
株式投資する際に、根拠を持って投資するのが難しいと感じる場合があるかもしません。
証券会社等のサイトには多くの銘柄が掲載されており、何を基準にどの株が割安で買いなのか、判断に困ることがあります。サイトからおすすめされたとしても、自分で判断できる材料がほしいところです。
また、投資先を検討するうちに、複数の候補がありどちらを選択するか、確かな根拠がほしい場合もあるでしょう。
投資家が株式に投資する際に、よく使われる指標があります。企業の業績等に基づき根拠がはっきりした数字なので、信頼性が高いです。
本記事では、株式投資によく使われる株式指標について解説します。指標の意味を理解するのに役に立つ決算書の読み方にも簡単に触れるので、ぜひ参考にしてください。
目次
指標の理解に役立つ財務諸表の基礎
株式に関する指標の意味を理解するには、企業の決算状態を表す財務諸表の大まかな構造だけでも知っておく必要があります。財務諸表というと難しそうですが、すべてを詳細に理解する必要はありません。一般的に財務三表と呼ばれているのは、次の3種類です。
1.貸借対照表
2.損益計算書
3.キャッシュ・フロー計算書
このうち、株式指標を理解するためにまず押さえるべきなのは、貸借対照表と損益計算書の2つなので、それぞれをごく簡単に解説します。
1.貸借対照表
資産の部 1.流動資産(現金・預金等) 2.固定資産(建物・設備等) | 負債の部 1.流動負債(買掛金等) 2.固定負債(長期借入金等) |
純資産の部 1.資本金 2.資本剰余金 3.利益剰余金 |
貸借対照表は、バランスシート(B/S)とも呼ばれ、決算日等一定の時点における企業の財務状況が分かる書類です。企業の持つ財産(資産)を負債(借金)と資本(自分のお金)に分けて表しています。「資産」を左側に、「負債」と「資本」を右側に書き、左右の合計額は必ず同じになります。
資産の部は、現金・預金等の流動資産と、建物や土地・設備等の固定資産からなります。●流動資産:1年以内に現金化することができる財産で、預金や株式、売掛金などです。
●固定資産:長期に保有することが前提の財産で、土地・建物や機械などです。
負債の部は個人の借金にあたる部分で、内容は買掛金等の流動負債や長期借入金等の固定負債等です。「流動負債」とは短い期間で借りているお金(買掛金など)で、「固定負債」は長期で借りているお金(社債など)です。この項目は、返済が必要なお金です。
純資産の部は、株主から出資を受けた資本金や企業の儲けの蓄積である利益剰余金等からなります。資本は会社が自分で持っているお金、自分で稼いだお金で、資本金のほかに利益準備金や利益剰余金があります。株式を発行して得たお金は資本であり、返済の必要はありません。
一般には、返す必要のない資本の割合の大きい会社の方が財務は健全であると評価されます。また、固定資産が多いと将来的に機械の買替えや修理の費用が大きくかかるかもしれないという考えや、流動負債が多いにも関わらず流動資産が少ないなどと考え、返済が大丈夫なのかなどと推測することができます。このように財務上の問題点を見つけるために貸借対照表は使われます。

貸借対照表は、これら3つの要素から構成されることを押さえておきましょう。
2.損益計算書
(1)売上高 |
(2)売上原価 |
(3)売上総利益 |
(4)販売費及び一般管理費 |
(5)営業利益 |
(6)営業外利益 |
(7)営業外損失 |
(8)経常利益 |
(9)特別利益 |
(10)特別損失 |
(11)税引前当期純利益 |
(12)法人税及び住民税 |
(13)当期純利益 |
損益計算書は、企業が会計期間にどのくらいの利益を上げたかを示す書類です。P/L(Plofit and Loss Statement)とも呼ばれます。損益計算書の利益には、次のようにいくつか種類があります。
(1)売上高
本業での収入
(2)売上原価
商品の仕入れや製造するのにかかったお金
(3)売上総利益
売上高から商品の仕入れ等の売上原価を引いたもの((1)売上高-(2)売上原価)
(4)販売費及び一般管理費
販売促進など、本業に関する費用で売上原価以外にかかったお金
(5)営業利益
企業本来の事業活動から得られた利益
(6)営業外利益
本業以外の収益で、会社のお金を預金・投資をして得られるお金など
(7)営業外損失
本業の営業活動以外の活動から経常的にかかる費用(支払利息など)
(8)経常利益
為替差益等本業以外の事業活動で得られた利益(営業利益 +(6)営業外収益 -(7)営業外費用
(9)特別利益
