
NISA口座では、複数の銘柄を組み合わせて自分に合ったポートフォリオを組めます。つみたて投資を続けている方のなかには、もっと安全かつ効率よく資産を増やす方法はないかと考えはじめる方も多いです。
しかし、NISAで「そもそも複数のインデックスファンドを持つ必要があるのか」や「どのような組み合わせが自分に適しているのか」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
本記事では、NISAで複数銘柄を運用するメリットやデメリット、おすすめのポートフォリオ例について解説します。複数の銘柄を選ぶときのポイントも紹介しているので、この記事を読めば、NISA制度を活用して効率よく老後資金を作れるようになるでしょう。
目次
NISAで複数銘柄を運用する必要はない
長期的な目線で資産を運用する場合、NISAで複数の銘柄を買う必要はありません。1つ、もしくは2つのインデックスファンドを長期的に運用していれば、十分なリスク分散効果が期待できるからです。
たとえば、インデックスファンド「eMAXIS Silm 全世界株式」に絞って積み立てるだけでも、日本やアメリカ、新興国株式など、全世界の株式に分散投資ができます。
さらに、値動きが似ているファンドを複数持っていても運用成績は変わらず、むしろ管理が複雑になるかもしれません。
まだ投資に慣れていないときは、1〜2本のインデックスファンドに絞り、コツコツと投資を続けるのが無難でしょう。
NISAで買えるおすすめの銘柄については、月1万円でつみたてNISAを始めるなら?オールカントリ― vs S&P500どっち?の記事で解説しています。
NISAで複数銘柄を運用する2つのデメリット
NISAで複数の銘柄を運用すると、以下のようなデメリットが生じます。
- 商品選びが難しい
- 管理に手間がかかりやすい
デメリットを知っておけば、いま以上に投資先を増やすべきか冷静に判断できるようになるでしょう。
商品選びが難しい
NISAでは買える商品の数が豊富なので、複数の銘柄を運用するときは、商品選びが難しく感じるでしょう。
2024年12月時点で、SBI証券のNISA口座で買える銘柄の数は、以下のとおりです。
- つみたて投資枠:248本
- 成長投資枠:1,263本
参考:SBI証券|NISAで買える商品
つみたて投資枠でも約250本の投資信託が買えるので、そもそも最適な1本を選ぶのでさえ難しいです。
また、リスクを最大限に分散させるため、複数の銘柄を運用するときは「同じ値動きにならない銘柄」を組み合わせる必要があります。持っている商品を総合的に見て判断していくので、投資に慣れていない方にとっては、複数銘柄の商品選びに苦戦しやすいでしょう。
管理に手間がかかりやすい
NISAで複数の銘柄を買うと、それぞれの商品の管理に手間がかかりやすいです。実際に、資産運用を続けていくうえで必要な判断として、以下のような項目が挙げられます。
- いつ売却するか
- いつ買い増しするか
- それぞれの商品をどのくらいの割合で持つか
たとえば、全世界株式と新興国株式の2本の銘柄を運用している場合、それぞれの値動きを確認し、保有バランスが崩れていないかをチェックしなければなりません。
慣れないうちは銘柄ごとの管理に手間がかかりやすいので、1〜2銘柄のシンプルな運用がおすすめです。
NISAで複数銘柄を運用する目的はリスク分散の強化
NISAで複数の銘柄を組み合わせる最大のメリットは、損失リスクの分散にあります。特徴の異なる銘柄を組み合わせれば、ある銘柄が値下がりしても、ほかの銘柄でカバーできる可能性があるからです。
リスク分散の方法には、以下のような種類が挙げられます。
- 地域による分散:日本、アメリカ、新興国など
- 資産による分散:株式、債券、REIT(不動産)など
- 業種による分散:金融、IT、ヘルスケア、自動車など
たとえば、日本とアメリカのファンドを買っている場合、日本の株価が下がったときでも、アメリカの株価が上がっていれば、損失を相殺できる可能性があります。
また、自分のリスク許容度に合わせてポートフォリオを組み換えられる点も、複数の銘柄を運用する強みだと言えるでしょう。
NISAで複数銘柄を組み合わせる4つのポートフォリオ例
NISAで複数の銘柄を運用するポートフォリオ例を、目的ごとに4つ紹介します。
- ローリスクでリターンを狙う
- バランスよく株式に投資する
- ハイリスクハイリターンを狙う
- 株式以外にも投資する
ただし、上記のポートフォリオ例は利益を確約するものではありません。最終的には、自身の判断で組み合わせを検討する必要があります。
それでも、商品の組み合わせ方をいくつか知っておけば、自分にあった運用方法を見つけやすくなるでしょう。
年代別のおすすめポートフォリオは、新NISAでつみたて投資するなら?アナリストが厳選!年代別おすすめポートフォリオで詳しく解説しています。
ローリスクでリターンを狙う組み合わせ
安全性を保ちながら、できるだけ多くのリターンを狙うときは、以下のような銘柄を組み合わせるのがおすすめです。
商品名 | 投資対象 | 割合 |
eMAXISSlim 全世界株式(オール・カントリー) | 日本を含む、先進国および新興国の株式 | 50% |
eMAXISSlim 米国株式(S&P500) | S&P500インデックスに採用されている米国の株式 | 50% |
成長が見込まれるアメリカ株を中心に投資しながら、新興国や先進国にも幅広く分散するポートフォリオです。
