
社会現象を巻き起こした『鬼滅の刃』。
その経済効果は2020年だけで2000億円以上にのぼるとも言われ、多くの企業の業績を押し上げました。
もし、このブームに乗り、関連企業の株式に投資していたら、一体どれほどの利益を手にすることができたのでしょうか。
本記事では、『鬼滅の刃』の人気と株式投資の関係を深掘りし、「もしも」の投資シミュレーションとともに、ヒットの恩恵を受けた「鬼滅銘柄」を解説します。また、第二の「鬼滅」となる作品候補も独断でリストアップしましたので今後の株式投資のご参考人になれば幸いです。
目次
『鬼滅の刃』メガヒットの軌跡と経済効果
『鬼滅の刃』は2016年2月15日発売の「週刊少年ジャンプ」11号から連載がスタートしました。その後、一部の漫画ファンの間で知られる作品となり、XなどSNSでも徐々に人気となっていました。
爆発的に人気が高まったのは、2019年4月から放送されたテレビアニメがきっかけです。アニメの製作を担ったufotableによる圧倒的な映像クオリティと心揺さぶるストーリーが幅広い層の心を掴み、人気に火をつけました。
その勢いを決定づけたのが、2020年10月16日に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』です。公開からわずか3日間で興行収入46億円を突破し、最終的には403億3000万円の日本歴代最高興行収入を記録。全世界で累計動員約4,135人、総興収は約517億円の大記録を打ち立てました。
参考:YAHOOニュース「「『鬼滅の刃』無限城編」興収176億円、「踊る2」超え歴代10位に 最速200億超えも濃厚」
この大ヒットは映画業界だけでなく、グッズ、書籍、コラボ商品など、あらゆる分野に凄まじい経済効果をもたらしました。第一生命経済研究所の試算では、その経済効果は2700億円に上るとされています。
【鬼滅の経済効果2700億円 試算】https://t.co/1jFZVWfKWG
アニメ映画やコミックが空前のブームとなっている「鬼滅の刃」。第一生命経済研究所の永濱利廣氏の試算では、その経済効果は映画の興行収入やコミックの売り上げ、関連グッズなど全て合わせて2700億円にもなるという。
— Yahoo!ニュース (@YahooNewsTopics) December 4, 2020
株価を押し上げた「鬼滅銘柄」たち
この「鬼滅特需」は株式市場にも大きなインパクトを与えました。ここでは、特に大きな恩恵を受け、株価を上昇させた代表的な「鬼滅銘柄」を見ていきましょう。
ソニーグループ(6758)- アニメ製作の中核
アニメ『鬼滅の刃』の製作会社であるアニプレックスは、ソニーグループの完全子会社です。主題歌を歌ったLiSAさんもソニー・ミュージックエンタテインメント所属であるなど、ソニーはグループ全体で『鬼滅の刃』に深く関わっています。 アニメの人気と映画の大ヒットは、ソニーの業績に大きく貢献しました。
アニメ放送開始直前の2019年4月12日にソニーの株を約1,040円(調整後終値)で購入し、映画公開後の高値を付けた2021年2月5日に約2,490円(調整後終値)で売却したと仮定すると、株価は約2.39倍に。
100万円投資していたら、約230万円になっていた計算です。
東宝(9602)- 映画配給
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の配給を手がけたのは東宝です。2020年はコロナ禍であり、映画業界にとってはとても厳しい年でしたが、記録的な興行収入は、言うまでもなく東宝の業績を直接的に押し上げました。映画公開が近づくにつれて株価は上昇し、公開初週明けには高値を記録しました。
映画公開前の2020年8月14日に約3,660円で東宝の株を購入し、 公開後の高値である2020年10月23日の4,515円で売却したとすると、短期間で株価は約1.23倍になりました。もし100万円投資していたら、約123万円になっていた計算です。
壽屋(7809)ーフィギュア
壽屋のフィギュアは、1953年に玩具の小売店として創業1989年には完全可動式のモデルキットを自社商品として発売し、プラモデルメーカーとして注目されるようになりました。1995年には新世紀エヴァンゲリオンのフィギュアを発売し、日本のフィギュアブームの火付け役となった企業で、キャラクターの再現度の高さやディティールまでこだわった、動きのあるポージングが特徴です。「鬼滅の刃」シリーズは店舗、ECサイトに加え、小売店への卸で想定以上に受注が入り、売上を伸ばしました。