一時的、偶発的に、本業以外で生じた利益(不動産の売却益など)
(10)特別損失
一時的、偶発的に発生した損失(地震や火災で被った被害など)
(11)税引前当期純利益
経常利益から、災害等特別に発生した事情を差し引きしたもの
(12)法人税及び住民税
法人税や消費税等税金
(13)当期純利益
法人税や消費税等税金を差し引いた最終的な利益
これらの利益は、上に行くほど本来の企業活動から得られる性格が強くなるのが特徴です。
特に注目したいのは(1)売上高とラインのついた利益です。売上高は、その会社の純粋な本業の規模を表します。「営業利益」では本業が上手くいっているかどうか、「経常利益」では本業以外も含めて上手くいっているかどうかが分かります。指数を理解する際には、特に最終的に算出される当期純利益に注目しましょう。

損益計算書は、過去の分と比べることにも大きな意味があります。今期、黒字(利益)であっても、前の期の利益額よりも少なければ減益といって株価としては通常マイナス材料となり、前の期よりも大きければ増益として好材料になります。
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株式投資に役立つ指標
株式投資に関する指標には、日本の株価全体を見るものから個別株の買い時や割安かどうかを判断する際に役立つ指標まで、さまざまな種類があります。今回紹介する基本的な指標は次のとおりです。
日本の株価全体を表す指標 | 1.日経平均株価 2.TOPIX |
株価や配当に関する指標 | 3.配当利回り 4.配当性向 5.PER 6.PBR |
収益性に関する指標 | 7.ROE 8.ROA |
この他にも、海外の株式に関する指標も多くあります。代表的なものは、アメリカのS&Pやナスダック総合指数・NYダウ、ドイツのDAX30指数、イギリスのFTSE100指数等です。
前述した財務諸表上の用語にも触れながら、それぞれの指標を解説します。
1.日経平均株価
日経平均株価とは、東京証券取引所のプライム市場(株式市場が再編される前の東証一部に相当)に上場している銘柄のうち、代表的な225銘柄の平均株価を指数化したものです。平均が求められるため、株価の高い銘柄の影響を強く受けます。
平均株価が高いほど、日本全体としては株価が好調と判断されます。なお、すべての銘柄の値動きが、日経平均株価と連動していない点には留意しましょう。
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2.TOPIX
TOPIX(トピックス)は、東証株価指数ともいわれ、東証のプライム市場に上場している原則すべての銘柄の時価総額をもとに指数化したものです。1968年1月4日の時価総額を100として、対象の銘柄の時価総額を基準に算出します。時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすいのが特徴です。
TOPIXは日経平均株価と同様に、数値が高いほど株価が上昇傾向にあると判断されます。
3.配当利回り
配当利回りとは、購入した株式の(1株当たりの)株価に対する1株当たりの配当金の割合を示す指標です。
受け取る配当金が高いと配当利回りが上昇するので、効率よく配当金が受け取れる銘柄と判断されます。
例えば、株価が同じ1,000円で配当金が異なる企業(Aは10円、Bは20円)を比較すると、B者の方が配当に力を入れていることが分かります。
文字通り利回りを計算するので、債券や不動産投資等他の金融商品の利回りと比較できるのがメリットです。
4. 配当性向(はいとうせいこう)
配当性向とは、1株当たりの当期純利益に対して、1株当たりの配当金をどれだけ支払っているかを表す指標です。
当期純利益とは、前述のとおり、税金を差し引いた企業の最終的な利益のことです。当期純利益が高いと企業の業績が好調と判断されます。配当性向は、企業が利益を得た分からどのくらい配当に充てているかを表す指標です。1株あたりの当期純利益をEPSとも呼びます。
1株当たりの当期純利益が100万円で、1株当たりの配当金が10円のA社と20円のB社を比べると、B社の方が利益のうちより多くを配当に充てていることが分かります。
ただし、企業の方針によっては配当に回すより設備投資に回す場合があるため、一概に配当性向が低い企業の業績が悪いとは言えません。
5. 株価収益率(PER)
株価収益率(PER)とは、(1株当たりの)株価に対して1株あたりの当期純利益が何倍かを表す指標です。