どちらの銘柄も、信託報酬(運用手数料)が約0.05〜0.09%と低く設定されているので、運用コストを抑えて利益を最大に引き出せます。
オール・カントリー1本の運用と比べてアメリカの割合が高くなるので、その分高いリターンが期待できます。損失リスクを抑えながらも、比較的高いリターンが狙えるポートフォリオだと言えるでしょう。
バランスよく株式に投資する組み合わせ
バランスよく株式に投資したいときは、以下のような組み合わせで実現できるでしょう。
商品名 | 投資対象 | 割合 |
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 日本を除く、先進国の株式 | 50% |
eMAXIS 新興国株式インデックス | 新興国の株式 | 50% |
先進国を対象とするインデックスファンドと、新興国を対象とするインデックスファンドの組み合わせです。
安定的な成長が見込まれるアメリカ株と、急成長による値上がりが期待できる新興国株を組み合わせているので、リスクを分散したうえで利益が狙えます。
新興国インデックスファンドには10年以上の運用実績があるので、損失リスクは高いものの、安心感を持って投資を続けられるでしょう。
ハイリスクハイリターンな組み合わせ
リスクは高いものの、それだけハイリターンが狙えるポートフォリオ例は、以下のとおりです。
商品名 | 投資対象 | 割合 |
eMAXISSlim 米国株式(S&P500) | S&P500インデックスに採用されている米国の株式 | 50% |
eMAXISSlim新興国株式インデックス | 新興国の株式 | 50% |
アメリカ株を対象とするファンドと、新興国を対象とするファンドの組み合わせです。前の章で紹介したポートフォリオよりも「アメリカ株」の割合が高くなるので、より大きなリターンが狙えるでしょう。
また、全世界株式を1本運用するよりもアメリカの割合を少なくし、その分は新興国に投資しています。中国やインドを含む新興国は、政治や社会情勢、インフレなどのリスクが高い一方で、狙えるリターンも大きい投資先です。
投資期間が長くとれる若い方や、現金による貯蓄がある方などは、上記のようなハイリスクハイリターンな戦略も選択肢のひとつとなるでしょう。
株式以外にも投資する組み合わせ
株価の暴落に備え、株以外にも投資したいときは、以下のような組み合わせを検討しましょう。
商品名 | 投資対象 | 割合 |
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) | 株式(国内、先進国、新興国)、債券(国内、先進国、新興国)、REIT(国内、先進国) | 70〜80% |
eMAXISSlim 全世界株式(オール・カントリー) | 日本を含む、先進国および新興国の株式 | 20〜30% |
株式だけでなく、全世界の債券やREIT(不動産投資信託)などにも投資する組み合わせです。株式以外に投資するため、世界中の株価が暴落しても損失を抑えられます。
上記2つの銘柄は、どちらも成長が見込まれるアメリカの割合が高いので、十分に値上がり益も狙えるでしょう。
株だけに投資するのが不安なときは、上記のようなポートフォリオを参考に、組み合わせる商品の割合を調整しながら投資をしてみてください。
NISAで複数銘柄を選ぶときの5つのポイント
NISAで複数の銘柄を組み合わせるときは、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。
- 手数料が安い銘柄を選ぶ
- インデックスファンドを選ぶ
- 異なるジャンルの銘柄を組み合わせる
- できるだけ少ない銘柄数でポートフォリオを組む
- 自分のリスク許容度にあったポートフォリオにする
ポートフォリオを組むときに意識する点を知っておけば、自信を持って商品を選べるようになるでしょう。
手数料が安い銘柄を選ぶ
長期的に低コストで運用を続けるために、できるだけ手数料が安いファンドを選びましょう。NISAで投資信託を運用するときには、以下のような手数料が発生します。
- 販売手数料:投資信託を買うときにかかる手数料
- 信託財産留保額:投資信託を売るときにかかる手数料
- 信託報酬:投資信託の運用を委託した会社に支払う手数料
このうち、信託報酬は商品を持ち続ける限り、毎年かかる手数料です。NISAは長期的な資産運用が目的の制度なので、信託報酬が高いと利益がどんどん減ってしまいます。
投資先が似ている商品のなかでどれを買うのか迷ったら、信託報酬が約0.05〜0.2%の投資信託を選ぶと良いでしょう。
楽天証券やSBI証券などのネット銀行では、信託報酬が安い商品を多く取り扱っています。
インデックスファンドを選ぶ
NISAで長期的に資産を運用するなら、インデックスファンド(指数に連動する成績を目指すファンド)を選びましょう。アクティブファンド(指数を上回る成績を目指すファンド)や個別株よりも、運用成績が良い傾向にあるからです。
SBI証券の発表によると、過去10年間でインデックスファンドの運用成績を上回ったアクティブファンドの勝率は、以下のとおりです。
ファンド名(2024年11月20日時点) | インデックスファンドとの勝率 |
日本新興株オープン | 47% |
MHAM 新興成長株オープン | 28% |
新成長株ファンド | 24% |
三井住友・中小型株ファンド | 19% |
JPM ザ・ジャパン | 18% |
参考:SBI証券|インデックスに本当に勝ったアクティブファンドは?
