預貯金ではお金を増やせない今、株式や投資信託、その他の金融商品で資産運用を考える方は増えています。
投資資金が100万円あったら、どのように資産運用しますか?
投資への期待値やリスクの許容度は人それぞれ異なります。大切なのは自分に合う資産運用の方法を見つけることです。
今回は、投資資金100万円でできることを考えてみたいと思います。
目次
100万円の投資先
一般的に、投資のリスクとリターンは比例します。大きな収益を期待するのであれば、それなりのリスクを負うことになりますし、リスクを極力抑えてければリターンも小さくなりがちです。どこで折り合いをつけるかは自分自身で決めるしかありません。
まずは、投資しようとする金融商品がどのような特徴を持つものなのかをしっかり見極めましょう。
個人向け国債
個人向け国債は債券のひとつで、債券の種類は、ほかに地方債、社債などがあります。
資金を貸した投資家は、半年ごとに利子(クーポン)を受け取ることができます。また、償還(満期)時には、債券の発行元が債券額面で買い戻すことを保証しているため、投資家の元本が目減りすることはありません。
個人向け国債の利率は、年率0.05%の下限金利が設定されています。経済状況の悪化などで世の中の金利がどんなに下がっていても、個人向け国債の金利は0.05%を下回ることはありません。利子(クーポン)の支払いは、半年ごとに年2回です。
個人向け国債は満期期間が10年の変動金利タイプ、5年、3年の固定金利タイプの3つの商品があります。
1万円という少額から購入ができて購入後は1年が経過すれば、1万円から中途換金が可能です。ただ、中途換金をする場合、直前2回分の利子から約8割(0.79685)相当額が受取額から差し引かれてしまうため、利子を満額受け取ることはできません。
【個人向け国債の商品概要】
満期期間 | 10年 | 5年 | 3年 |
金利タイプ | 変動金利 | 固定金利 | 固定金利 |
特徴 | 半年ごとに適用金利が見直されるため、受取利子が変動する | 満期まで利率が固定されているので、最初に運用結果を知ることができる | 満期まで利率が固定されているので、最初に運用結果を知ることができる |
金利設定方法 | 基準金利x0.66 | 基準金利-0.05% | 基準金利-0.03% |
購入場所 | 証券会社、銀行、信用金庫など |
参考までに、2023年10月現在の適用金利は、3年固定0.09%、5年固定0.33%、10年変動0.51%となっています。
同じく元本保証のある定期預金の金利が0.002%であるのと比較すれば、リスクを取りたくない資産の運用先として選択肢となりそうです。
投資信託
投資信託は、同じファンドに出資した複数の投資家の資金を一つにまとめ、投資の専門家が投資家に代わり運用し利益を目指すものです。運用が上手くいって利益がでれば、運用益が出資額に応じて分配金として還元されます。
投資信託の運用先は、株や債券、不動産、コモディティなど、投資信託のテーマに適した様々な金融商品です。また、投資する地域も、日本、全世界、米国、先進国、新興国など、投資信託によって異なります。
一般的に、投資のリスク回避に有効なのは分散投資といわれますが、投資信託は一つの商品に複数の投資先が混在しているため、すでに分散投資となっているという見方がされます。
また、株式のように日々の値動きに振り回されることも少ないため、投資初心者が手の出しやすい金融商品といえます。
株式
株式とは、企業が自社の事業運営のために出資をしてくれる投資家に発行する証券のことです。株式を購入すれば株主となり、議決権を保有して企業の運営に参加することができます。企業の業績が良ければ配当金を得ることでき、株主優待を実施している企業では自社製品がもらえたり、各種サービスを受けることもできます。
少し専門的な言葉になりますが、株式への投資から得られる利益は、インカムゲインとキャピタルゲインの2つです。
株式を保有することで得られる利益(配当金や株主優待)をインカムゲイン、株式を売買することで得る利益がキャピタルゲインです。
銘柄によりますが、株を購入するには最低、数万円~数十万円程度の資金が必要です。投資信託のように運用を専門家にお任せする投資ではないため、投資家自身にある程度の知識が必要です。
外貨預金
外貨預金は、米ドル、豪ドル、ユーロなど外貨建てで行う預金です。
円ベースの預金より金利設定が高く、銀行で手軽に始められるため人気があります。
外貨建てで利子が付くため、預けている金融機関が破綻するといったことさえなければ、外貨建てで元本割れはありません。
ただし為替変動の影響を受けるため、円建ての元本は保証されていません。
預入時より満期時の為替が円高に振れていると、円ベースで元本割れの可能性もあります。反対に、円安に振れていれば円ベースの受取額が大きく増えることもあります。
為替の変動が受取額に与える影響を検証しましょう。
(例)年利5%の米ドル定期で100万円を運用する場合(税金、為替手数料は考慮しない)
年利5%:1万ドルx1.05=1万500ドル
1万500ドルx90円=94.5万円 < 100万円
1万500ドルx110円=115.5万円 > 100万円
利子が付いても、為替次第で元本割れすることがあります。外貨で運用する際は、為替変動リスクを理解しておくことが大切です。
