、時価総額加重平均と呼ばれる算出方法(=各銘柄の時価総額を合計した後に、基準点の時価総額合計で割って計算)で算出されています。
構成銘柄は定期的に見直されており、幅広い業種の諸銘柄より算出されるので、時価総額が大きい銘柄に左右されにくい指数といわれています。
NASDAQ100(ナスダック)の特徴
NASDAQ100とは、ナスダック市場に上場している100社を基本に、S&P500と同様、時価総額加重平均と呼ばれる算出方法で算出されています。
ナスダック市場はもともとIT系などの新興株が主流でしたが、AmazonやGoogleなど今や世界的に知られている企業が入っているため、年々時価総額が拡大しているのが特徴です。
S&P500に比べて基準とする企業が少ないことやナスダック市場に限定されている分、偏った値動きをすることで知られています。
ちなみにナスダック市場に上場している全ての銘柄(約3,000社)で構成する時価総額加重平均型の指数のことをナスダック総合指数と呼ぶます。
S&P500とNASDAQ100の違いとは
現在、S&P500やNASDAQ100は株価指数として市場動向を知る数値というだけではありません。
この指数に連動する投資信託など金融商品が多数設定・販売されています。
投資信託は今やネット証券で100円からの少額で購入することができ、巷では「S&P500(に連動する金融商品)に投資するのか?NASDAQ100(に連動する金融商品)に投資するのか?」とよく議論になるほどです。
そこで、2つの共通点や相違点について、構成銘柄や近年のリターンの点などを比較して解説していきます。
構成銘柄比較について
まず、S&P500とNASDAQ100の構成銘柄について比較していきます。
上述の通り、S&P500はニューヨーク証券取引所・ナスダック市場両方の中から500社、ナスダック100はナスダック市場の中から100社を基に構成されています。
それゆえ、2つの指数の構成銘柄は共通する企業も多く含まれています。
S&P500構成上位5銘柄
会社名(2024年11月30日現在) | 構成比率 | |
1 | アップル(AAPL) | 6.7% |
2 | エヌビディア(NVDA) | 6.3% |
3 | マイクロソフト(MSFT) | 5.9% |
4 | アマゾン・ドット・コム(AMZN) | 4.1% |
5 | メタ・プラットフォームズ(META) | 2.7% |
6位以下の構成銘柄とS&P500の詳細は「S&P500とは?」のページをご覧ください。
NASDAQ100 構成上位10銘柄
会社名(2024年12月12日現在) | 構成比率 | |
1 | アップル(AAPL) | 12.3% |
2 | エヌビディア(NVDA) | 11.2% |
3 | マイクロソフト(MSFT) | 11.0% |
4 | アマゾン・ドット・コム(AMZN) | 8.0% |
5 | アルファベットC(GOOG) | 7.9% |
6位以下の構成銘柄とNASDAQ100の詳細は「NASDAQ100」とはのページをご覧ください。
参照:JTG証券
いわゆるGAFAM(グーグル・アップル・フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)・アマゾン・マイクロソフト)などは2つの指数に共通して構成銘柄となっています。
ただ、GAFAMの構成比率は、S&P500の方は合計して23.3%に対して、NASDAQ100の方は合計して52.4%です。
GAFAMのような大型株の構成比率が高いナスダック100の方がS&P500よりGAFAMの株価の変動の影響を受けやすいことになります。
過去10年間のリターン比較
S&P500やNASDAQ100のリターンについて比較します。
2024年上半期のS&P500の上昇率が14.48%、ナスダック100の上昇率が25%と順調にリターンをあげていますが、これはアップルが世界初の時価総額3兆ドル超を達成したことなどが影響しています。
もし、GAFAMの一角が大幅に下落するようなことがあれば、S&P500の方がナスダック100よりも上昇率が高いといったことも起こりうることは理解しておくと良いでしょう。
年度 | S&P500 リターン | NASDAQ100 リターン | 差額 |
---|---|---|---|
2015 | -0.7% | 8.4% | +9.1% |
2016 | 9.5% | 5.9% | -3.6% |
2017 | 19.4% | 31.5% | +12.1% |
2018 | -6.2% | -1.0% | +5.2% |
2019 | 28.9% | 37.3% | +8.4% |
2020 | 16.3% | 47.6% | +31.3% |
2021 | 26.9% | 26.6% | -0.3% |
2022 | -19.4% | -32.5% | -13.1% |
2023 | 24.2% | 53.8% | +29.6% |
2024(上期) | 14.5% | 25.0% | +10.5% |

過去10年間の年次リターン分析からは、NASDAQがS&P500を大幅にアウトパフォームした年が多く、特にテクノロジーの活況期(2020年、2023年)での差が顕著です。しかし、市場下落局面(2022年)ではNASDAQ100の下落率がより大きく、ハイリスク・ハイリターンの特性が確認できます。
リスクの比較
最近の市場のボラティリティの中でも、NASDAQ100 トータル リターン インデックスは、S&P 500 トータル リターン インデックスの2倍を超える累積トータルリターンを一貫して維持しています。
ボラティリティとは、投資のリスクを示す指標で、価格の変動の大きさを表します。ボラティリティが高いと、価格が大きく上下することを意味し、リスクが高いとされます。
参考:nasdaq
NASDAQ100のボラティリティをS&P 500と比較すると、2007年12月31日~2024年12月31日までの17年間で平均2.7%高くなっています。これはNASDAQ100がテクノロジー企業に多く投資しているため、価格の変動が大きくなる傾向にあるからです。
過去20年の相場転換点でどう動いたかを比較
イベント時期 | イベント内容 | S&P500 変動率 | NASDAQ100 変動率 |
---|---|---|---|
2000-2002年 | ITバブル崩壊 | -49% | -83% |
2008-2009年 | リーマンショック | -56% | -54% |
2020年3月 | コロナショック | -34% | -30% |
2022年 | インフレショック | -25% | -33% |
2023-2024年 | AIブーム | +45% | +78% |
危機時の下落率はS&P500の方が大きいが、回復速度はNASDAQ100が速い傾向にあります。また、テクノロジー革新が起きる局面でNASDAQ100が突出しています。(2000年ITバブル期の+85% vs S&P500 +19%)その後、AIバブルが起き株価上昇することで指数も上昇しました。

NISAで買うならS&P500、NASDAQ100、どっち?
