現在のNISAには株式などに投資をする「一般NISA」と積立式で投資をする「つみたてNISA」があります。
NISAは2024年より内容が拡充されて新しい制度になります。(以降、新NISA)
現在、「一般NISA」と「つみたてNISA」はどちらかの口座を選択しなければなりませんが、新NISAは一つの口座で両方の機能を持つことになります。
本コラムでは、新NISAのしくみとメリット、現行NISAとの相違点をわかりやすく解説します。
目次
今さら聞けないNISAのメリット
NISAのメリットは、投資から得た利益に対して税金がかからないという税制優遇措置が取られていることです。
通常、投資から得た利益には20%の税金がかかります。しかし、NISAでは、投資から得た売買差益、配当金、分配金等の利益には課税されず全額が収益となり手元に残ります。
このNISA制度が2024年より税制優遇の内容をパワーアップして新制度へ移行します。新NISAで何が変わるのか?わかりやすく解説します。
新NISAでここが変わる!4つの優遇
パワーアップする新NISAの税制優遇措置について順に4つ説明します。
1.一般NISAとつみたてNISAが併用可能に
一般NISAとつみたてNISAが、新NISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」にそれぞれ名前を変えて併用可能になります。
現在は、株式や投資信託へ一括投資をする場合は「一般NISA」、積立投資の場合は「つみたてNISA」を選択するという二者択一方式であるため、両方の非課税枠を使うことができません。
一方、新NISAでは、一つの口座でこれら2つの機能を持つことになり、成長投資枠、つみたて投資枠の両方の非課税枠に投資ができるようになります。
2.年間投資枠と非課税保有限度額の拡充
新NISAの年間投資枠は「成長投資枠」が240万円、「つみたて投資枠」が120万円の、合計360万円が上限となります。
また、非課税保有限度額は1800万円となり、1800万円のうち成長投資枠の利用は1200万円が上限です。なお、非課税枠の管理は簿価で行います。
「簿価」とは買付け時の価格のことで、たとえば、買付け価格100万円の投資信託の価値が上昇して150万円になっていたとしても、簿価は100万円ですので、非課税投資枠の残りは1700万円です。
非課税枠の比較【新NISAと現行NISA】
【2024年~新NISA】
併用可 | 成長投資枠 (一般NISA後継) | つみたて投資枠 (つみたてNISA後継) |
年間投資枠 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有限度額 | 1800万円(うち成長投資枠 1200万円上限) |
【~2023年現行NISA】
併用不可 | 一般NISA | つみたてNISA |
年間投資枠 | 120万円 | 40万円 |
生涯投資可能額 | 600万円 | 800万円 |
3.非課税投資期間の無期限化
NISA制度の恒久化に伴い、新NISAでは資産の非課税運用期間が無期限になります。現行NISAの非課税期間は一般NISAは5年、つみたてNISAは20年です。
そのため、5年、20年の非課税期間の終了前に運用商品を売却する、もしくは、非課税期間終了後に課税口座へ移行するかの選択を迫られます。
非課税期間内に売却すれば利益は当然非課税ですが、課税口座へ払い出した場合は、その時点での時価が新たな取得価格となり、その後、資産が値上がりすれば取得価格からの値上がり益に20%が課税されます。
この仕組みを理解していないために判断に迷うことや、決められた期限までに何もしないでいることで自動的に課税口座へ払い出されてしまい、売却時に想定外の税金が発生することがあります。
一方、新NISAは非課税で運用できる期間が無期限となるため、このようなことは起こりません。仕組みがシンプルになるため、難しい知識は必要なくなり安心して資産運用ができるようになります。
新NISA | 現行NISA | |
非課税保有期間 | 無期限 | 一般NISA(5年) つみたてNISA(20年)注1 |
注1)非課税期間終了前に売却、若しくは非課税期間終了後に課税口座へ払い出しを選択
4.投資枠の再利用が可能に
新NISAの非課税保有限度額は1800万円です。そのため、簿価(買付け価格)で投資額が1800万円を超えるとNISAでの新規買付けは一旦できなくなります。
ただし、現行NISAでは出来ない非課税枠の再利用が、新NISAでは保有資産を売却することで可能となります。
例)年間360万円を5年連続で投資する(合計1800万円)
新NISA | 非課税投資 |
1年目 | (成長投資枠)240万円(つみたて枠)120万円 |
2年目 | (成長投資枠)240万円(つみたて枠)120万円 |
3年目 | (成長投資枠)240万円(つみたて枠)120万円 |
