
2026年10月の日経平均株価は、9月末から5.19%下落しました。月初には一時7万円台まで上昇したものの、月末にかけて大きく売られています。
10月は、「雇用の悪いニュースで株価が上がる」「景気が強いのに株価が下がる」といった、一見すると不思議な動きが目立ちました。株を始めたばかりの方は、「ニュースと株価の関係がよくわからない」と感じたかもしれません。
この記事では、10月の相場の流れと主な経済指標を、株価との関係がわかるように一つずつ解説します。11月に予定されている重要な日程と、見るときのポイントもまとめました。
目次
2026年10月の株価・為替はどう動いた?
10月は日米ともに株価が下落した1ヶ月でした。特に日本株の下げが目立ちます。
| 指数 | 9月30日 | 10月30日 | 月間騰落率 |
| 日経平均株価 | 66,753.72円 | 63,290.11円 | −5.19% |
| TOPIX | 4,108.65 | 3,965.07 | −3.49% |
| S&P500 | 7,651.54 | 7,580.07 | −0.93% |
TOPIX(東証株価指数)は、東証プライム市場を中心とした幅広い銘柄の値動きを示す指数です。S&P500は、アメリカの代表的な企業500社でつくる株価指数です。10月30日(金)が、日米ともに10月最後の取引日でした。
月初の高値から約1割の下落
月間の騰落率だけを見ると、日経平均の下げは5%ほどです。しかし、月の途中を見ると、印象は大きく変わります。日経平均は10月6日に70,683.98円まで上昇しました。そこから月末の63,290.11円まで7,000円以上下げています。高値からは約1割の下落です。S&P500も10月6日に7,818.93まで上昇した後、月末にかけて約3%下げました。月初と月末の比較だけでは、途中の大きな値動きは見えてこないのです。

引用:YAHOOファイナンス 日経平均株価2026年10月

引用:YAHOOファイナンス S&P500株価 2026年10月
日経平均の下げがTOPIXより大きかった理由
日経平均とTOPIXの違いは、日経平均は日本経済新聞社が選んだ225社が対象で、TOPIXは、東証プライム市場を中心とした986社(2026年10月31日現在)が対象です。
さらに日経平均は、株価の高い一部の銘柄の影響を強く受ける計算方法です。10月は、こうした銘柄に多い半導体やAI関連の株が大きく売られました。その結果、日経平均の下げがTOPIXより約1.7ポイント大きくなりました。

引用:YAHOOファイナンス、TOPIX、日経平均株価の10月比較
10月30日の1日だけを見ても、日経平均は2.12%下落した一方、TOPIXの下落は0.95%でした。この日は、半導体関連のイビデン(4062)が15.2%安、レーザーテック(6920)が8.8%安となりました。一方で、コナミグループ(9766)は15%高、オリエンタルランド(4661)も8.5%高と、大きく上がった銘柄もありました。「日経平均が下がった日」でも、すべての株が下がったわけではないのです。
AI関連株が売られた理由
10月の株価下落で中心となったのが、AI関連株です。ただし、AIの需要がなくなったわけではありません。10月に発表された決算では、Amazonのクラウド事業の売上が前年比39%増と大きく伸びました。Microsoftも、クラウド事業の売上が48%増と好調でした。
それでも株価が売られたのは、AIのための設備投資が非常に大きくなっているためです。本業で稼いだお金から、設備投資に使ったお金を引いた残りをフリーキャッシュフローと呼びます。Amazonはこれが、直近1年間で424億ドルのマイナスになりました。
つまり市場の関心は、「AIで売上が伸びるか」から「巨額の投資を回収して、利益として残せるか」に移ったのです。売上が伸びていても、手元に残るお金が減っていれば、株価は下がることがあります。
ドル円は月末ほぼ横ばい、月中は2.88円の値幅
ドル円(1ドルが何円かを示す為替レート)は、月末で比べるとほとんど動いていません。日本銀行が公表する東京市場17時時点の値で、9月30日は156.90円、10月30日は157.55円でした。
ただし月の途中では、1ドル156.07円から158.95円の間で動いています。2.88円の値幅があり、為替も落ち着かない1カ月でした。
引用:YAHOOファイナンスドル円為替相場2026年10月
2026年10月の金融政策(FOMC・日銀会合)
10月はFRB(アメリカの中央銀行)も日銀も、政策金利を据え置きました。政策金利とは、中央銀行が決める金利の基準です。
| 中央銀行 | 決定日 | 内容 |
| FRB(アメリカ) | 10月29日(日本時間) | 3.75〜4.00%で据え置き |
| 日銀会合 | 10月30日 | 1.25%程度で据え置き |
そもそも、金利の見通しで株価が動くのはなぜ?
