
投資初心者でも「長期・分散・積立」の投資ができる投資信託。
2024年に新NISAが始まったことで、将来に備えるために投資信託を買い始めた方が増えています。
ただ、運用期間が長くなってくると「投資信託を一部だけ売って現金化するのはダメなのか」と迷うときもあるはずです。
本来、投資信託は長期間運用し続けることで利益が狙える商品なので、一部解約に抵抗を感じている方も多いでしょう。
そこで、本記事では投資信託を一部解約するデメリットを解説し、本当に売却すべきタイミングを紹介します。
むやみに売買して利益を逃がさないための参考にしてみてください。
投資信託の一部解約で生じる3つのデメリット

投資信託の一部解約には、以下3つのようなデメリットがあります。
上記を理解したうえで売る判断をすれば、投資信託の売却時に「思うように利益が残らなかった」という失敗を防げるでしょう。
複利効果で得られる利益が減る
複利効果とは、運用利益を再投資することで利益が利益を生み出し、雪だるま式に資産が増える仕組みです。
投資信託を一部解約すると「複利効果」が弱まるため、将来狙えたはずの利益が減ります。
たとえば、100万円を年利5%の投資信託で運用し、120万円まで増えたとします。
「利益20万円分を一部解約した場合」と「そのまま運用を続けた場合」の運用結果を、以下の表にまとめました。
| 経過年数 | 20万円解約(元本100万円の運用+解約20万円の合計) | そのまま運用(120万円の運用) | 差額 |
| 5年後 | 約147.6万円 | 約153.1万円 | 約5.5万円 |
| 10年後 | 約182.8万円 | 約195.4万円 | 約12.6万円 |
| 15年後 | 約227.8万円 | 約249.4万円 | 約21.6万円 |
| 20年後 | 約285.3万円 | 約318.3万円 | 約33万円 |
※MUFG|一括投資シミュレーションを使って算出(想定リスクは年率1%)
たった20万円の解約でも15年後には約21.6万円、20年後には約33万円の差が生まれ、一部解約によって複利効果が減ることがわかります。
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積立投資のリズムが崩れやすくなる
投資信託を一部解約すると、その後の積立投資でリズムが崩れやすいです。
たとえば、毎月3万円ずつ積立していたところ、急な出費で10万円を一部解約したとします。
すると「もう積立しなくていいか」と考えたり、逆に「解約した分を取り戻そう」と無理な金額を積み立てたりして、計画的な運用ができなくなる可能性があります。
一度、積立リズムが崩れると短期で利益を取り戻すのは難しく、モチベーションの維持が難しくなるでしょう。
一度解約すると長期保有の意識が薄れやすくなる
投資信託を一度解約すると「また解約すればいい」と考えやすくなります。
最初は「緊急時のみ解約」と決めていても、一度現金化すると心理的なハードルが下がり、ちょっとした物欲や不安で解約を繰り返してしまう可能性が高いです。
解約を繰り返すと長期保有ができなくなり、複利効果を十分に得られません。結果、資産形成の計画が達成できなくなるリスクがあります。
投資信託の一部解約が必要な5つのタイミング

投資信託の一部解約が必要なタイミングとして、以下の5つが挙げられます。
適切な解約のタイミングを理解して、本当に必要なときに現金化しましょう。
目標金額に達成したとき
当初に自分が決めていた目標金額に達したら、投資信託の一部解約を検討しましょう。
目標達成の時点で投資の目的を果たしているため、それ以上のリスクを取る必要がないからです。
一方、値動きリスクのある投資信託を保有し続けると、せっかく達成した目標額が値下がりで減るかもしれません。
ただし、今すぐすべてを現金化する必要がないなら、残りを運用し続けることでさらに資産を増やせる可能性があります。
ライフイベントで資金が必要なとき
ライフイベントで資金が必要なときは、投資信託を一部解約するのがおすすめです。たとえば、以下のようなライフイベントでは多くの資金が必要となります。
- 結婚費用
- 住宅や自動車の購入(頭金として)
- 子どもの高校・大学への進学費用
- 老後の生活費
資産運用の目的は、必要なタイミングに向けて資金を確保することにあります。
ライフイベント時には投資信託を解約して現金を確保し、資金に余裕が出てきたタイミングで再び投資信託の購入を再開するのが得策です。
ほかに有望な投資先が見つかったとき
ほかに有望な投資先が見つかったときも、投資信託の一部解約を検討すべきタイミングのひとつです。
解約資金を有望な投資先に移すことで、資産形成のペースを早められる可能性があります。
ただし、手持ち資金に余裕があるなら、今の投資信託は解約せずそのまま運用を続け、毎月の積立資金だけを新しい投資先に回すと良いでしょう。
この方法なら、既存の投資信託は複利効果を維持しながら、新しい投資先でも資産を増やせる可能性があります。
含み損が自分のリスク許容度を超えているとき|損切り
保有する投資信託が値下がりし、自分のリスク許容度を超えた含み損が出ているなら、売却して損切りしましょう。
「いつか回復するかも」といった根拠のない期待で保有し続けていると、含み損がどんどん膨らんで精神的ストレスを感じる可能性があるからです。
許容できるリスクの度合いは、人それぞれ異なります。
「許容できる含み損は30%まで」「10万円以上の損失は耐えられない」といったマイルールを決めておけば、感情に流されない冷静な投資判断ができます。
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ポートフォリオの資産配分が崩れているとき|リバランス
当初設定したポートフォリオの資産配分が大きく崩れているときは、一部解約によるリバランスが必要です。
たとえば、株式と債券を50%ずつ保有する方針でリスク管理をしているなか、株価上昇で配分が70:30になったとします。
このまま株式の比率が高い状態を放置すると、株価が暴落したときに資産全体が大きく減少し、当初想定していたリスク許容度を超えてしまう可能性があります。
そこで、株式の値上がり分を一部解約して債券を買い増せば、当初の50:50に戻すことが可能です。
ただし、頻繁な売買は手数料で損する可能性があるため、リバランスは多くても年1回程度に留めましょう。
投資信託の一部解約で損をしないための4つのコツ