4年目 | (成長投資枠)240万円(つみたて枠)120万円 |
5年目 | (成長投資枠)240万円(つみたて枠)120万円 |
6年目 | 100万円で購入した株式を300万円で売却売買差益200万円は非課税 |
7年目 | 100万円の成長投資枠復活→再投資可能 |
1)360万円x5年間の投資で非課税保有限度額の1800万円に達する
2)6年目は非課税投資不可
3)100万円で購入した株式が300万円に値上がりしたので売却する
4)簿価100万円分の非課税枠が復活→7年目以降再投資可能 というイメージです。
新NISAの成長投資枠とつみたて投資枠を使い分ける
新NISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」の併用が可能とお伝えしています。
成長投資枠の投資先は、基本的には一般NISA対象の商品と同じです。また、つみたて投資枠では、つみたてNISAと同様に投資信託の定額積立投資ができます。
成長投資枠の投資先
上場株式や投資信託(ETF、REITなど)に投資する場合は成長投資枠の利用です。
年間240万円の枠内であれば一括投資でも数回に分けるなどの分割投資でもかまいません。
ただし、整理・監理銘柄、信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託などはNISAの対象商品から除外されています。
つみたて投資枠の投資先
毎月定額で積立投資を行いたい場合はつみたて投資枠の利用です。
ただし、投資信託のすべてがNISA対象商品ではありません。対象になるのは金融庁の審査要件をクリアした、長期、積立、分散運用に適した一定の投資信託です。
販売手数料がかからない、信託報酬が安い、運用期間20年以上または無期限などが要件とされています。
NISAは、安定的な資産運用を促すための制度であるため、高リスクの商品はNISAの対象商品から除外されているためです。
積立投資だけなら1800万円まで可能
成長投資枠とつみたて投資枠の投資先の違いを確認しました。
両方あわせて非課税で保有できる上限額は1800万円ですが、そのうち株式など成長投資枠での投資は買付け価格で1200万円が上限です。
なお、つみたて投資枠で株式などの成長投資枠対象商品に投資は出来ませんが、反対に成長投資枠で積立投資をすることはできます。
要するに、年間投資枠360万円、非課税保有限度額1800万円のすべてを積立投資に使うことは可能という意味です。
1)株式などへの投資の場合
成長投資枠 240万円 | つみたて投資枠 120万円 |
〇 利用可 | X 利用不可 |
投資可能額 240万円 年間非課税保有限度額 1200万円 | ー |
2)投資信託への積立投資の場合
成長投資枠 240万円 | つみたて投資枠 120万円 |
〇 利用可 | 〇 利用可 |
投資可能額 360万円/年間 非課税保有限度額 1800万円 |
現行NISAと新NISAは別枠管理
現行NISAの口座開設および投資は2023年で終了します。終了後、現行NISAはどうなるの?
現行NISAと新NISAは別枠での管理となりますので、現行NISAの資産が新NISAへ移行することはありません。
今年新規開設したNISA口座を含め、現行NISAで運用中の資産は現行ルールが適用のまま運用を続けることができます。売却は自由です。
また、NISA口座の保有者は、特別な手続きをすることなく2024年からの新NISAを利用できます。
2024年からNISAを始めたいと思っている人は、今年中に口座開設をしておけば2024年からスムーズに投資が始められます。
まとめ
NISAの最大のメリットは、投資運用で得た利益に税金がかからないことです。
現行NISAでは、生涯非課税限度額が一般NISAで600万円、つみたてNISAで800万円ということから決して十分とは言えず、どちらか一方しか選べないということもあり物足りなさを感じていた人もいました。
また、非課税で運用できる期間が5年や20年と限定的であり、一度資産を売却してしまうと再投資ができないという不便さから、ライフイベントに合わせた換金をためらわせていた面がありました。
新NISAでは、非課税期間が無期限、資産を売却すれば再度非課税投資が可能、また、非課税保有限度額も1800万円と大幅にアップします。
成長投資枠とつみたて投資枠を併用すれば、短期的、長期的の両面からの資産運用が可能となります。必要な時に必要資金を換金しても、再投資すればまた非課税運用ができるため、ライフプランに合わせた柔軟な資産運用が叶いそうです。
ただ、NISAという制度自体が優秀であったとしても、投資である以上利益の保証はないということは心に留めておく必要があります。
この機会にNISAの仕組みを理解して、自分にあった資産運用を見つけましょう。
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