
保有している投資信託が値上がりすると、いったん利確して買い直すべきか迷うことがあります。ただ、課税口座では売却益に20.315%の税金がかかるうえ、売却から買い直しまでに価格が変動するリスクも伴います。
そのため、含み益が出たという理由だけで売却するのは、基本的におすすめできません。一方、リバランスや税負担の軽減などの目的が明確であれば、選択肢のひとつになることもあります。
本記事では、投資信託を利確して買い直すメリット・デメリットと、実行する場合の判断基準を解説します。含み益を確定すべきか悩んでいる方は、売却前の判断材料として参考にしてみてください。
目次
【結論】投資信託は利確して買い直すべき?

「利確して買い直す」とは、保有中の投資信託を売って利益を確定し、同じ商品や別の商品を購入し直す手法です。
結論からいうと、基本的に含み益が出たという理由だけで投資信託を買い直す必要はありません。
売却しても保有資産の総額は変わらないうえに、課税口座では売却益に20.315%の税金がかかる分だけ手元の資金が減るためです。ただし、リバランスや損益通算など明確な目的がある場合は有効な手法になることもあります。
両者のメリット・デメリットについては、以降で詳しく解説します。
関連記事
投資信託を一部解約する5つのデメリット!ベストな売却時期とは?
投資信託を利確して買い直す3つのメリット

投資信託を利確して買い直すメリットは、以下の3つです。
ただし、いずれも利益そのものを増やす効果ではなく、資産配分や税負担を見直すためのメリットです。
取得単価を見直せる
投資信託を利確して買い直すと、複数回の購入で複雑になった取得単価を一本化できます。積立や追加購入を重ねると、購入時期ごとに基準価額※が異なるため、平均取得単価の管理が複雑になりがちです。(※投資信託1口あたりの値段のこと)
たとえば、基準価額8,000円のときに100万円、15,000円のときに50万円を投資した場合、平均取得単価は約9,474円です。
その後、保有分をすべて売却し基準価額18,000円で買い直すと、取得単価は18,000円に一本化されます。取得単価が安くなるわけではありませんが、損益管理がシンプルになる点はメリットです。
ポートフォリオを整理・リバランスできる
投資信託を利確することで、運用を続けるなかで偏った資産配分を当初の目標比率に戻せます。
たとえば、当初「株式型投資信託50%・債券型投資信託50%」で始めた運用が、株価の上昇によって「株式型80%・債券型20%」になったとしましょう。
そこで、値上がりした株式型投資信託の一部を売却し、その資金で債券型投資信託を購入することで、当初の配分(50・50)に近づけられます。
定期的なリバランスのために投資信託を買い直す戦略は、想定以上のリスクを抱えることを防ぐうえで有効です。
関連記事
【2026年版】アナリストがおすすめするNISAつみたて投資枠年代別ポートフォリオ
他の金融商品との損益通算・繰越控除で節税できる|NISA口座は対象外
課税口座の場合、投資信託の売却益と株式などの売却損を同じ年内で相殺すれば、税負担を抑えられます。
この仕組みが「損益通算」です。
たとえば、投資信託で50万円の利益が出た年に、保有株式で50万円の売却損があれば、両者を相殺して課税対象をゼロにできます。
相殺しきれなかった損失は、確定申告をすることで翌年以後3年間にわたって繰り越せます(繰越控除)。ただし、NISA口座内の利益・損失は税務上ないものとして扱われるため、他口座との損益通算・繰越控除の対象外です。
投資信託を利確して買い直す5つのデメリット

投資信託を利確して買い直すデメリットとして、以下の5つが挙げられます。
- 譲渡益に税金がかかる|約20.315%
- 売買手数料・信託財産留保額がかかる
- 複利効果が途切れる|再投資までのタイムラグ
- 売却〜買い直しまでに価格変動リスクが伴う
- NISA口座は非課税枠の再利用に制限がある|枠の復活は翌年
保有を続けた場合と比べて本当に有利かどうか、デメリットを踏まえたうえで判断してみてください。
譲渡益に税金がかかる|約20.315%
課税口座で投資信託を売却して利益を確定すると、利益に対して約20.315%※の税金が発生します。※税率の内訳:所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%
たとえば、利益が10万円の場合の税額は約20,315円となり、手元に残るのは約79,685円です。
買い直しに使える資金がその分減るため、運用元本が目減りした状態でスタートすることになります。
売買手数料・信託財産留保額がかかる
投資信託を利確して買い直すと、商品によっては「購入時手数料」や「信託財産留保額(解約時に差し引かれるコスト)」が発生します。
たとえば、評価額300万円の商品を信託財産留保額0.3%で解約した場合、差し引かれる手数料は9,000円です。また、ノーロード投信※でも信託財産留保額が設定されている商品があります。(※購入時手数料が発生しない投資信託のこと)
売却と再購入を繰り返すほどコストが積み上がり、運用効率が下がる可能性があります。
複利効果が途切れる|再投資までのタイムラグ
投資信託を利確して買い直す場合、売却から再購入までのタイムラグにより、複利効果が一時的に途切れます。
複利運用とは、運用で得た利益を元本に加えて再び運用し、資産を雪だるま式に増やす仕組みです。
売却後に再購入のタイミングを迷って1ヶ月間現金のまま保有した場合、相場が上昇していても値上がりの恩恵を受けられません。
買い直しまでの期間が長くなるほど、複利効果が薄れていきます。
売却〜買い直しまでに価格変動リスクが伴う
投資信託の場合、売却を申し込んでから現金を受け取るまでの期間は、通常3〜7営業日程度です。
売却してから買い直すまでに基準価額が上昇すると、売却時より高い価格で購入することになります。
受渡日までの間も基準価額は変動するため、以下のような状況が起こり得ます。
- 売却申込時の基準価額:18,000円
- 現金受取後に再購入時の基準価額:19,000円(上昇)
- 結果:同じ口数を買い戻すために追加資金が必要
売却後の値動きを正確に予測することは難しく、タイミング次第では買い直しが不利に働くこともあるでしょう。
NISA口座は非課税枠の再利用に制限がある|枠の復活は翌年
新NISA口座で投資信託を売却しても、売却した分の非課税枠を同じ年に再利用することはできません。枠が復活するのは、翌年1月1日以降です。
たとえば、2026年に100万円分を売却した場合、その100万円分の枠を再び使えるのは2027年からとなります。なお、旧NISA(〜2023年)の場合、売却した分の枠は復活しません。
投資信託を利確して買い直す場合の戦略・タイミング