アニメ放送開始直前の2019年4月9日に壽屋の株を488.9円(調整後終値)で購入し、2020年1月7日の699.9円で売却したとすると、短期間で株価は約1.43倍になりました。もし100万円投資していたら、約143万円になっていた計算です。
ダイドードリンコホールティングス(2590)ーコラボ
ダイドードリンコホールディングスは、2020年10月「ダイドーブレンド ダイドーブレンドコーヒーオリジナル」の45周年を記念して発売した、アニメ『鬼滅の刃』とのコラボ商品「ダイドーブレンド ダイドーブレンドコーヒーオリジナル」「ダイドーブレンド 絶品微糖」「ダイドーブレンド 絶品カフェオレ」、通称 “鬼滅缶” は発売から約3週間で累計販売本数5000万本を突破する爆発的なヒットを記録。同社の業績を大きく押し上げました。 この成功は株価にも好影響を与えました。
映画公開前の2020年9月4日に約2,472.5円(調整後終値)でダイドードリンコホールディングスの株を購入し、アニメ『鬼滅の刃』とのコラボ商品発売後の2020年11月10日2,805円(調整後終値)で売却したとすると、短期間で株価は約1.13倍になりました。もし100万円投資していたら、約113万円になっていた計算です。
参考:“鬼滅缶”で大成長? 3週間で5000万本を売ったダイドーから学ぶ「コラボ成功のヒケツ」
くら寿司(2695)ーコラボ
2020年、くら寿司の既存店売上は新型コロナ感染症拡大による外出自粛の影響を大きく受けました。しかし、6月には「鬼滅の刃」プレキャンペーンの奏功もあって既存店売上が97.4%になり、さらに9月から大幅に内容拡充した2回目のキャンペーンが始まり、その結果、既存店売上高で107.9%と7か月ぶりの100%超えを達成。売り上げに貢献しました。
キャンペーン開始直前の2020年8月21日に約2,350円(調整後終値)でくら寿司の株を購入し、公開後の高値である2020年11月13日3,200円(調整後終値)で売却したとすると、短期間で株価は約1.36倍になりました。もし100万円投資していたら、約136万円になっていた計算です。
参考:https://www.ssnp.co.jp/foodservice/208990/
第二の「鬼滅の刃」は?
『鬼滅の刃』の事例で、エンターテイメント作品のヒットが、関連企業の株価にいかに大きな影響を与えるかおわかりいただけたと思います。そうなると、気になるのが次の「候補」です。
第二の「鬼滅の刃」となるようなポテンシャルを秘めた作品を見つける必要があります。
見つけるためには、以下のような視点が重要になります。
- 話題の漫画や小説、ゲームなど、原作の段階で高い人気を誇る作品に注目する。
- アニメ化や映画化の際に、どの会社が制作や配給を担うのかをチェックする。特に実績のある制作会社が手がける作品は期待が高まります。
- アニメや映画だけでなく、グッズ、ゲーム、コラボカフェなど、幅広い展開ができそうな作品は、多くの企業が関わる可能性があり、投資対象も広がります。
- X(旧Twitter)などのSNSで話題を常に把握しておくことも重要です。
次の鬼滅の刃となるか?候補作品7選
独断の好みで次の鬼滅の刃となる候補を7作品選びました。
怪獣8号(Kaiju No.8)
「少年ジャンプ+」の看板作品である「怪獣8号」は、国内累計発行部数が1800万部を超える大ヒット作です。2024年から放送されたアニメは、制作:Production I.G/怪獣デザイン&ワークス:スタジオカラーという豪華布陣で、海外でも高い評価を得ています。
「怪獣8号」のストーリーは熱く魅力的ですが、現時点ではアクションや設定の面白さが先行しており、「鬼滅の刃」のような老若男女の心をつかむエモさを今後打ち出せるかが社会現象化への鍵となりそうです。作者の松本直也氏は物語が佳境に入っているとコメントしており、今後の展開が注目されます。
葬送のフリーレン
「週刊少年サンデー」で連載中の「葬送のフリーレン」。2025年7月時点で全世界累計発行部数が3,000万部に突破するなど、驚異的な人気を誇ります2023年~2024年にかけて放送されたアニメは、その圧倒的なクオリティで国内外の賞を総なめにし、原作人気をさらに加速させました。
魔王を倒した後の世界を舞台に、「時間」と「人の生と死」という普遍的かつ哲学的なテーマを、静かで美しい筆致で描いています。この独特の作風が、従来の少年漫画ファンだけでなく、より幅広い年齢層の読者の心を掴んでいます。
メダリスト
月刊「アフタヌーン」で連載中の「メダリスト」は、フィギュアスケートを題材に、選手とコーチの二人三脚での成長を描いた作品です。数々の漫画賞を受賞し、テレビアニメ化され、2026年1月から第2期が決定しています。
