最近は、投資をしている人も少なくなく、NISAやiDeCoといった制度を活用しているという人も増えてきました。投資に関する情報もオープンになってきて、ネット上でもさまざまな金融情報にアクセスできるようになっています。
そんな中で、投資初心者向けの記事をみていくと、「投資初心者には投資信託がおすすめ」といった論調が多くみられます。投資信託のメリットを提示してくれる記事は多いのですが、デメリットについて教えてくれるものはあまりありません。
「投資初心者だけど、本当に投資信託に投資していいの?デメリットはないの?」と思う人もいることでしょう。この記事では、不安に思っている人向けに投資信託のデメリットについて詳細に説明します。
投資信託のデメリットと正確に把握して、自分の投資に役立ててください。
目次
基本的な投資信託のデメリット
まず、よく挙げられる基本的な投資信託のデメリットについて解説します。投資信託という金融商品の特性上、諸費用等についてはしっかりとチェックする必要があります。
1-1. 投資信託には諸費用がかかる
投資家が投資信託を購入・保有する際には主に以下のような諸費用がかかります。
・購入時手数料
投資信託を購入する際に販売会社に支払う費用。ファンドや販売会社によっては購入時手数料が無料のもの(=ノーロード)がある。
・運用管理費用(信託報酬)
投資信託を運用管理してもらうためにかかる費用。投資信託の保有額に応じて支払う。投資信託の信託財産から間接的に支払われる。
・監査報酬
監査法人などからの監査費用。投資信託は決算ごとに監査を受ける必要があるので、投資信託の運用における必要経費の一つ。投資信託の信託財産から間接的に支払われる。
・売買委託手数料
投資信託は複数の株式や債券などの組み合わせで運用されており、時にそうした金融商品の売買によって発生する手数料。運用次第で発生する費用が変動する。
・信託財産留保額
投資信託を解約する際にかかる売買手数料とは別にかかる費用。投資家が投資信託を解約すると、投資家に支払われる代金のたまえに投資信託の資産を売却するため、手数料が余分にかかる。また、上記以外にも投資信託によって費用がかかるケースがあります。投資信託の目論見書などに投資信託にかかる費用は記載されているので、気になる場合はきちんと目論見書に目を通す必要があります。
1-2. コストを比較し、適切な運用費用の投資信託を選ぶ必要がある
投資信託を保有することは、投資家の代わりにファンドマネジャー等に資産運用の管理を任せる投資です。したがって、すでに説明した通り、諸費用がかかります。
投資効率を高めて、大きなリターンを得るためには、この諸費用を低く抑える必要があります。それゆえ、投資する投資信託を選ぶ際、各コストを比較し、運用費用が適切かどうかを確認しなければいけません。
投資信託を販売する際に、諸費用を開示する必要がありますが、投資信託の費用については、目論見書でしっかり確認する必要があるため、投資信託の選定には時間がかかるのもデメリットの一つといえるでしょう。一方、投資対象となる投資信託の選定ができれば、運用の手間などはかからないのが投資信託のメリットでもあります。
1-3.運用方針などは投資信託ごとに異なり、投資家は変更できない
投資信託という金融商品の特性上、投資信託の運用方針や保有する株式の売買タイミングなどは実際に信託財産を運用するファンドマネージャーなどが決定します。
運用方針なども目論見書などに記載されているので、投資する前にしっかりと確認する必要があります。また、指数に連動するインデックス投資などでは、指数に連動するように繰り返し株式等の売買が行われます。
自動で売買される場合もあれば、市場の急変などによっては手動で売買されることもあり、取引にはタイムラグが生じることもあります。しかし、投資信託を保有している投資家が運用上でできることはほぼありません。自分が保有したくない金融商品を保有する可能性などもあるので、投資においてすべて自分の思う通りにしたいという人にとって、投資信託は不向きといえるでしょう。
2. 価格変動のリスクを伴う
投資信託は金融商品の一つです。したがって、元本保証がなく、自分が投資した資金が目減りする可能性があります。どのような場合に価格変動のリスクが発生するか、またリスクに対してどのように対処すべきかについて説明します。
2-1. 市場の変動による価格変動のリスク
投資信託は株式や債券などの資産に投資するので、株式市場の株価や債券市場の金利が変動することで連動して投資信託の価格が変動します。
例えば、とある企業の株価が下落するとします。投資信託で投資している場合、その企業の株式100%の投資信託は存在しませんが、投資信託の一部としてその企業の株式を保有している場合、保有比率に応じて、株価の下落の影響を受けるということです。また、一般的に債券価格は金利の上昇とともに価格が下落します。