保険商品
保険商品の中には貯蓄性の高い商品があります。
100万円の運用先としては、学資保険や養老保険などを資産運用に活用することもできます。
学資保険は以前ほど返戻率が良くないため、最近は、資産運用先としてうま味が少ないという声も聞きますが、契約時に受取額が確定していること、契約者に万一のことがあったときの保障という意味合いを兼ねていることを考えれば利用価値はあります。
また、学資保険は、医療保障など特約を付けてしまうと返戻率が下がりますが、特約なしで契約すれば返戻率が上がります。多くの会社ではHPで返戻率のシミュレーションができますので複数社を比較して資産運用効果が高い保険を選ぶ工夫も必要でしょう。
養老保険は、一定期間の保障と貯蓄機能の両方を合わせ持つ保険です。契約時に一括で保険料を支払うことで、保障期間中に万一のことがあった場合には保険金が支払われますし、何事もなく満期を迎えれば設定利率で満期金が受け取れます。
ただし、多くの場合、保険商品は短期間の資産運用には向いていません。中途解約すると元本を下回ることが多くなるので注意してください。
また、生命保険の場合、支払った保険料が生命保険料控除の対象となって、所得税、住民税が減額されるという他の資産運用にはない利点があります。
安全性・収益性・流動性を意識した選び方
何に投資をするか迷ってしまうとき、金融商品の安全性、収益性、流動性からヒントを得ることができます。投資における安全性、収益性、流動性とは次のことを意味しています。
安全性
投資元本が保証されているのか、利子は確実に支払われるのかということ。
個人向け国債、満期まで保有する保険商品は基本、元本が保証されていますので安全性が高いと言えるでしょう。
収益性
投資家の期待する収益を得ることができるのかということ。
収益の期待値が高ければリスクも高くなり、安全性を重視すればリターンも少なくなります。
リスクとリターンは比例するという概念を持ちつつ、リターン目標を設定し、金融商品を選ぶようにしましょう。
流動性
資金が必要になった時に、すぐに換金できるかということ。
預貯金ならATMで即日出金できますが、金融商品によっては、換金までに数日かかる金融商品もあります。
また、個人向け国債のように1年経過しないと換金ができないものや、保険のように短期間で解約すると元本割れする商品もあります。
【主な商品の安全性・収益性・流動性まとめ】
安全性 | 収益性 | 流動性 | |
個人向け国債 | 〇 | 〇 | △ |
投資信託 | △~〇 | 〇~◎ | 〇 |
株式 | △ | ◎ | 〇 |
外貨預金 | △~〇 | △~◎ | 〇 |
生命保険 | 〇 | 〇 | △ |
(参考:日本証券業協会 投資の時間)
100万円あれば効果的な資産運用が可能
投資で大きな失敗を避けるためのキーワードは「分散」です。
投資資金が100万円あれば、いくつもの分散が可能となります。
リスクの分散ができる
投資のリスクとは、一般的な「危険度」を図るものではなく、投資による「リターンが不確実であること」を意味します。
振れ幅の度合いが小さいことをリスクが小さい、振れ幅が大きいことをリスクが大きいと表します。
リスクとリターンは比例します。ローリスクでハイリターンな金融商品はありません。
しかし、100万円あれば、リスクの異なる金融商品に分散投資することができるため効果的な資産運用が望めるでしょう。
(出典:日本証券業協会 投資の時間)
投資先の分散ができる
投資資金100万円あれば、ひとつの金融商品に資産を投下するのではなく、種類やリスクの違ういくつかの金融商品を選ぶことができます。
投資先を分散していれば、いずれかの金融商品で損失がでても、他の金融商品でカバーできる可能性があります。投資は、個々の商品で損益を見るよりも投資額全体で収益を見る心持ちが大切です。
投資時期を分散できる
投資は時期をずらして資金を投下することでリスクを抑える効果があります。
たとえば、価格変動のある投資信託を、毎月1回、10万円ずつ10回に分けて購入するほうが、一度に100万円で投資信託を購入するより、結果的に多くの口数を購入できるという検証結果も出ています。
使用目的別に資産を分散できる
金融商品の中には、短期的な利益を狙えるもの、中長期的に保有することで利益を得やすいものなどそれぞれの特性があります。
投資資金が100万円あれば、目的別、運用したい期間別に分散して投資先を選ぶことができます。
教育費など確実に資産を増やしたい分は、国債や保険などリスクの低い商品で運用し、ある程度のリスクが取れる分は、株式投資や外貨預金などに投資をするなど、複数の商品に分散して投資することで損失を回避できる可能性が高まります。
まとめ
今回ご紹介した金融商品は投資商品の一例で、投資対象となる金融商品は多岐にわたりますが、商品によってリスクとリターンは異なります。
100万円の運用目的、運用期間、期待するリターン、リスク許容度などを考えた上で、投資商品の特性と照らし合わせれば、自分に合う資産運用方法が見つかるのではないでしょうか。
投資の結果は自己責任だからこそ下調べがとても大切です。
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