10月の相場を理解するカギは、「金利がこの先どうなりそうか」という見通しです。
金利が上がると、預金や債券で受け取れる利息が増えます。値下がりのリスクがある株を買う理由が薄れ、株から預金や債券へお金が移りやすくなります。企業にとっても借入れの利息が増え、利益が減りやすくなります。そのため、金利の上昇は株価の重しになりやすいのです。逆に、金利が上がりにくくなる、あるいは下がりそうだと見られると、株価にはプラスに働きやすくなります。
ここで大切なのは、株価は「今の金利」だけでなく「この先の金利の予想」で動くという点です。中央銀行は、景気や物価を見て金利を決めます。そのため経済指標が発表されるたびに、金利の予想が変わり、株価も動くのです。
FRBは据え置き、ただし2人が利上げを主張
アメリカの金融政策を決める会合をFOMC(連邦公開市場委員会)と呼びます。10月27〜28日の会合では、政策金利を3.75〜4.00%で据え置きました。
据え置きは事前に予想されていました。ただし、12人の投票のうち2人が0.25ポイントの利上げを主張しています。声明でも、景気は強いペースで拡大し、物価は依然として高いという認識が示されました。
これは、「この先は金利を下げる方向に進む」とは言い切れない状況を示しています。発表後の株価は小幅に上昇しましたが、アメリカの長期金利は上昇しました。
日銀は1.25%程度で据え置き、保有するETFの売却ペースは引き上げ
日銀は10月29〜30日の金融政策決定会合で、政策金利を1.25%程度で据え置きました。9人のうち1人は、1.50%への利上げを提案しています。
あわせて日銀は、保有するETF(上場投資信託。株式市場で売買できる投資信託)の売却ペースを、2027年1月から約2.6倍に引き上げると決めました。日銀は過去に、株価を支える目的で大量のETFを買い入れてきました。
「日銀が株を売る」と聞くと不安になるかもしれません。ただし日銀は、売却額を市場全体の売買代金の約0.1%程度と想定しています。相場が荒れたときには、売却の調整や停止もできるとしています。
市場では、日銀がこの先も利上げを続ける姿勢を示したことが注目されました。10月30日には、一時1ドル157円台前半まで円高が進んでいます。
10月に注目された経済指標をやさしく解説
10月は、経済指標によって金利の予想が大きく揺れ動いた1ヶ月でした。ここでは、株価への影響が大きかった4つを取り上げます。経済指標を見るときは、結果そのものより「市場予想と比べてどうだったか」をみるのも大切です。株価は、多くの投資家の予想をあらかじめ反映して動いているためです。
米雇用統計(悪い結果なのに株価は上昇)
10月2日に発表された9月分の米雇用統計は、予想を大きく下回りました。雇用統計は、アメリカで働く人がどれだけ増えたかなどを示す指標です。
| 項目(9月分) | 結果 | 市場予想 |
| 雇用者数の増加(前月比) | 2.9万人 | 9.0万人 |
| 失業率 | 4.2% | 4.1% |
雇用者数は、農業以外で働く人の数(非農業部門雇用者数)の増え方です。予想の3分の1以下にとどまり、7月と8月の分も合わせて6万人下方修正されました。雇用が弱いのは、本来は景気にとって悪いニュースです。ところが発表直後、株価は上昇しました。雇用が弱ければ、FRBはこれ以上金利を上げにくくなると考えられたためです。「悪いニュースで株が上がる」のは、金利の予想が変わったことが理由でした。
米CPIとPPI(物価の上がり方が再び加速)
10月の半ばに流れが変わりました。10月14日に発表された9月分のCPI(消費者物価指数はモノやサービスの値段の動きを示す指標)が、予想を上回ったのです。
| 項目(9月分) | 結果 | 市場予想 |
| 米CPI 前年同月比 | +3.7% | +3.6% |
| コアCPI 前月比 | +0.3% | +0.2% |
| PPI 前月比 | +1.3% | +0.5% |
コアCPIは、値動きの大きい食品とエネルギーを除いた物価です。総合のCPIは前月比0.6%上昇で、ガソリン価格の上昇が大きく押し上げました。
翌15日のPPI(生産者物価指数。企業どうしで取引するモノの値段の動き)は、さらに強い結果でした。前月比1.3%上昇と予想の0.5%を大きく上回り、2022年3月以来の大きな伸びとなりました。
物価が上がり続けると、FRBは金利を下げにくくなります。月初に「金利上昇はそろそろ終わりか?」と期待した投資家にとっては、その期待が崩れる結果でした。
米GDP(景気は予想以上に強い)
10月29日には、7〜9月期のGDP(国内総生産。国全体で生み出したモノやサービスの合計)が発表されました。成長率は年率3.4%で、予想の3.2%を上回り、4〜6月期の2.2%から加速しました。(年率とは、その期間の成長ペースが1年続いた場合に換算した数字です。)
10月の指標は、雇用は弱いのに、個人消費や企業の投資は強いという結果になりました。景気が強く物価も高ければ、金利を下げる理由は見当たらないので、「金利は早く下がらない」という見方が、月末にかけて再び強まりました。
日本の指標(日銀短観と全国CPI)
10月1日に日銀短観が発表されました。日銀短観は、日銀が全国の企業に景気の良し悪しをたずねる調査です。結果は、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた数字(業況判断DI)で示されます。
| 項目(9月調査) | 結果 | 市場予想 | 前回 |
| 大企業・製造業 | +24 | +25 | +22 |
| 大企業・非製造業 | +35 | +36 | +37 |
