
「物価は上がっているのに、景気が良くなった実感がない……」と感じている方は多いのではないでしょうか。2026年3月現在、ガソリン価格は過去最高を更新し、食品や光熱費の値上がりも続いています。
一方で、賃金の伸びは物価上昇に追いついていません。こうした「不景気なのに物価だけが上がる」状態は、経済学では「スタグフレーション」と呼ばれます。
2022年に政府は「我が国はスタグフレーションの状況にはない」と否定していましたが、しかし現在状況は変わりつつあるでしょう。
本記事では、スタグフレーションの仕組みや生活への影響、今からできる備えなどをわかりやすく解説します。
目次
スタグフレーションとは:不景気なのに物価が上がること

スタグフレーションとは?
簡単にいうと、景気が冷え込んでいるのに、モノやサービスの価格(物価)が上がり続ける現象を指します。
語源は、停滞を意味する「スタグネーション(stagnation)」と物価上昇を意味する「インフレーション(inflation)」の組み合わせです。
通常、不景気なら物価は下がり、好景気なら上がるのが経済の原則です。スタグフレーションはこの原則に反した異常な状態といえます。
では、スタグフレーションが起こるとどうなるのでしょうか。
深刻なのは「政策のジレンマ」に陥る点です。景気を刺激すれば物価が跳ね上がり、物価を抑えようとすれば景気はもっと冷え込みます。
どちらの政策をとっても状況が悪化しやすく、政府や中央銀行の対応がきわめて難しくなるのが特徴です。
スタグフレーションは個人の生活や資産、雇用にも大きな影響をおよぼします。具体的な内容は「スタグフレーションの一般的な影響」で詳しく解説しています。
スタグフレーションが起きる3つの原因

スタグフレーションが起きるおもな原因は、大きく次の3つです。
それぞれ見ていきましょう。スタグフレーションの原因は以下のようなものが挙げられます。
原油、天然ガスなどの一次産品の物価高騰
原油や天然ガスなどの資源価格が急騰すると、製造・物流・電力を通じて幅広いモノやサービスのコストに波及するでしょう。供給コストが原因で物価が上がるこの現象は「コストプッシュインフレ」と呼ばれます。
コストプッシュインフレでは、物価が上がっても消費者の購買力は増えないため、消費が冷え込み景気は停滞します。物価上昇と景気停滞が同時に進む、スタグフレーションの典型的な構造です。
過去の代表例である1973年の第1次オイルショックも、第4次中東戦争による原油供給の制限が発端でした。当時、わずか3ヵ月で原油価格が約4倍に跳ね上がり、日本経済は戦後初のマイナス成長に陥っています。
各国の金融政策などによる急激な通貨安
他国との金利差による通貨安(円安)も、スタグフレーションを招く要因の一つです。
たとえば米国が利上げを進める一方で日本が低金利を維持すると、投資家はより利回りの良いドルでの運用を好むようになります。
その結果、円を売ってドルを買う動きが強まり、円安が加速してしまうでしょう。 こうした「通貨の力」の弱まりは、国内の物価を押し上げる引き金となります。
円安の定着による輸入品価格の上昇
円安の定着は、あらゆる輸入品の価格を押し上げ、スタグフレーションを招きやすいです。
円安が進むと、エネルギーや原材料の輸入コストが膨れ上がります。景気が停滞する中では、企業はコスト増の吸収が精一杯で、賃金への反映は困難です。
結果として「給料は増えないのに物価だけが上がる」というスタグフレーション特有の構造が、定着しやすくなります。
とくに日本はエネルギー自給率が15.3%※とG7各国でもっとも低いうえ、発電の8割以上※を化石燃料に依存している現状です。円安による物価高のダメージを、よりダイレクトに受けやすい立場にあるといえます。
※参照元:経済産業省資源エネルギー庁|第1節日本を取り巻く近年の環境変化
スタグフレーションの一般的な影響

