
公的年金は原則65歳から受け取れますが、受給開始時期は60〜75歳の間で選択でき、繰り下げるほど受給額は増えます。一方で、早めに受け取って投資に回す方法にも、運用次第で繰り下げ以上のリターンを狙えるという強みがあります。
定年が近い方のなかには「早めに受け取って投資に回した方が利回りが高くて得ではないか」と考える方もいるのではないでしょうか。
ただし、繰り下げ受給にも投資にもそれぞれ異なるメリットがあり、どちらが有利かは一概には言えません。
そこで本記事では、繰り下げ受給と投資それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、自分に合った選び方を解説します。
パターン別の向いている人も紹介しているので、自分に合った選択肢を見つけるための参考にしてみてください。
目次
年金は繰り下げるべきか、早くもらって投資すべきか?|パターン別

多くの専門家は「繰り下げ受給」または「通常受給」を選ぶスタンスを推奨しています。
年金は生涯受け取れる終身収入であり、長生きするほど安定した備えになるからです。
ただし、十分な資産と投資経験がある方であれば、早めに受け取って運用に回す選択肢も視野に入るでしょう。
自分にあったベストな方法は、貯蓄額・投資経験・健康状態によって異なるため、ここからは3つのパターン別に、向いている人を解説します。
年金「繰り下げ受給」が向いている人
繰り下げ受給が向いているのは、以下のような方です。
- 価格が変動する金融商品の運用に抵抗がある方(投資初心者)
- 何歳まで生きても収入が途切れない安心感を持ちたい方
- 65歳以降も働ける見込みがあり、年金を受け取らなくても生活費を確保できる方
繰り下げ受給は、受給開始を遅らせることで将来的に受け取る年金額を増やせる仕組みです。投資のような価格変動リスクはなく、長生きするほど受取総額が増えるため、安定した老後収入を重視する方に向いています。
「年金通常受給+投資」が向いている人
65歳から年金を受け取りながら余裕資金を投資に回す方法は、以下のような方に向いています。
- 年金以外でも資産を増やしたいが、大きなリスクは避けたい方
- 退職金や一定の貯蓄があり、生活費とは別に運用できる資金がある方
- 投資経験はあるが、繰り上げ受給による年金減額リスクを負いたくない方
年金収入という安定した土台を持ちながら、余裕資金を運用に回せる点が強みです。年金額を減らすことなく資産形成を進めたい方に向いています。
「年金繰り上げ受給+投資」が向いている人
60〜64歳で年金を受け取りながら投資に回す方法は、以下のような方に向いています。
- 十分な貯蓄があり、年金額が減っても生活に支障が出ない方
- 健康上の事情など、早めに年金を受け取りたい理由が明確な方
- 投資経験が豊富で、運用結果の変動を理解したうえでリスクを取れる方
繰り上げ受給は受給開始を早めた月数に応じて年金額が減り、その減額率は生涯変わりません。
年金収入が少なくなる分を投資のリターンで補う前提になるため、元々の生活基盤が安定しており、投資リスクを許容できる方でなければ選びにくい戦略でしょう。
年金の繰り上げ・繰り下げの仕組み

年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、60〜75歳の間で自分で選択できます。60〜64歳に早める方法が「繰り上げ受給」、66〜75歳まで遅らせる方法が「繰り下げ受給」です。
両者の違いを以下の表にまとめました。
| 繰り上げ受給 | 繰り下げ受給 | |
| 受給開始年齢 | 60〜64歳 | 66〜75歳 |
| 増減率 | 1か月早めるごとに0.4%減額 | 1か月遅らせるごとに0.7%増額 |
| 最大増減率 | 最大24%減額(60歳開始) | 最大84%増額(75歳開始) |
| 手続き後 | 繰り上げ請求後は取り消し不可 | 繰り下げ受給開始後は変更不可 |
繰り上げ受給は、一度請求すると取り消せません。また、繰り下げも受給開始後の変更はできません。ただし、繰り下げを検討している間は、66歳以降でも65歳時点にさかのぼって年金を請求できます。
受給開始時期による金額の違いを、65歳から月15万円受け取れる方を例に示します。
- 60歳で繰り上げ受給:24%減→月11万4,000円
- 65歳で通常受給:月15万円
- 70歳まで繰り下げ受給:42%増→月21万3,000円
受給開始の時期によって年金額は大きく変わるため、増減率だけでなく、受給開始までの生活費をまかなえるかも含めて判断しましょう。
「年金の繰り下げ受給」が投資より優れている3つのポイント