製造業は改善しましたが、非製造業は悪化しました。3カ月後の見通しはどちらも下がっており、企業が先行きに慎重になっていることがうかがえます。
10月23日に発表された9月分の全国CPIは、生鮮食品を除いた指数が前年同月比2.1%上昇でした。予想どおりで、8月の1.7%から伸びが高まっています。日本の物価の伸びは、日銀が利上げを続けるかどうかを判断する材料になります。
2026年11月の注目日程と見るべきポイント
11月は、次の12月のFOMC会合、日銀会合に向けて「金利を動かすだけの材料がそろうか」を確かめる1ヶ月になります。次回はFOMCが12月8〜9日、日銀が12月17〜18日です。
| 日本時間 | イベント | 見るべきポイント |
| 11月6日 22時30分 | 米雇用統計(10月分) | 9月の弱い雇用が続くか |
| 11月10日 22時30分 | 米CPI(10月分) | 9月の物価の上振れが続くか |
| 11月13日 22時30分 | 米PPI(10月分) | 9月の急上昇が一時的だったか |
| 11月16日 8時50分 | 日本のGDP速報(7〜9月期) | 個人消費と設備投資の強さ |
| 11月17日 22時30分 | 米小売売上高(10月分) | 物価が高くても消費が続くか |
| 11月19日 4時 | FOMC議事要旨(10月会合) | 利上げを求める意見がどこまで広がっていたか |
| 11月20日 | 日本の全国CPI(10月分) | 物価の伸びが2%を超えて続くか |
| 11月25日 22時30分 | 米PCE物価指数(10月分)・米GDP改定値 | FRBが重視する物価の流れ |
議事要旨とは、会合でどのような議論があったかをまとめた資料です。
PCE物価指数(個人消費支出物価指数)は、FRBが物価の目安として特に重視している指標です。アメリカは11月1日に夏時間が終わったため、米国の指標の発表は日本時間で1時間遅くなっています。
たとえば米CPIが再び予想を上回れば、金利が下がりにくいという見方が強まり、株価の重しになりやすくなります。逆に物価の伸びが落ち着けば、その警戒が和らぐ可能性があります。ただし10月の例のとおり、同じような結果でも、そのときの状況によって株価の反応は変わります。
※日程は2026年10月31日時点の予定です。変更される場合があります。
投資する際に初心者の方が気をつけたいこと
10月の相場から、初心者の方に特に意識していただきたい点を3つにまとめます。
1. 「悪いニュース=株安」と決めつけない
10月の雇用統計のように、悪いニュースでも金利の予想が変われば株価が上がることがあります。ニュースの良し悪しより、「金利の見通しがどう変わったか」に注目してみてください。
2. テーマの人気と会社の利益を分けて考える
AIのように話題のテーマでも、売上の伸びがそのまま株価の上昇につながるとは限りません。利益や手元に残るお金がどうなっているかも確認することが大切です。
3. 月末同士の比較だけで相場を判断しない
10月の日経平均は月間で約5%の下落でしたが、月初の高値からは約1割下げていました。月の途中で大きく動くこともあると知っておくと、慌てずに済みます。すでに株を持っている方は、株価が下がったときに次の点を確認してみてください。
- 相場全体が下がって持ち株も下がった →会社の業績や見通しに変化があったか
- 話題のテーマ株が大きく下がった→買った理由が「人気」だったか「業績」だったか
- 持ち株だけが大きく下がった→決算などで会社自身の前提が変わっていないか
株価は、景気や金利の変化によって購入時より大きく下がる可能性があります。生活に必要なお金とは分けて、余裕資金で投資することを心がけましょう。
まとめと藤村からひと言
2026年10月は、雇用・物価・景気の指標が出るたびに金利の予想が揺れ、日経平均は月間で5.19%下落しました。中心となったのはAI関連株で、売上の伸びだけでなく、投資を回収できるかが問われ始めています。11月は金融政策の会合がない分、雇用統計や物価指標が12月の会合を占う材料として注目されます。
10月の相場は、テーマの人気と会社の実力の違いが表れた1カ月だったと私は見ています。AIの需要は今も伸びています。それでも、株価がその期待をどこまで先取りしていたかによって、値動きは大きく変わりました。
ロボアドバイザーや手数料無料の証券会社が広がり、投資を始めるハードルは大きく下がりました。それでも、どの会社に投資するかを見極めることは、今も人が判断しなければならない部分ですし、買った後に、その会社の前提が変わっていないかを確かめ続けることも同じです。
私は証券会社の投資情報部にいたころ、年間数十社から数百社を取材してきました。その経験から言えるのは、話題の大きさと会社の稼ぐ力は必ずしも一致しないということです。だからこそ、「人気があるから」ではなく「この会社は利益を生み出し続けられるか」という問いを持ち続けることが大切だと考えています。
難しく感じるかもしれませんが、最初は、ニュースを見たときに「これは会社の利益にどう関係するのだろう」と考えてみるだけで十分です。その小さな習慣が、相場に振り回されない力につながっていきます。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではありません。
投資にはリスクが伴います。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。
掲載情報は2026年10月31日時点のものであり、最新情報と異なる場合があります。



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