スタグフレーションが起きると、以下のような影響が出ます。
どれも個人の生活に関わるため、影響の中身を押さえておきましょう。
各家庭の生活費が増える
スタグフレーション下では、食品・光熱費・ガソリンなど生活に欠かせない支出が増加します。
代表例である1974年のオイルショック時には、消費者物価指数が前年比23.2%上昇※しました。仮に月の生活費が30万円の家庭であれば、年間で約83万円の負担が増えた計算です。
一方でスタグフレーションの局面では景気が停滞しているため、給与は上がりにくく、増えた支出を収入でカバーできない状態が続きます。
金融資産の価値が下がる
スタグフレーションの局面では、保有している資産の「実質的な価値」が目減りしかねません。
株式は企業収益の悪化によって売られやすくなり、債券も物価を抑えるための利上げで価格が下落する傾向にあります。現金や預金も注意が必要です。
たとえば100万円の貯金があっても、物価が年2%上がり預金金利が0.3%であれば、1年間で約1.7万円分の購買力が失われます。額面は変わらないのに、買えるモノだけが減っていく状態です。
参照元:総務省|2020年基準消費者物価指数全国 2026年(令和8年)1月分、日本経済新聞|3メガ銀、普通預金金利0.3%に日銀利上げで三菱UFJは33年ぶり高水準
雇用環境が悪化しやすくなる
スタグフレーションが深刻化すると、企業はコスト増と消費の冷え込みに挟まれ、採用の抑制や待遇の見直しに動きやすくなります。企業が倒産すれば、雇用自体が失われかねません。
1974年のオイルショック時にも、不況下の物価高によって、多くの日本企業は厳しい人員削減を余儀なくされています。
とくに製造業や運輸業はエネルギーコストの影響を受けやすく、小売・飲食業は消費者の節約志向の直撃を受けるため、雇用の調整が早まりやすい業界です。
スタグフレーションで資産を守るため個人が対策すべきこと