「年金の繰り下げ受給」が投資より優れているポイントは、以下の3つです。
- 元本割れの心配がない|老後の安心材料
- 終身で増額分を受け取れるため長生きするほど得になる
- 働きながらでも年金カットの心配なく増額分を受け取れる
繰り下げ受給が投資より優れている理由を理解することで、自分に合った年金の受け取り方を判断しやすくなります。
元本割れの心配がない|老後の安心材料
繰り下げ受給の強みは、投資のような元本割れリスクを負わずに年金額を増やせる点です。
増額率は制度で決まっており、株価など市場の値動きに左右されません。
株式や投資信託であれば相場が下落すると元本を割り込む可能性がありますが、繰り下げ受給で増えた年金額は、市場が暴落しても減りません。
投資の不確実性を避けながら将来の収入を増やしたい方にとって、繰り下げ受給は確実性の高い選択肢だと言えます。
終身で増額分を受け取れるため長生きするほど得になる
繰り下げ受給で増えた年金額は一時金ではなく、生涯にわたって受け取れます。長生きするほど累計の受給総額が積み上がる仕組みです。
以下の表では、65歳から年180万円受け取れる方を例に、70歳まで繰り下げた場合の累計受給額を比較しました。
年齢 | 65歳から受給(年180万円) | 70歳から受給(年255.6万円) |
|---|---|---|
80歳時点 | 2,700万円 | 2,556万円 |
82歳時点 | 3,060万円 | 3,067万円 |
85歳時点 | 3,600万円 | 3,834万円 |
70歳まで繰り下げた場合、82歳ごろに65歳受給の累計額を上回り、以降は長生きするほど差が広がります。
公的年金は生涯受け取れるため、繰り下げで受給額を増やしておくことは、長生きした場合の資金不足に備える保険としての役割を果たすでしょう。
働きながらでも年金カットの心配なく増額分を受け取れる
65歳以降も働きながら繰り下げ受給を選ぶと、給与と年金を両方フルで受け取れる可能性があります。
通常、65歳以降に給与と年金を同時に受け取る場合、合計が月65万円を超えると年金が減額・停止される「在職老齢年金」の対象になります。
しかし、繰り下げ受給中は年金を受け取っていないため、この減額が発生しません。
働きながら年金額を増やし続け、受給開始後はカットなしで増額分を受け取れる点が強みです。
ただし、基準額を超えて支給停止となっていた部分は繰り下げ増額の対象外になるため、給与水準を確認しておきましょう。
「投資」が年金の繰り下げ受給より優れている3つのポイント

「投資」が年金の繰り下げ受給より優れているポイントは、以下の3つです。
投資には元本割れのリスクがある一方、運用成果や税制優遇、資金の使いやすさでは繰り下げ受給と異なる強みがあります。それぞれの強みを確認したうえで、自分の資産状況や目的に合った選択をしてみてください。
運用がうまくいけば繰り下げより高いリターンが期待できる
投資の運用がうまくいけば、繰り下げ受給による増額以上のリターンを得られる可能性があります。
年金の繰り下げ受給は確実に増えますが、増額率には上限※があります。※1か月遅らせるごとに0.7%増額、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%
一方、投資は相場次第でそれを上回るリターンを期待できる点が強みです。ただし、投資の利回りは保証されておらず、元本割れのリスクもあります。
上記の計算は、あくまで「うまくいけば」が前提であることを理解しておきましょう。
NISA口座を利用すれば運用益が非課税になる
NISA口座を利用すれば、投資で得た利益に発生する税金(約20.315%)が非課税になります。運用益をそのまま手元に残せる点は、繰り下げ受給にはない強みです。
一方、公的年金は雑所得として扱われ、繰り下げで受給額が増えると医療・介護保険料などの負担が増える場合があります。節税効果を重視するなら、NISA口座を活用した投資の方が有利になるケースもあります。
必要なタイミング・金額で自由に引き出せる
投資で運用している資産は、必要なタイミングで必要な金額だけ売却して現金化できます。
年金は受給開始年齢や受取額を一度決めると原則変更できませんが、投資資産は保有商品の一部をいつでも売却可能です。
急な医療費・介護費用・家族への資金援助など、まとまったお金が必要になった場合でも、状況に応じて柔軟に対応できます。
年金にはない「いつでも・いくらでも引き出せる」という柔軟性が、投資のメリットです。
年金の「繰り下げ受給」or「投資」を選ぶ前にやるべきこと

