
2024年にNISA制度が改良されたことで、これまで貯金中心だった方でも、投資に挑戦しようと考える機会が増えてきています。
しかし、投資初心者にとっては「投資と貯金の割合」を決めるのが難しく、なかなかNISAを始められない方もいるでしょう。
そこで本記事では、NISAと貯金の適切な割合について解説します。
状況によって適切な割合は違うので、自分で割合を決めるときのチェックポイントも紹介しています。
この記事を読めば、毎月どのくらいの割合でNISAと貯金をすべきか判断できるので、老後に向けた資産形成を迷いなく始められるでしょう。
NISAと貯金の適切な割合|3パターン
NISAは、株や投資信託などの投資で生じた利益を非課税で受け取れる制度です。
貯金より大きなリターンが見込めますが、投資した商品の価格が下がれば、運用前より資産が減るリスクがあります。
そのため、家族構成や年収、リスク許容度などを踏まえてNISAと貯金の割合を決める必要があり、すべての日本人に共通した割合を提示できません。
ここでは大まかな状況に分けて、適切な割合を3パターン紹介します。
- リスク資産の割合は「100−年齢」%
- 貯金が少ないときは5〜10%
- 理想は20〜30%
自分がどのパターンに該当するかがわかれば、自信を持ってNISAを始められるでしょう。
リスク資産の割合は「100−年齢」%
NISAと貯金のバランスを考えるうえで、リスク資産を「100−年齢」の割合にするという指標があります。
例を挙げると、月々の余った資金のうち、20歳で投資に回せる金額の割合は80%、70歳で投資に回せる割合は30%だという考え方です。
若い世代は、株価が暴落しても回復まで待てる期間が長いので、高齢の世代よりリスク資産の割合を大きくできます。
20〜30代で生活資金に余裕があるうちは、できるだけNISAで資産を運用する方が効率的に資産を増やせるかもしれません。
貯金が少ないときは5〜10%
手元にあるお金が少ないと感じるときは、まずは貯金を優先し、余ったお金の5〜10%程度を投資に回しましょう。
すぐに使える現金がないと、急な出費に対応できないからです。仮に株価が大暴落したタイミングで出費が必要になれば、すべての金額を支払えず、生活に支障が出る可能性があります。
貯蓄が十分でないときは貯金を優先し、慣れる程度に少額を投資に回すのがおすすめです。
理想は20〜30%
NISAで投資に回す資金の割合は、余っている資金の20〜30%程度が理想です。
詳しくはこちらの章で解説しますが、日本人の20代〜70代が投資に回す資金の割合は、持っている資産総額の30%程度であることがわかっています。
たとえば、余剰資金が月5万円の場合、1万〜1.5万円程度を投資に回す計算です。
急な支出に備えて貯金を優先すべきですが、20〜30%程度の資金であれば、投資初心者でもNISAと貯金を両立しやすいでしょう。
NISAと貯金の平均的な割合
金融広報中央委員会が令和5年に行った「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに、日本人が行っている投資と貯金の平均的な割合を解説します。
- 年代ごと
- 収入ごと
- 世帯ごと
それぞれ見ていきましょう。
年代ごと
年代ごとの金融資産の総額とそれぞれの割合は、以下のとおりです。
【預貯金や投資商品などの金融資産を持っている方の資産分類データ】
年代 | 資産総額 | 預貯金 | 投資 | 保険 | その他 |
20代 | 266万円 | 49.2% | 29.3% | 18% | 約3% |
30代 | 874万円 | 47.9% | 35.6% | 11.8% | 約5% |
40代 | 1,181万円 | 42% | 31.2% | 20.8% | 約6% |
50代 | 1,773万円 | 39.8% | 32.8% | 20.3% | 約7% |
60代 | 2,499万円 | 43.6% | 35% | 18% | 約3% |
70代 | 2,162万円 | 44.1% | 36.4% | 17% | 約3% |
参考:金融広報中央委員会|知るぽると|家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]
全体的に見ると、資産総額に対する貯金の割合は40〜50%程度、投資の割合は30〜35%程度です。
また、投資の占める割合が一番高い世代は70代で、36.4%を記録しています。
働き始めの20代と比べて、60〜70代の世代はこれまでの貯蓄があるため、投資に回せる資産の割合が高いと考えられます。
収入ごと
収入ごとに、金融資産の総額とそれぞれの割合を以下の表にまとめました。
【預貯金や投資商品などの金融資産を持っている方の資産分類データ】
収入 | 資産総額 | 預貯金 | 投資 | 保険 | その他 |
300万円未満 | 1,063万円 | 50% | 31.1% | 17.4% | 約2% |
300万〜499万円 | 1,428万円 | 42.5% | 36.8% | 17.8% | 約3% |
500万〜749万円 | 1,617万円 | 43.2% | 34.9% | 18% | 約4% |
750万〜999万円 | 2,066万円 | 42% | 31.7% | 20.9% | 約5% |
