
2024年も引き続き円安進行中です。円安になるとデメリットばかりが強調されますが、自動車産業などの輸出関連企業やインバウンド関連は恩恵を受けるため、企業業績が上振れするメリットもあります。
本記事では、円安・円高の基礎知識と、円安がメリットとなる株式銘柄・円安投資で注目すべき点を解説します。円安傾向は長期的にみるとまだ続くとみる専門家が多いです。あなたの銘柄選びの参考にしてください。
目次
円安・円高とは
円安とは、外国の通貨に対して円の価値が低くなることです。日本では、ドルやユーロに対して、円安や円高と言われることが多くあります。
例えば、円とドルの関係で考えてみましょう。1ドル=100円の為替相場が1ドル=150円となれば、円安といえます。これまで100円で買えた商品が、150円出さないと買えないため、ドルに対する円の価値が下がっています。
一方、円高とは、外国の通貨に対して円の価値が高くなることです。1ドル=150円の為替相場が1ドル=100円と変わると、これまで150円出さないと買えなかった商品が、100円で買えることになるため、円の価値が上がり円高となります。
円安や円高になるとデメリットが強調される場合がありますが、メリットもあります。企業や個人にとってメリットがあるかの判断基準は、企業が輸出や輸入のどちらに重きを置いているか、個人は売買のどちらが多いかによっても変わるのが特徴です。
急激すぎる為替の変動は弊害が多いですが、為替相場が変動するスピードが緩やかな場合は、円安・円高にあわせた行動をとることでメリットを享受できる場合があります。
いまが円安の理由
円安や円高は、為替相場で日本の円と外国の通貨を交換するための比率が変動することにより発生します。為替相場の動向は、外国との輸出入に大きな影響を与えます。
現在の円安は、2022年から急激に進行中です。とくに2023年当初は1ドルが130円を割ることもありましたが、11月までにはたびたび150円の壁を突破し、日本銀行が為替に介入する事態も起きました。
さて、現在も円安が進んでいる大きな原因は、日米の金利差です。両国の中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)と日本銀行は、これまで長期にわたり低金利政策を採用してきました。
しかし、米国のFRBはウクライナ情勢などによる物価上昇を抑えるため、2022年3月から金利を引き上げているのに対して、日本銀行は低金利政策を維持しています。
現在では、米国の10年物国債利回りは5%を超えることもあるのに対し、日本は1%以下です。日米の金利差が広がると、投資家は資産をドルで持つ方が有利なため資産移動が進み、ますます円安が進んでいます。
円安の影響
円安になると、それだけで輸出産業の業績が拡大する効果があります。
自動車会社や電気機器メーカー・精密機器メーカーが輸出する例を考えてみましょう。
例えば、1ドルが100円から150円へと50円分円安ドル高になった場合、これまで1個1ドル(100円)で輸出して海外で販売していたものが、1ドル(150円)で売れるようになります。
これを円に換算すると、50円分の売上が上乗せされることになるのです。売上が増えれば輸出企業の利益率も高まります。
また、利益が多くなったことにより、商品やサービスの値下げも可能となるため企業の価格競争力が高まるのがメリットです。
一方、原材料を海外より輸入することが多い企業にとって、円安は痛手となります。1ドル100円の為替レートで仕入れていたとすると、1ドルが150円と円高になると仕入れコストが50円増すため、完成した製品の利益率は減少してしまうのです。
円安の影響
円安のときに投資するとよい対象は、次のとおりです。
- 輸出産業
- インバウンド関連
- FXによる外貨取引
- 外国株
- 外国株を含めた投資信託
このなかでは、日本の輸出産業やインバウンド関連の銘柄に投資するのが、最も簡単でリスクが少ない方法です。
外貨を対象とするFX取引は、短期間で大きな値動きがあり、レバレッジをかければ少ない元手で大きなリターンを狙えるので人気です。しかし、為替相場は変動が激しいため、大きな利益を得るには投資経験と幅広い知識が必要です。投資に慣れた上級者向けの方法といえるでしょう。
また、日本株だけではなく、米国株を含めた外国株や、外国株を採り入れた投資信託に投資するのもよいでしょう。外国株を取引するには、証券会社に新たに口座開設などの申込み手続きが必要となります。
日本株に投資していてもさらに資金的な余裕があり、外国株にも投資してリスクを分散したい場合におすすめです。
円安で恩恵を受ける日本株銘柄
前述のとおり、円安でメリットがある銘柄は、輸出をメインとしている自動車産業や電気機器メーカーなどです。これらの企業は、平素、決算見込みに対して仮の為替相場のレートを設定しています。
この想定している為替レートと円安による実際のレートの差によってもたらされる利益を感応度といいます。