債券の価値は利回りで決まっているため、金利が上がってしまうと既存の金利で発行された債券の利回りが悪くなってしまうためです。株式同様、特定の債券100%の投資信託は存在していませんが、もし保有する投資信託に債券が一部含まれている場合、保有比率に応じて投資信託の価格にも影響があります。価格変動自体は、一時的なものですが、投資信託を保有する投資家はさまざまです。
短期的な投資家などによって売却が増えると、その分コストがかかったり、投資信託自体の価値が下がるので長期的なパフォーマンスの上でも損失が大きくなる可能性もあります。
2-2. 価格変動のリスクへの対処法
投資信託の価格変動リスクを低減するには、まず一時的な価格変動に惑わされないことです。長期的な視座を持つことで、余計なコストを支払うことなく、資産を増やしていくことができます。
また、株式だけ、債券だけの投資信託を保有するとそれだけリスクが高くなるので、異なる資産クラスに分散投資するなど、リスクとリターンのバランスを考えて金融商品を選びましょう。
3. 投資信託にかかる税金
投資で得るリターンを最大化するためには、リスクを低減するだけでなく、支払わなければならない税金についても正しい知識を持つことが重要です。まずは投資信託にかかる税金について詳しく説明します。
3-1. 税金は分配金と譲渡益にかかる
投資信託は購入時や保有時に税金がかかることはありません。基本的に、投資信託にかかる税金は分配金と譲渡益の2つの利益に対してかかります。2つの利益の内容と税率については以下の通りです。
・分配金
投資信託を保有している場合、運用の結果得られた利益を口数に応じて受益者に分配する利益。(投資信託によって分配金は出す場合と出さない場合があり、投資信託の約款などの記載に準じる)得られた分配金は配当所得に該当し、20.315%の税率が適用される。
・譲渡益
投資信託を解約した場合、途中換金による含み益の利益もしくは償還時に得られる利益のこと。得られた譲渡益は上場株式等の譲渡所得に該当し、20.315%の税率が適用される。いずれの利益に対しても税金は課せられます。単純に投資で得られた利益がそのまま自分の利益になるわけではないので注意が必要です。
3-2. 投資信託にかかる税金を節税する方法
投資信託にかかる税金に対し、節税する方法として主に以下の4つがあります。
・NISAの制度を利用する
国民の資産形成を促進する非課税優遇制度のNISAを活用することで節税が可能です。NISA口座で運用する投資信託には分配金や譲渡益に対して非課税となります。2024年からスタートするNISAであれば、20歳以上の日本国民1人あたりに1,800万円の上限枠が設けられるので、NISA口座を活用することで資産形成を有利に進めることができます。
・iDeCo(=個人型確定拠出年金)を活用する
iDeCoは年金の一種で、20歳以上60歳未満の人が加入できる非課税優遇制度です。月5,000円から掛金を拠出できることができ、拠出した掛金全額を所得から控除できるので節税できます。NISAよりも投資できる金額や投資信託の商品数は限られていますが、iDeCoは自営業や主婦でも利用でき、老後資金の準備に活用できるのが魅力です。
・確定申告で損益通算を行う
NISAやiDeCoでは活用できませんが、特定口座で投資信託を売買して損失が出た場合、損益通算を行うことができます。損益通算とは、同一年分の利益と損失を相殺することで、損失分を利益から差し引くことができます。利益から損失を差し引いて、それでもマイナスになった場合、確定申告を通じて最長3年間損失を繰り越すことも可能です。
4.まとめ
投資信託は、投資家自身が直接的に金融商品を売買するのとは異なり、運用会社などに投資の一部を委託する投資になります。自分で売買注文などをする必要がないのがメリットで、投資をする時間がない人などに向いています。
一方、自分で直接的に金融商品を売買しないため、その分手数料などの諸費用がかかって投資効率が悪くなるデメリットや下落リスクに対して、自分でできることがほぼないといったデメリットが挙げられます。
資産効率を高めるためには、低コストの投資信託を選ぶといった方法が考えられます。下落リスクに対しては、投資対象を分散させることでリスクを低減する必要があります。また、初心者だと投資といえば、パソコン画面とにらめっこをして積極的に売買するイメージなどが浮かぶかもしれません。
実際に投資信託は商品の選定を行い、積立設定などを行うと自動的に投資ができてしまうので、いわゆる「投資をしている感覚に乏しく物足りない」と感じる人もいるようです。投資家としての自覚を感じられないというのもデメリットの一つといえるかもしれません。
デメリットとメリットのバランスを理解した上で、どのような投資をするかをしっかり検討することが、投資家としての第一歩といえるでしょう。
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