1,000万〜1,199万円 | 2,677万円 | 40% | 34% | 18.7% | 約7% |
1,200万円以上 | 4,828万円 | 38.3% | 38.2% | 17.3% | 約6% |
参考:金融広報中央委員会|知るぽると|家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]
1,200万円以上の高い収入がある層は、金銭的なリスクを取りやすいので、投資に回す割合が38.2%と最高値を記録。
一方で、収入が低い層は安定性を重視するため、預貯金の割合は最高値の50%を記録しています
収入が低くて貯金額が少ない方は、投資より貯金の割合を高くすれば、低リスクで資産運用を続けられるかもしれません。
世帯ごと
世帯ごとに、金融資産の総額とそれぞれの割合を以下の表にまとめました。
【預貯金や投資商品などの金融資産を持っている方の資産分類データ】
世帯 | 資産総額 | 預貯金 | 投資 | 保険 | その他 |
一人世帯 | 1,492万円 | 43.4% | 39.5% | 13.8% | 約3% |
夫婦世帯 | 2,021万円 | 43.2% | 36.4% | 17.5% | 約3% |
夫婦と子供世帯 | 1,540万円 | 43% | 28.9% | 21.7% | 約6% |
夫婦と世帯主の両親世帯 | 2,134万円 | 49.2% | 33.8% | 15.5% | 約2% |
参考:金融広報中央委員会|知るぽると|家計の金融行動に関する世論調査[総世帯]
なかでも、一人世帯が投資に回す割合は39.5%と、ほかの世帯より高い割合を占めています。一方で、子供がいる世帯が投資に回す割合は30%を切っています。
世帯ごとに住宅購入や子供の大学進学などのライフプランが違うので、NISAと貯金の割合を決めるときは、自分が当てはまる世帯を参考にしてみてください。
NISAを始める前に必要な貯金額
ある程度の貯金があれば迷いなくNISAを始められますが、必要な貯金額は一人一人違います。
ひとつの目安として、最低でも半年〜1年分の生活費を目標に貯金すると良いでしょう。
失業や病気などで急に働けなくなっても、生活スタイルを取り戻すまでの一定期間は、これまでの生活を維持できるからです。
たとえば、毎月の生活費が20万円の場合、目安となる貯金額は120万〜240万円です。
しかし、直近で以下のようなケースが想定されるときは、もっと貯金が必要になるかもしれません。
- 子供の大学の費用で150万円が必要
- 自動車を買うために300万円が必要
- 住宅ローンの頭金に500万円が必要
急な出費や理想のライフプランを踏まえたうえで検討すれば、自分にとって必要な貯金額がわかり、NISAに挑戦しやすくなるでしょう。
NISAと貯金の割合を決める5つのポイント
NISAと貯金の割合を決めるときは、以下の5つのポイントを意識しましょう。
- 資金が必要なタイミングと目標金額を決める
- 余剰資金がいくらあるかを知っておく
- 万が一に備えるための資金を決める
- 自分のリスク許容度を把握する
- NISAの非課税投資枠を確認する
それぞれ見ていきましょう。
資金が必要なタイミングと目標金額を決める
NISAと貯金の割合を決めるには、将来どのタイミングで、どのくらいの資金が必要になるのかを決める必要があります。
参考までに、大きな支出が発生するタイミングと金額の例をいくつか紹介します。
- 結婚費用:300〜500万円
- 4年制大学の費用:200〜500万円
- 住宅ローンの頭金:300〜500万円
- 老後の生活資金:2,000万〜3,000万円
上記は目安の金額なので、実際にはもっと高額な費用がかかるかもしれません。
そのため、自分で正確な目標金額を決めるのは、なかなか難しいです。
それでも自分の将来を考え、資金が必要なタイミングと目標金額をある程度知っておけば、お金の不安を減らした上でNISAに挑戦できます。
余剰資金がいくらあるかを知っておく
自分の生活費を見直し、現状でどれくらいの余剰資金があるかを知っておきましょう。
投資に回せる金額が明確になるからです。
会社員の場合、給料から生活費や趣味に使う資金を差し引き、残った金額が余剰資金です。
生活費を切り詰めて投資をすると、株価が値下がりしたときに、生活に必要な資金が足りなくなる可能性があります。
自分の余剰資金内で投資を続ければ、老後に向けて長期的に資産を運用し続けられるでしょう。
万が一に備えるための資金を決める
NISAを始める前に、万が一に備えるための資金を決めて貯金しておきましょう。
突然の失業や病気などで収入が途絶えても、生活を維持するためです。
急な出費が必要になるケースもあるので、最低でも半年〜1年分の生活費を貯金しておきましょう。
自分のリスク許容度を把握する
NISAと貯金の割合を決めるときは、自分のリスク許容度を把握する必要があります。
自分の許容範囲を超える損失が出ると、冷静な判断ができない可能性があるからです。
リスク許容度は、自分の投資経験や貯金額などによって決まります。
NISAを始める前に、自分がどの程度まで損失を許容できるか知っておけば、株価が下がっても冷静に投資を続けられるでしょう。
全国銀行協会が提供している、こちらの「リスク許容度診断テスト」を利用すれば、自分にとって適切な投資額の参考になるかもしれません。