S&P500やNASDAQ100を購入する際にNISAを活用すると儲けた分の税金を非課税運用できるのでお得な制度です。
しかし、NISAにはいくつかの特徴があり、制度の内容を理解していないと思った通りの投資ができないことにもなりかねません。
どのような金融商品を購入するかを考えるのも重要ですが、まずはNISAの制度についてもきちんと理解することを忘れないようにしましょう。
NISAの制度概要
成長投資枠・つみたて投資枠の比較表 | ||
特徴 | 成長投資枠 | つみたて投資枠 |
年間投資額の上限 | 240万円 | 120万円 |
生涯投資額の上限 | トータルの上限は1,800万円 | |
1,200万円 ※1,800万円のうち、1,200万円までしか利用できない | 1,800万円 ※成長投資枠を利用しない場合は満額の1,800万円をつみたて投資枠に利用できる | |
購入できる商品 | ・上場株式(国内・海外) | 選択肢が少ない ・投資信託 |
投資方法 | 自由に選べる | 積立投資のみ |
非課税保有期間 | 無制限 |
注意点としては、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠はそれぞれ上限金額が設定されているだけではありません。
購入できる金融商品も異なり、特につみたて投資枠で購入できる商品は基本的に投資信託になります。ただ、つみたて投資枠は、積立投資を前提としているため、一括で買い付けができないといった制約があります。
また、つみたて投資枠ではレバレッジがかかった商品は対象外となっているため、S&P500やNASDAQ100に連動していても購入できない商品があるので注意しましょう。
NISAで買うなら?「S&P500」VS「NASDAQ100」
「S&P500」VS「NASDAQ100」のNISAで買うならどちらがお得かは一概に言えないのですが、NISAは長期投資を前提にしています。そのため高いリターンを求め、それに伴うリスクを許容できる方はNASDAQ100、リターンが低くなっても分散投資を望む場合はS&P500がおすすめです。
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S&P500とNASDAQ100に連動するおすすめ金融商品
現在、S&P500やNASDAQ100に連動する金融商品は複数あります。
投資初心者は純資産額が大きく、多くの人が購入している流動性の高い金融商品などが向いています。
以下、新NISAで購入できるS&P500とNASDAQ100に連動するおすすめ金融商品を紹介します。
<S&P500に連動する金融商品>
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(SBI・V・S&P500)
SBIアセットマネジメントが運用する投資信託です。
バンガード社が運用するS&P500ETFに連動する形の投資信託になっています。
総資産額が1兆2092億円、信託報酬が年率0.0638%というのもウリです。
<ナスダック100に連動する金融商品>
ニッセイアセットマネジメント株式会社が運用する投資信託です。
2023年3月に設定されたばかりですが、信託報酬が0.2035%と業界最低水準の金融商品です。
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まとめ
S&P500とナスダック100はどちらも米国市場の動向を示す代表的な株価指数です。
それぞれ特徴がありますが、構成銘柄は似ている部分もあります。
S&P500の方が構成銘柄が多いため分散投資になっており、リターンが低く抑えられる側面がありますが、ナスダック100はS&P500よりも偏った構成銘柄な分、リスクも大きくなる点は頭に入れておく必要があります。
長期的な米国の経済成長を考慮すると、S&P500やナスダック100に連動する金融商品は新NISAへの投資先としても検討する余地があります。
ただし、新NISAの制度上、すべての金融商品が購入できるわけではないので注意が必要です。
いくつかの注意点をしっかり理解した上で、投資をするのがベストといえるでしょう。
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