スケートの専門的な知識がなくても引き込まれる、スポ根ものの熱い展開と、夢を追う登場人物たちの深い人間ドラマが高い評価を得ています。特に、挫折を経験したコーチと才能あふれる少女の絆は、多くの読者の心を強く揺さぶる作品です。
鵺の陰陽師
週刊少年ジャンプで2023年から連載が始まった「鵺の陰陽師」は、2025年7月時点で累計発行部数120万部を突破し、「アニメ化してほしいマンガランキング2025」で1位を獲得するなど、大きな期待が寄せられています。
学園、退魔、ファンタジーといった要素は、週刊少年ジャンプの王道であり、大ヒットのポテンシャルを秘めています。 現時点では発行部数やメディア展開の規模においては、「鬼滅の刃」はもちろん、「SPY×FAMILY」や「ブルーロック」とも大きな差があり、今後の飛躍が期待される段階です。
薫る花は凛と咲く
2021年より週刊少年マガジン公式アプリ「マガジンポケット」で連載中の「薫る花は凛と咲く」は、電子版を含めた累計発行部数が400万部を突破しており、特に10代・20代から絶大な支持を集めるラブコメです。
底辺男子校の生徒と、お嬢様校の生徒が織りなす純粋で優しい恋愛模様が、昨今、刺激的な作品が多い中で際立った魅力となっています。登場人物たちの誠実さやひたむきさが、読者に安心感と多幸感を与えています。
SPY×FAMILY
「SPY×FAMILY」は、累計発行部数が2023年10月時点で3,100万部を突破しており、社会現象に近い人気を獲得しています。アニメ化前から「少年ジャンプ+」の看板作品として異例の人気を博し、スタイリッシュなスパイアクションと心温まるホームコメディの融合が、性別を問わず幅広い層の支持を集めています。
幅広い読者層: スパイ、殺し屋、超能力者という設定の面白さと、偽装家族が織りなす「癒し」の要素が、従来のジャンプ作品のファン層を超えて女性やファミリー層にもファンを増やしています。
ブルーロック
「ブルーロック」は、シリーズ累計発行部数が2025年3月時点で4,500万部に達するなど、サッカー漫画としては異例の大ヒットを記録しています。「エゴ」をテーマにした過激なストーリーとデスゲームのような展開が、特に若い世代から熱狂的な支持を集めています。
「世界一のストライカーを創る」という斬新な設定と、魅力的なキャラクターたちの利己的なプレーが読者を惹きつけています。すでに アニメ化、映画化でも成功を収めており、2023年上半期の講談社マンガ販売ランキングではコミック・電子ともに少年マンガ部門で1位を獲得するなど、その勢いは本物です。
参考:https://mangaip.kodansha.co.jp/ranking/2023/kc
第2の「鬼滅の刃」候補を見つけたら
好きな先品などから第2の「鬼滅の刃」となる候補を見つけたら、
「鬼滅の刃がヒットしている」→「配給企業はどこ?」→「東宝?」→「株価や業績はどうなっているか?」→「投資する価値があるかどうか?」というように、最初の気づきを起点として、ひとつひとつ情報を重ねていくプロセスが大切です。その過程で、IR資料や会社四季報、決算発表なども活用しながら判断を深めていきましょう。
投資というと、つい財務諸表や専門的な分析を思い浮かべますが、個人投資家にとっての一番の強みは、「生活者としての感性」です。生活の中で、肌感覚で流行の兆しを知ることができるのは個人投資家が強みだと思います。日々の暮らしの中にヒントは隠れています。それを株式投資にも活かしていきたいですね。
まとめ
社会現象となった『鬼滅の刃』は、映画やグッズの大ヒットによって経済効果2700億円超を生み、ソニーグループや東宝、バンダイナムコなど関連企業の株価を大きく押し上げたました。もし当時投資していれば短期間で1.13〜2.6倍のリターンも可能だった計算です。
当記事では、実際の投資シミュレーションと代表的な“鬼滅銘柄”の株価推移を紹介するとともに、次の大ヒット候補を独断と偏見で7作品をピックアップしました。
『鬼滅の刃』がもたらした熱狂は、株式市場においても大きなチャンスを生み出しました。エンターテイメントへの投資は、作品を楽しみながら資産を増やす可能性を秘めています。
しかし、投資には必ずリスクが伴います。ブームが去った後に株価が下落することもあるため、一時的な熱狂に惑わされず、企業のファンダメンタルズや将来性を見極める冷静な分析が不可欠です。
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