繰り下げ受給と投資で迷ったら、まず以下の3つを確認しましょう。
| やるべきこと | ポイント |
| 自分の年金額を試算する | ねんきんネットや公的年金シミュレーターで、将来の年金額を試算する |
| 家族と老後プランを話し合う | 配偶者との年齢差や生活費、遺族年金などを踏まえ、家族全体の老後資金を考える |
| 迷ったら専門家に相談する | 貯蓄額や家族構成、投資経験によって選択肢は変わるため、FPなどへの相談を検討する |
抽象的な損得計算だけで判断するのは難しく、自分の状況に合わせた判断が必要です。「ねんきんネット」で受給額を試算し、家族と話し合った上で方針を決めましょう。
年金の繰り下げ受給・投資に関するよくある質問

「年金の繰り下げ受給」or「投資」に関するよくある質問に回答します。
それぞれ見ていきましょう。
Q1.年金をNISAで運用するのはあり?
A1.年金のうち、生活費に使わない余裕資金をNISAで運用することは選択肢のひとつです。NISAでは運用益が非課税になるため、老後資金を効率よく増やせる可能性があります。ただし、元本保証はありません。生活費や医療費に充てる資金まで投資に回さず、当面使う予定のない資金の範囲で運用しましょう。
Q2.年金の繰り上げ受給の落とし穴は?
A2.年金の繰り上げ受給のデメリットは、受給額が生涯にわたって減額される点です。受給開始を1か月早めるごとに0.4%減額され、60歳まで繰り上げると最大24%減となります。
一度請求すると取り消せないため、長生きした場合の生活費も考慮したうえで判断しましょう。
Q3.年金の繰り下げ受給にデメリットはある?
A3.年金の繰り下げ受給のデメリットは、受給開始まで年金を受け取れないことです。その間の生活費を別途確保する必要があります。また、繰り下げで年金額が増えると税金や社会保険料の負担も増えるため、増額率ほど手取りが増えないケースもあります。
増額率だけでなく、手取り額と生活費のバランスも確認した上で検討しましょう。
夫婦二人で5,000万円の老後資金を「投資」で築ければと思いながら、資産を減らしてしまうのが怖くて踏み出せないという方には、投資顧問の利用をおすすめします。当サイトを運営するライジングブル投資顧問は、株の「売買サポート」を行っております。ライジングブルの売買サポートサービスは、3ヶ月9,000円(税込)で買い推奨だけではなく、売却、銘柄入替するところまで、リスク管理をしながらサポートします。
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まとめ

年金の繰り下げ受給と投資にはそれぞれ異なる特徴があり、どちらが正解かは一概には言えません。
繰り下げ受給は元本割れのリスクがなく、長生きするほど受取総額が増える安定した方法です。
一方、投資は運用がうまくいけば繰り下げを上回るリターンが期待できますが、元本割れのリスクも伴います。
まずはねんきんネットで自分の受給額を試算し、家族の状況や生活費も踏まえたうえで判断しましょう。
【ご注意事項】
株式投資には元本割れのリスクがあります。
配当金は企業の業績によって減額・廃止になる場合があります。
投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
記載のデータは2026年9月15日時点のものです。
最新情報は各企業のIR資料等でご確認ください。




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