NISAの非課税投資枠を確認する
NISAには年間の投資上限額が設定されているので、上限額を目標に投資を始めるのも良いでしょう。
2024年に始まった新NISAで、1年間に投資できる上限額は以下のとおりです。
- 成長投資枠:240万円
- つみたて投資枠:120万円
両者をすべて活用すれば、年間で最大360万円の投資ができます。
すべての枠を使い切るのはなかなか難しいですが、年間投資枠を一つの目標にすると迷わず投資を始められるでしょう。
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新NISA活用ガイド!初心者にわかりやすく新NISAの仕組みとメリットや活用事例を解説
NISAで投資を始める流れ
NISAで投資を始める流れは、以下のとおりです。
- 支出を見直す
- 6ヶ月〜1年分の生活費を貯める
- NISAで少額から投資信託を買う
NISAを始める流れを知っておけば、投資初心者でもスムーズに投資に挑戦できるでしょう。
1.支出を見直す
余剰資金がないとNISAにお金を回せないので、まずは現在の支出を見直しましょう。具体的には、月々の支出を以下の2つに分類すると、見直しやすいです。
- 固定費:家賃、光熱費、通信費、保険など
- 動費:食費、交際費、趣味の費用など
支出を書き出してみると、使っていない有料サービスの解約や食費の見直しなど、無駄な出費を減らせるかもしれません。
資金に余裕ができれば、生活への支障なく投資を始められます。
2.6ヶ月〜1年分の生活費を貯める
余剰資金が作れるようになったら、急に働けなくなったときや支出が必要なときに備え、6ヶ月から1年分の生活費を貯めましょう。
投資で大きな損失が出たときでも、貯金があれば精神的なダメージを最小限にできるからです。
一定期間の生活を維持できる生活費を貯めておけば、ストレスなく長期的に投資を続けられます。
3.NISAで少額から投資信託を買う
貯金ができるようになれば、NISAを活用して少額で投資信託を買ってみましょう。
いきなり多額で投資を始めると、株価の値下がりしたときに大きな損失が生じるからです。
また、1社の株を買う「個別株投資」より、分散効果が期待できる「投資信託」で投資を始めた方が、損失リスクを抑えられます。
楽天証券やSBI証券などのネット証券では、最低100円から投資信託を買えるので、投資初心者でもNISAに挑戦しやすいでしょう。
楽天証券とSBI証券でNISAを始める方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
楽天証券のつみたてNISAの始め方!お得に活用する5つのコツを紹介
SBI証券のつみたてNISAの始めかた!スマホアプリやお得な設定方法を解説
よくある質問
NISAと貯金の割合に関するよくある質問に回答します。
NISAは貯金の代わりになる?
運用方法によりますが、NISAは貯金の代わりになる可能性があります。
たとえば「債券ファンド」や「ディフェンシブ銘柄」など、値動きの低い商品を中心に運用すれば、値下がりのリスクを抑えられるかもしれません。
ただし、貯金より損失が出るリスクは大きいので、急な支出に備えて貯金と投資を併用するのが無難でしょう。
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貯金ゼロでもNISAを始めていい?
一般的には、貯金ゼロでNISAを始めるのはおすすめできません。急な支出に備え、ある程度は貯金できてから挑戦するのが良いでしょう。
100円から投資信託を買えるネット証券も多いので、貯金がなくてもNISAに挑戦したい時は、少額から始めてみてください。
NISAを始めてみて株の売買は思っていたよりも難しい、とくに売る時に迷ってしまって売れないことが多いとお悩みの方が多くいらっしゃいます。利益を確保するのは大事ですが、時には損切も必要になり、これができないと株で資産形成は難しくなります。しかし自分ではできないという方には、投資顧問の利用をおすすめします。当サイトを運営するライジングブル投資顧問は、株の「売買サポート」を行っております。ライジングブルの売買サポートサービスは、3ヶ月9,000円で買い推奨だけではなく、売却、銘柄入替するところまで、リスク管理をしながらサポートします。
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まとめ
これまでのNISAと比べ、新NISAでは投資額も運用期間も広がったことで、初めて投資に挑戦する方が増えています。
NISAと貯金の適切な割合は一人一人違いますが、投資に回す金額が余剰資金の30%程度であれば、NISAと貯金の両立がしやすいでしょう。
ただし、急な支出に対応できる金額を貯金しておかなければ、失業や病気で働けなくなったときに生活が困難になる可能性があります。
NISAを始める前に半年〜1年分の生活費を貯金し、自分のリスク許容度を考慮しながら割合を決めましょう。
投資にはリスクがつきものです。
少しずつお金の知識を増やしながらNISAに挑戦すれば、老後でもゆとりのある生活が送れるようになるでしょう。
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