この章では、主な産業と感応度の高い企業(証券コード)を紹介します。なお、感応度は2025年3月期想定為替レートに対するものです。円安方向に修正=145~150円が中心
1.自動車大手
トヨタ(7203)は1円円安になると感応度は500億円、日産自(7201)は120億円、SUBARUは110億円、ホンダは100億円。
2.自動車部品
デンソー(6902)は21億円、アイシン(7259)は16.1億円、豊田織(6201)は17億円、住友電(5802)は8億円。
3.電機大手
三菱電機(6503)は約12.5億円、パナソニック(6752)は9億円、ソニーG(6758)は20億円。
4.半導体関連
信越化(4063)は46億円、アドバンテス(6857)は11億円、ニコン(7729)は1億円、ディスコ(6146)は15億円。
5.電子部品
村田製作所(6981)は45億円、新光電工(6967)は10億円、太陽誘電(6976)は8億円、ニデックは11億円。
6.インバウンド関連
円安をメリットとする企業は輸出企業のみではありません。海外からのインバウンド客を受け入れる旅行関連会社にもメリットがあります。日本に来る外国人観光客からみると、為替の関係で日本の物価は安く感じられるからです。
出典:〔為替感応度・自動車関連〕24年3月期の想定為替レート、10円以上円安に修正
〔為替感応度・ハイテク関連〕想定為替レート、円安方向に修正=業績上振れ要因にも
日本株と外国株
円安時に、企業業績に上振れがある企業以外に投資するとよいのは、日本の割安なバリュー株です。バリュー株とは、良好な企業業績が相対的に低く評価されているため、割安で買える株のことです。
正当に評価されるようになれば、株価の上昇が期待できます。日本は株式市場が低迷している時期が長かったため、これまでは海外の投資家から注目されていませんでした。
しかし、現在、海外投資家は日本のバリュー株に注目しています。円安の影響で日本株が買いやすくなっていることもあり、割安な日本株が評価されているのです。
割安なうちに買っておけば、価格が上がったときに売却益(キャピタルゲイン)が見込めます。
また、株価上昇により企業に収益がもたらされれば、配当(インカムゲイン)も期待できるでしょう。
次に、外国株を買うのもよいでしょう。外国株の種類は、米国株やアジア株などさまざまです。
外国株は外貨で取引が行われるため、為替相場の影響を直接受けます。保有している外国株を円安が進んだときに売却すると、売却益が増えます。また、外国株の配当を受ける際にも円安の影響を受けるので、この場合も利益が増加するのがメリットです。
さらに、分散投資の観点からも外国株に投資することは大切です。円安の動きが変わり将来円高になったり、各国の経済状況が変化し日本企業よりももっと業績のよい海外企業が現れたりするかもしれません。資金の都合で外国株をまとまった単位で買うのが難しい場合には、外国株を含んだ投資信託を選ぶのもよいでしょう。
円安時に株式投資する際の注意
円安時に株式投資する際には、次の点に注意しましょう。
1. 日本株に投資しすぎない
2. 積立投資を止めない
1. 日本株に投資しすぎない
円安時には日本の輸出産業やインバウンド産業の銘柄が有利といえども、全体として投資している中身で日本株の割合を高めすぎないようにしましょう。
円安はいつ円高になるか分かりません。とくに為替相場は短期的な値動きが大きいことに加え、長期の動向を正確に予想するのは困難です。
普段から外国株に投資するなど分散投資を心がけている場合は、円高傾向になってもよいように引き続き金融資産を分散しておくことが大切です。
円安で恩恵を受ける銘柄やバリュー株を買い増すとしても、保有資産の国内外の割合は変えず分散投資を心がけましょう。
2. 積立投資を止めない
個別株や投資信託に積立投資している場合は、円安時だからといって控えないようにしましょう。円安時には外国株式に投資するのは損と思うかもしれませんが、長期にわたる積立投資では、為替の影響を考慮しても利益が出ることが多いです。
例えば、S&P500のような米国株式市場は短期的に変動することがあっても、長期的には成長し続けています。
条件が変わっても定期的に投資している人は、そのまま積立投資を継続することが大切です。
分散投資と複利効果を忘れないようにしましょう。
まとめ
株式投資で円安時に注目すべき銘柄は、自動車産業や電気機器・半導体などの輸出産業です。為替による利益の上振れは大きい場合があるので、企業が定期的に発表する業績予測に注目しておくとよいです。
また、円安により海外旅行客がもたらす経済効果も大きいです。インバウンド関連にも着目しておくとよいでしょう。
ただし、円安はいつまで続くかは分かりません。いつ円高になってもよいように、外国株式に投資したり積立投資を継続したりするなど資産を分散しておくことも大切です。
円安でメリットのある銘柄を検討して、現在保有している日本株の内訳を見直すなど、長期的な分散投資を心がけましょう。
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