一般的に、PERが低いほど株価は割安と判断されます。ただし、企業の成長期等株価の上昇が大きい時期は、PERが高くなる場合があります。あくまでも一定時期の数字と考えましょう。
例えば、1株当たりの当期純利益が100円で、株価(1株当たり)が500円のA社と1,000円のB社を比べると、5倍のA社の方が株価は割安です。
また、PERは、1株で投資した資金を何年で回収できるかを表しています。理論上、当期純利益はすべて株主のものです。PERが5倍であれば、1株にかけ費用を5年で回収できることになります。
6. 株価純資産倍率(PBR)
株価純資産倍率(PBR)とは、1株当たりの純資産が株価の何倍になっているかを表す指標です。純資産は企業の資産から負債を差し引いたもので、企業の資産価値と考えて差し支えありません。もし、現時点で会社が解散した場合に、理論上、株主に最終分配される金額であるため、「解散資産」とも呼ばれます。なお、1株当たりの純資産をBPSとも呼びます。
PBRが1倍より高い場合、株価が純資産よりも高く割高と判断されます。一方、PBRが1倍より低い場合は割安と判断されます。例えば、1株当たりの純資産が1,000円で、株価(1株当たり)が750円のA社と1,200円のB社を比べると、0.75倍のA社の方が企業の資産価値に対して株価が低く、割安です。
PBRは企業の純資産と株価を比較しているので、低い状態が続いている場合は、なにかしらかの理由で企業の資産価値を適正に評価されていない可能性もあります。その場合は、PBRだけではなく、他の指標ともあわせて経営の安全性を判断するとよいでしょう。
関連記事→買うべき株を見極める!PBRを使った5つの手法とは?
7.自己資本利益(ROE)
自己資本利益率(ROE)とは、企業の純資産(自己資本)に対する当期純利益の割合を表す指標です。純資産とは、企業が貯めてきた利益や株主の出資金等の合計です。
例えば、純資産が100億円とします。当期純利益が1億円のA社と2億円のB社を比べると、B社はROEが高くより利益を出していることになります。このように、ROEが高いほど、効率よく稼げる収益性の高い企業と判断されるのが一般的です。
8. 総資本利益率(ROA)
純資産利益率(ROA)とは、純資産と負債を合わせたものに対して、当期純利益をどれだけ上げているのかを表す指標です。
ROEと比較すると、分母に金融機関からの借入金等の負債を足しているのが特徴です。一般的に、ROAは割合が高いほど収益性が高いと判断されています。
指標とあわせて参考にするもの
株式に投資する場合は、単独の指標ではなく複数の指標から判断するだけではなく、指標に表れない情報も参考にする必要があります。下記の情報は株価が変動する大きな要因となるので、注意しましょう。
1.経済ニュース
経済や政治のニュースによって株価が変動する場合があります。国が力を入れている分野や、社会的に注目されている事業について把握しておくようにしましょう。直接購入する株式に関係しない情報でも、間接的な判断材料となったり、将来役に立ったりすることがあります。
2.企業のプレスリリースや決算発表
購入したい株式が絞り込めたら、対象企業のサイトを確認しましょう。サイトには企業が公式に発表したプレスリリースや決算が掲載されています。直近の決算資料を確認するのはもちろんのこと、新着のプレスリリース等に株価の上下に関係しそうな事項が掲載されていないか確認が必要です。
3. 証券会社等のサイト情報
経済ニュースや企業のサイトから情報を読み取るのが難しい場合は、証券会社等のサイトで対象企業の銘柄について分析した記事を読むとよいです。必要な情報や市場の評価がコンパクトに記載されているので、必ず確認しましょう。
まとめ
割安な銘柄を判断して投資する際には、株価指標が参考になります。
決算資料等に基づく数字で示されるので、客観的な根拠を持って判断できるのがメリットです。
今後投資する際には、本記事で紹介した指標に注目してみてください。ただし、指標は万能ではありません。ひとつの指標だけではなく複数の指標を組み合わせ、指標以外の決算情報等も参考にしながら判断するようにしましょう。
企業が成長期にあるか、不祥事の可能性がないか等総合的に判断することも大切です。
株価指標の見方が分かれば、対象の銘柄が現在割安か判断できるだけではなく、将来の見通しも可能となります。また、同業種の別企業との比較もできる等判断材料が多くなります。
指標を使いこなして、割安株を判断できるようにしましょう。
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