投資信託の一部解約で損をしないよう、売却時には以下の4つのコツを意識しましょう。
できるだけ多くの利益を残すための参考にしてみてください。
必要最低限の金額だけ解約する
投資信託の一部解約は、必要最低限の金額にとどめましょう。残りで運用を続ければ、資産を増やせる可能性があるからです。
こちらの「複利効果で得られる利益が減る」の章で解説したとおり、投資信託を解約すると複利効果が弱まり、将来狙えるはずの利益が減ってしまいます。
たとえ資産が100万円に増えていても、必要な50万円だけを売却することで、残りの50万円でさらなる資産アップを狙えるでしょう。
解約前にほかの資金調達方法を検討する
投資信託は解約せずに運用し続けた方が、複利効果でどんどん狙える利益が増える可能性があります。
将来的により多くの資産を確保するためにも、一度ほかの手段で資金調達できないかを考えてみてください。
具体的には、以下のような手段でも必要な現金を確保できる可能性があります。
- 生活防衛資金を活用する
- 低金利のローンを活用する
- ボーナスや臨時収入を支払いに充てる
- 不要な資産を売却する(不用品、保険見直しなど)
- 固定費を見直して削減する(通信費、光熱費、サブスクなど)
ただし、無理な資金繰りは生活を圧迫するため、どうしても必要なときは投資信託の一部解約を選択しましょう。
含み益が出ている投資信託から優先的に解約する
投資信託の一部解約は、含み益が出ている商品から優先的に解約しましょう。
含み益が出ている商品なら、確実に利益を現金化できます。
一方、含み損が出ている商品を解約すると損失が確定してしまい、将来狙えるはずの利益を逃すことになるのです。
含み損の商品はそのまま保有し続け、長期運用で損失を取り戻すのも戦略のひとつです。
現金が必要な日から逆算して解約する|数日〜1週間
投資信託の一部解約は、現金が必要な日から逆算して手続きしましょう。たとえ解約しても、すぐには現金振り込みが実行されないからです。
現金化までにかかる日数は、国内株式で最低4営業日ほど、外国株式ではさらに長い期間がかかります。
「明日の住宅ローン(頭金)の払いに向けて、いまから解約手続きをする」では間に合いません。
余裕をもって、支払いの1〜2週間前には解約手続きを済ませておくのが無難です。
投資信託の一部解約に関するよくある質問

投資信託の一部解約に関するよくある質問に回答します。
それぞれ見ていきましょう。
投資信託の一部解約にメリットはある?
投資信託の一部解約には、以下のようなメリットがあります。
- 目標金額に達したとき
- ライフイベントで資金が必要なとき
- ほかに有望な投資先が見つかったとき
- 含み損が自分のリスク許容度を超えているとき
- ポートフォリオの資産配分が崩れているとき
あくまで投資は必要資金を確保するための手段なので、必要なときは売却を検討しましょう。
投資信託を利益分だけ解約することはできる?
投資信託を利益分だけ解約することは可能です。
証券会社で投資額(元本)を確認し、差額分を売却すれば利益分だけを現金化できます。
ただし、NISA口座以外で運用中の投資信託を売却した場合、20.315%の税金が発生することを知っておきましょう。
投資信託の一部解約で発生する利益の計算方法は?
投資信託の一部解約で発生する利益は、以下の計算式で求められます。
※NISA口座は非課税
信託財産留保額(売却手数料)が無料の商品も増えているので、利益を最大化するには手数料の低い投資信託を運用しましょう。
投資信託を一部解約しながら貯金代わりに運用するのは良い?
投資信託を貯金代わりに運用し、必要なときに解約するスタイルはおすすめできません。
投資信託は相場で価値が変動するため、必要なときに値下がりしていると必要額を確保できない可能性があるからです。
生活防衛資金は貯金で管理し、投資信託は余剰資金で運用しましょう。
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まとめ

投資信託の運用は「長期・積立・分散」を徹底し、複利効果をフル活用するのが理想です。
事実として、投資信託の一部解約には、利益の減少や投資リズムの崩れといったデメリットがあります。
しかし、投資はあくまで「必要資金を確保する手段」のひとつなので。以下のようなタイミングでは売却を検討すべきです。
- 目標金額に達したとき
- ライフイベントで資金が必要なとき
- ほかに有望な投資先が見つかったとき
- 含み損が自分のリスク許容度を超えているとき
- ポートフォリオの資産配分が崩れているとき
現金が必要になったときでも冷静に「一部解約」という手段を選べるよう、投資に関する勉強を続けながら、自分のなかでの売却ルールをしっかりと決めておきましょう。


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