1位のアクティブファンドで47%、2位以下の勝率は30%以下と、インデックスファンドより運用成績が低めです。
複数の銘柄を買うときでも、長期目線で資産を運用するなら、インデックスファンドを選ぶのが良いでしょう。
異なるジャンルの銘柄を組み合わせる
保有する商品の値動きが同じにならないよう、できるだけ異なるジャンルの商品を組み合わせましょう。
たとえば、日本とアメリカの投資信託を組み合わせている場合、日本株が値下がりしたときでも、アメリカの株価が上がっていれば損失を抑えられます。
複数の銘柄に投資するおもな目的は「リスク分散」なので、できるだけ異なるジャンルの銘柄を組み合わせるのがおすすめです。
できるだけ少ない銘柄数でポートフォリオを組む
NISAで複数の銘柄を運用するときは、できるだけ少ない数でポートフォリオを組みましょう。
たくさんの銘柄を組み合わせると、商品ごとの管理に手間がかかるからです。また、似た値動きをする投資信託を複数持っていても、リスク分散の効果を発揮できません。
投資に慣れていないときは、1〜2本程度の銘柄に絞って運用するのがおすすめです。
自分のリスク許容度にあったポートフォリオにする
複数の銘柄を買うときでも、自分の「リスク許容度」にあったポートフォリオを組む必要があります。
たとえば、預貯金が十分にあればハイリスクハイリターンな商品を選べますが、貯蓄が不十分で、確実に老後資金を作りたいときは安定性の高い商品を選ぶべきです。
個々のリスク許容度によって組み合わせる銘柄が異なるので、まずは自分がどれだけのリスクに耐えられるのかを把握しておきましょう。
全国銀行協会が提供する「診断テスト」を使えば、自分のリスク許容度を簡易的にチェックできます。
NISAで複数銘柄を運用するときによくある質問
NISAで複数銘柄を運用するときのよくある質問に回答します。
- 初心者は銘柄をどう組み合わせるべき?
- 複数の銘柄を買えば複利効果が高まる?
それぞれ見ていきましょう。
初心者は銘柄をどう組み合わせるべき?
資産運用を始めたばかりの初心者こそ、複数の銘柄を組み合わせる必要はありません。インデックスファンドに投資すれば、十分にリスクを分散できるからです。
むしろ、複数の銘柄を組み合わせると管理や商品選びに手間がかかります。自分なりの投資戦略が固まるまでは、1〜2本の投資信託に絞って投資するのが良いでしょう。
複数の銘柄を買えば複利効果が高まる?
複数の銘柄に投資しても、複利には影響がありません。
複利とは、発生した利益を再び投資して、雪だるま式に資産が増える法則です。投資先の数ではなく、期間や金額などに影響されます。
複利によって利益を増やしたいときは、できるだけ早めに資産運用を始めましょう。
まとめ
NISAで複数の銘柄を運用すると、リスク分散の効果が期待できます。
しかし、管理の手間や商品選びの難しさというデメリットもあるので、投資に慣れていないときは、1〜2本のインデックスファンドに絞って運用するのが良いでしょう。
それでも「より効率的な運用を目指したい」や「もっとリスク分散をしたい」と感じたら、複数銘柄の運用も選択肢のひとつです。
NISAで複数の銘柄を組み合わせるときは、異なるジャンルで、手数料の安いインデックスファンドを選びましょう。
本記事で紹介した4つの組み合わせ例を参考にしながら、自分のリスク許容度に合った戦略でNISAを活用してみてください。
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