スタグフレーションが起こると、不景気の中で物価高になります。
それゆえ、企業も余裕がなくなり、新たなものが生まれにくくなるなどの弊害が起こります。消費者の生活も経済的に圧迫されるので、世間的にも暗い雰囲気になることが多いです。
また、スタグフレーションは個人の力で状況を改善するのは難しく、時期によっては何年間も続く可能性があります。
終わりが見えない分、精神的なストレスを抱える人も増える状況です。自分の資産防衛のためにも、スタグフレーションに備えとしてできることについて説明します。
外貨を保有する
スタグフレーション下では、給与は上昇しないし、給与額が変わらなくても通貨の価値自体が下がっています。預貯金などの資産価値も下がるので、金融資産が目減りする一方です。
しかし、自国通貨が安い=他国通貨が高いという状況なので、外貨を保有することでスタグフレーションに備えることができます。
外貨を保有する方法として、日本円を米ドルなどに変えておく、株式や投資信託をドルなどの外貨で購入・保有するといった方法があります。
また、新NISAを活用した米国株・全世界株インデックスファンドの積立は、円安ヘッジと資産形成を同時に行える現実的な手段の1つです。円だけに資産を集中させるリスクを、少額から分散できます。
人によっては海外から仕事を受けて、給与をドルなどの外貨で受け取るといった方法もあります。
いずれにせよ、円に頼った生活をするのではなく、円安時を見据えて外貨資産などを積み上げておくのが良いでしょう。
ただし、為替変動により円換算での損失が生じる可能性があることを認識しておきましょう
不動産や金に投資する
スタグフレーションになると、円による資産が目減りする上、企業の業績などが下がるため株式などのペーパーアセットは大きな影響を受けることになります。
それゆえ、ペーパーアセット以外の現物資産などを保有することで、リスクヘッジになります。
具体的には、インフレ時に強い不動産や金(ゴールド)などが向いています。給与なども減る可能性があるので、不動産からの家賃収入などは生活防衛にもなるといえます。
金(ゴールド)はインフレ時に強いといいますが、スタグフレーション時にも強いです。金(ゴールド)はいざという時に換金性があり、国内外問わずに売買できるのも強みです。
2026年現在、金価格は歴史的な高値圏で推移しており、世界の投資家がスタグフレーションリスクを強く警戒していることの表れと言えます。
金への投資は金ETFや純金積立など、少額から始められる方法もあります。ただし、不動産は流動性が低く、空室リスク・金利変動リスクなどがあり、金は配当・利息を生まないため、値下がりすると損失になりますのでご注意ください
無駄遣いを減らす
スタグフレーション下では、生活費がかかるため、今までと同じ生活水準を維持するのが難しくなります。それゆえ、以前と同じ生活をしていると、支出ばかりが増えて、貯蓄や投資といった将来に向けてのお金を捻出できません。
急激な節約は難しいでしょうが、家賃や通信費などの固定費を見直すなどして物価上昇の波に備えていくと良いでしょう。
余裕があれば、食費などの変動費も定期的に見直してみましょう。定期的に見直すことで、新しい節約ポイントが見つかり、生活コストを下げられます。
生活コストを下げることへの抵抗を減らしておくのも環境変化の大きい時代には必要なことといえるでしょう。
不景気に耐えられる収入源を確保する
スタグフレーションは物価高に加えて、世の中が不景気になっていく状況です。したがって、人によっては仕事を失うといった可能性もあります。
不景気になると企業は従業員を雇う余裕がなくなるため、転職活動などもしづらくなります。それゆえ、常に必要とされる人材として自己研鑽をし、他社でも通用する能力を高めておくと良いでしょう。
もしくは本業以外にも収入を得られる方法を持っておくのも良いでしょう。
スタグフレーション下では、企業の業績悪化による給与減額や雇用不安が現実のリスクとなります。
収入を1か所に依存しない体制を早めに作ることが重要です。
副業・フリーランス収入に加え、配当収入や家賃収入など「労働に依存しない収入源」を持つことが、長期的なスタグフレーション対策として有効です。
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日本がスタグフレーションに陥った事例

過去にあったスタグフレーションには以下のようなものがあります。
1970年代のオイルショック(過去の典型事例)
中東戦争やイラン革命を契機に、OPEC(世界石油輸出国機構)が原油価格を引き上げたことによって急激なインフレが世界各国で起こりました。
日本でも物価高と景気悪化が同時に起き、第一次オイルショック時にはトイレットペーパーの買い占め騒動など社会的混乱も起こりました。
2025〜2026年の日本:「現代のスタグフレーション」懸念国
現在の日本はまさにスタグフレーションが懸念される状況にあります。
トランプ関税による輸出企業へのダメージと、輸入コスト上昇による物価高が同時進行しています。日銀は利上げを進めていますが、景気の足を引っ張るほどの急激な引き締めは難しい状況です。
食料品や光熱費の値上げが家計を直撃する一方、トランプ関税の影響で日本の主力産業である自動車輸出は減少しており、「景気は悪化、物価は上昇」という教科書通りのスタグフレーション的構図が現実味を帯びています。
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インフレやデフレとの違い

スタグフレーションに似た言葉としてインフレーション(インフレ)やデフレーション(デフレ)といった言葉があります。それぞれの意味は以下の通りです。
インフレーション
企業の売上や利益が増えることで従業員の賃金も上昇している状態。好景気の中で、消費が活発になり、物価も継続的に上昇し続ける状態を指します。
スタグフレーションとの違いは、「好景気の中での物価上昇」か、「不景気の中での物価上昇」になります。
したがって、スタグフレーションのことを悪いインフレと表現することもあります。
デフレーション
企業の売上や利益が減少することで従業員の賃金も下落している状態。不景気なので消費が落ち込み、物価も継続的に下落していく状態を指します。
スタグフレーションの違いは、「不景気の中で物価上昇する」か、「不景気の中で物価下落する」になります。
スタグフレーションに関してよくある質問

