つみたて全世界株式を解説！投資信託の運用コストに注目

現在、投資信託は約6,000本ありますが、その中でも全世界株式型のインデックスファンドの人気が高くなっているようです。

全世界株式型の投資信託は、投資する地域が全世界に分散しているため、リスク低減効果が期待できることも人気の要因でしょう。

資産運用をする人が最も重要視するのはリターンだと思いますが、投資信託の運用中にかかるコストを意識することも大切です。

本記事では、全世界株式型のインデックスファンド「つみたて全世界株式」について解説します。また、投資信託の運用コストについても検証します。

つみたて全世界株式とは

つみたて全世界株式の特徴

つみたて全世界株式は、三菱UFJアセットマネジメントが運用する９つある「つみたてんとうシリーズ」のひとつです。「つみたてんとうシリーズ」は、長期・積立・分散投資を目的として設定された投資信託です。

新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の両枠で購入することができます。

つみたて全世界株式の投資対象地域および投資対象資産は、新興国を含めた全世界の株式です。これ1本を購入するだけで、全世界の株式へ投資をすることができます。

ところで、三菱UFJアセットマネジメントの運用する姉妹ファンドに、「eMAXIS Slim全世界株式（オール・カントリー）」という人気ファンドがあります。

両者の違いはというと、eMAXIS Slimシリーズはネット購入のみ、つみたてんとうシリーズは、ゆうちょ銀行をはじめとした複数の金融機関の窓口で購入可能であるという点です。

つみたて全世界株式は、購入手数料、売却時手数料（信託財産留保額）は無料です。信託報酬のみがかかります。

【基本情報】　 

  （基準日2024.4.2）

つみたて全世界株式の人気は

投資信託の人気のバロメーターは資産の流出入額で見ることができます。つみたて全世界株式の純資産額の推移を確認してみましょう。

2024年1月初旬には純資産総額は50億円未満でしたが、その後、純資産額が急増し2月中旬に100億円を突破しました。

新NISAのスタートしたことで、個人投資家からのニーズが高まったものと推測されます。

（出典：MUFG　つみたて全世界株式 | 投資信託なら三菱UFJアセットマネジメント (mufg.jp)

つみたて全世界株式の対象インデックスの国別構成比

つみたて全世界株式は、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスをベンチマークとして、これに連動した投資成果を目指しています。

MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスの国別構成比は下記の通りです。

（2024.3.26時点）

MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは時価総額加重平均型です。

ある国の株価が低迷すれば、その国の構成比率は小さくなるなど構成比はその時々で変動します。現在は、全体の6割強がアメリカで、アメリカを含む先進国の株式が約9割を占めています。

つみたて全世界株式の組入上位銘柄

つみたて全世界株式のベンチマーク、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスは、全世界（先進国、新興国）の大型株、中型株を中心とした約2,800銘柄から構成されています。組入銘柄の上位10銘柄は以下の通り。（2024.2.29時点）

【組入銘柄トップ10】

上位銘柄は、誰もが知る有名企業ですが、2,800銘柄が組み入れられているとあって、上位10銘柄でも決して高くない比率です。1位のマイクロソフトで4.0%程度、8位以降は1％未満です。このことからも多くの銘柄に分散投資されていることがわかります。

つみたて全世界株式のリターン

つみたて全世界株式の過去3年間のリターンです。

（2024.3.29時点）

ファンドの設定日が2020年6月ということで過去3年分のリターン実績しかありませんが、直近1年のパフォーマンスは非常に高くなっています。

NISAの非課税効果と運用コストが運用収益に与える影響

NISAを簡単におさらい

2024年1月より新NISAがスタートしました。まずは、新NISAについておさらいしておきましょう。

新NISAではつみたて投資と一括投資が併用できるため、両者を組み合わせれば投資戦略の幅が広がります。投資商品は好きなタイミングで換金ができ、投資額上限までは何度でも再投資できる仕様になったため、ライフプランに合わせた使い方が可能です。

NISAのつみたて投資をシミュレーション

次に、NISAを使い下記の条件で積立投資をした場合の運用成果をシミュレーションしてみましょう。

運用期間中の利回りを10%と想定し、毎月3万円の積立投資を20年間継続した場合、元本720万円に対して利益は1,341万円となります。元本を含めた運用成績は2,061万円となる計算です。

本来は投資の利益には約20％の税金がかかります。つまり、課税口座の場合、約268万円（1,341万円×20%）が税金として徴収され、手元に残るのは1,793万円になってしまいます。

しかし、非課税口座のNISAでの運用であれば、2,061万円全額が収益として手元に残ります。これがNISAの非課税の効果です。

信託報酬が運用成果に与えるインパクトを検証

最後に、投資信託の運用コストが運用成果に与える影響を検証しましょう。

投資信託は、運用をプロにお任せすることのできるいわば「ほったらかし投資」ですが、その運用には一定の手数料を要します。

手数料は、
①投資信託を買うときにかかる購入手数料
②売るときにかかる売却手数料（信託財産留保額）
③運用中に毎日かかる信託報酬（運用管理費用）
の3つです。

NISAつみたて投資では、売買手数料が無料であるケースが多いですが、信託報酬（運用管理費用）は必ずかかるコストです。投資信託の信託報酬は交付目論見書等で確認ができます。

つみたて投資の場合、信託財産が時間の経過とともに積みあがっていくため、比例して引かれる信託報酬額も増えていきます。

前述のシミュレーション結果に信託報酬コストは含まれていません。実際の運用では信託報酬がかかるため、運用収益は上記シミュレーション結果を下回ります。

そこで、信託報酬を次の3つの利率とした場合、その利差が20年後の運用収益にどのような影響を与えるか検証してみましょう。

【運用条件】

想定利回り：10％
積立額：毎月3万円
積立期間：20年

託報酬率が0.06%と1％の場合では、20年後の手取り額が200万円以上違ってしまいます。

わずかと思える信託報酬率の差が長年の間に積み重なり、運用収益としての手取り額に大きな差となって表れることがわかります。信託報酬は低いに越したことはありません。

まとめ

つみたて全世界株式は、全世界の株式へ投資ができる投資信託です。

全世界株式型の投資信託は人気が高く資産形成の王道ともいえますが、同じ種類の投資信託はいくつも存在するため、ファンド選びに迷うことがあるかもしれません。選ぶ際の指標のひとつに運用コストを比較する方法があります。

信託報酬は、毎日、信託財産（保有残高）から差し引かれるコストです。

時間の経過と共に資産を積み上げていく積立投資の場合は特に運用コストの差が投資のパフォーマンスを左右することにもなります。

つみたて全世界株式の運用コストは、ネット証券の投資信託の運用コストと比較すれば多少、割高感はあるかもしれません。しかし、金融機関の窓口で購入できるという強みがあります。だれかに相談したい、商品説明を受けたいなどのニーズに応えることのできる投資信託と言えそうです。

全世界株式型の投資信託の購入を検討している方は、つみたて全世界株式を、購入先の候補にしてはいかがでしょうか。