投資信託の利確・買い直しは、目的が明確な場合に限り検討すべきです。おもなケースを以下の表にまとめました。
| 検討できる場面 | 理由 |
| 資産配分が目標から大きく外れた | 値上がりした資産を売り、当初の配分へ戻せる |
| NISAの非課税保有限度額を翌年以降に再利用したい | 売却した商品の簿価分を、翌年以降に再利用できる |
| より低コストの商品へ乗り換えたい | 信託報酬などの負担を抑え、長期運用の効率を改善できる |
| 課税口座で含み損の商品も売却する | 利益と損失を相殺し、税負担を抑えられる可能性がある |
過去の運用成績が良いという理由だけで乗り換えても、今後の成果が良くなるとは限りません。含み益が出たから売るのではなく、資産配分・コスト・税金の見直しが必要かどうかを基準に判断しましょう。
関連記事
ETFを買い増しするタイミング5選!判断基準と失敗しないコツ
投資信託を利確して買い直すときの3つの注意点

投資信託を利確して買い直す際は、以下の3点を確認しておきましょう。
受渡日や取引制限を事前に確認しておかないと、希望するタイミングで買い直せない場合があります。
解約から再購入までにタイムラグが生じる|1週間程度
投資信託は解約を申し込んでも、即時に現金化されません。代金を受け取るまでにかかる期間は、通常4〜7営業日程度です。
月曜日に解約を申し込んでも、売却代金の入金が翌週になる場合もあります。入金されるまでの間は売却した資金を使えないため、「買い直したいのに買えない」という空白期間が生じます。
基準価額が上昇していると、売却時より高い価格での再購入になる点を理解しておきましょう。
商品ごとの解約条件やコストを確認する
投資信託は商品によって、解約時のコストや条件が異なります。
信託財産留保額が設定されている商品では、解約時の基準価額に一定の料率を掛けた金額※が差し引かれます。(※料率は商品ごとに異なる)
利確して買い直すかを判断する前に、保有商品の信託財産留保額の有無と料率を目論見書で確認しておきましょう。
クローズド期間が設定されている商品もある
投資信託によっては、購入後一定期間は換金できない「クローズド期間」が設定されている商品があります。
運用開始直後の解約を抑え、予定どおりに資産を組み入れやすくする目的で設けられており、期間は3〜6カ月や1年など商品によって異なります。
つまり、クローズド期間中は相場が下落しても換金できません。
希望するタイミングで売却できない事態を避けるため、買い直す前に目論見書でクローズド期間の有無を確認しておきましょう。
投資信託を利確して買い直す戦略に関するよくある質問

投資信託を利確して買い直す戦略に関するよくある質問に回答します。
それぞれ見ていきましょう。
NISA口座で投資信託を利確して買い直すのはあり?
目的が明確であれば、NISA口座で利確して買い直すことも選択肢のひとつです。NISA口座で買い直しすることのメリット・デメリットを下表にまとめました。
| メリット | デメリット |
| 売却益に税金がかからないため、買い直しのコストを抑えやすい | 売却した分の非課税枠が復活するのは翌年以降(年内に再利用できない) |
リバランスや商品の乗り換えなど、売却する目的がはっきりしている場合に限り検討できる方法だといえます。
投資信託を利益分だけ解約(売る)して買い直すことはできる?
投資信託は金額を指定して一部解約できるため、含み益と同じ金額の売却は可能です。ただし、利益だけを切り離して売る仕組みではありません。
売却した口数に含まれる元本と利益をもとに損益が計算され、課税口座では利益にあたる部分に税金がかかります。
生活費の確保など明確な目的がなければ、含み益が出るたびに一部解約して買い直す方法は長期運用には向きにくいでしょう。
まとめ

投資信託を利確して買い直すと、税金や売買コストが発生し、再投資までの間に価格が変動するリスクも伴います。含み益が出たという理由だけで売却するのは基本的におすすめできません。
一方、資産配分の見直しや低コスト商品への乗り換え、課税口座での損益通算、NISAの非課税枠を翌年以降に再利用したい場合は検討できる手法です。
利確するか迷ったときは、利益の大きさだけでなく、売却する目的・税負担・買い直し後の運用方針を整理した上で判断しましょう。
【ご注意事項】
本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
株式投資には元本割れのリスクがあります。
配当金は企業の業績によって減額・廃止になる場合があります。
投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
記載のデータは2026年8月17日時点のものです。
最新情報は各企業のIR資料等でご確認ください。


コメントComment