最後に、スタグフレーションに関するよくある質問を紹介します。
1.スタグフレーションに強い資産はありますか?
2.スタグフレーションの脱却方法はありますか?
3.日本はスタグフレーションですか?
1.スタグフレーションに強い資産はありますか?
スタグフレーションの局面では、以下の資産が「比較的強い」とされています。
| 資産の種類 | 特徴 |
| 金(ゴールド) | 通貨の価値が下がる局面でも価格が上がりやすい傾向がある |
| 外貨建て資産 | 円安が進む局面でも、外貨で持っている分は価値が下がりにくい |
| 不動産 | 物価の上昇に連動して資産価値や家賃収入が上がりやすい |
ただし、どの資産にも固有のリスクは存在します。特定の資産に偏らせず、複数の種類に分散して備えるのが基本です。
2.スタグフレーションの脱却方法はありますか?
過去の事例では、金融引き締めとエネルギー依存度を下げる「供給力の向上」が脱却の鍵になりました。ただし、個人レベルでは政策をコントロールできません。
固定費の見直しや不要な支出の削減で家計の耐久力を高めつつ、資産を分散させておくのが現実的な備えでしょう。
具体的な対策は「スタグフレーションへ個人が対策すべきこと」も併せてご覧ください。
参考元:経済社会総合研究所-内閣府|二度の石油危機と日本経済の動向
3.日本はスタグフレーションですか?
厳密な断定は困難ですが、スタグフレーションに近い「兆候」は各所で見受けられます。
帝国データバンクの調査によると、2025年の物価高倒産※1は5年連続で過去最多※2を記録し、完全失業率も上昇※3に転じています。
大きく給与が上がらないなか、ガソリン価格は過去最高を更新している現状(2026年3月18日時点)を鑑みれば、物価高が景気を下押しする懸念は拭えません。
日銀は「景気は緩やかに回復している」と評価していますが※4、上記の点を踏まえると、スタグフレーションへの接近は否定できないでしょう。
※1)原材料高や人件費高騰に耐えきれず倒産した数、>※2)参照元:帝国データバンク|「物価高」倒産動向調査(2025年)、※3)参照元:総務省|労働力調査(基本集計)2026年(令和8年)1月分結果、4)参考元:日本銀行|当面の金融政策運営について
相場が大きく下落しているときこそ、売却時の判断が重要です。
株式投資では、相場が大きく下落すると不安が強くなり、焦って売却してしまったり、反対に根拠がないまま買い増ししてしまったりすることがあります。
そのため、暴落時に資産形成を考える場合は、目先の値動きだけで判断するのではなく、保有を続けるか見直すか、どの銘柄を残すかまで含めて考えることが大切です。
一方で、
「このまま持ち続けていいのかわからない」
「下がった今、買うべきか様子を見るべきか判断できない」
と感じる方も少なくありません。
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まとめ:支出の見直しと資産の分散でスタグフレーションに備えよう

スタグフレーションは、不景気のなかで物価だけが上がり続ける過酷な経済現象です。原油・天然ガスなどの資源高や通貨安、輸入品価格の上昇が重なると、スタグフレーションを招きやすくなります。
個人への影響は「生活費の増加」「金融資産の目減り」「雇用環境の悪化」と多方面におよぶでしょう。金融政策や産業構造の転換は個人ではコントロールできません。
しかし、固定費の見直しによる家計の引き締めや、円だけに偏らない資産分散など自分自身で完結できる防衛策はあります。
今できる備えから一つずつはじめていきましょう。
【ご注意事項】
※本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
※株式投資には元本割れのリスクがあります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
※配当金は企業の業績によって減額・廃止になる場合があります。
※記載のデータ等は2026年3月23日時点のものです。最新情報は各企業のIR資料等でご確認ください。



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