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資産除去債務とキャッシュフロー計算書について

資産除去債務とキャッシュフロー計算書について

皆さんは、「資産除去債務」という科目を知っているでしょうか。この資産除去債務は、2010年4月以降に開始する事業年度から、金融商品取引法の適用会社およびその子会社や関連会社、また会計監査人を設置する会社およびその子会社で義務化されました。

そこで今回は、資産除去債務の内容とキャッシュ・フロー計算書への記載方法について解説します。

資産除去債務とは

資産除去債務とは、有形固定資産の除去に関して、法令または契約で要求される処分、撤去にかかる負担額を指します。以前は、資産処分時に費用が生じた場合には、その年度で費用計上していましたが、高額の資産の場合には、多額の処分費用が一定時期に生じる恐れがあり、その潜在的債務を適正に把握しておく必要があります。

そこで、資産を保有する場合、処分にかかる費用をあらかじめ負債として計上しておくのが資産除去債務です。

資産除去債務の会計処理の流れ

固定資産を購入した場合の簿記の仕訳としては、借方に固定資産の該当科目を計上し、貸方に現金を計上しますが、あわせて、当該資産の処分にかかると考えられる費用を見積り、割引現在価値に引き直して、資産除却債務を負債として計上します。債務除却債務を貸方に計上した場合の反対科目は、当該固定資産の科目になります。

つまり、資産と負債とを両方計上します。これで、損益には影響を与えないことが可能となるからです。そして、各事業年度においては、適正に費用配分する必要があることから、購入した資産の減価償却に加え、資産除却債務にかかる資産についても減価償却を行っていきます。

上述した内容では、抽象的で分かりにくいと思いますので、具体例で見てみましょう。

例)自動車を300万円、キャッシュで購入した。耐用年数は6年。資産除却債務は18万円の場合(本来は、割引現在価値も求めるが、計算が複雑になるので今回は無視する)。

・購入時

(借方)車両運搬具 300万円 / (貸方)現金 300万円
(借方)車両運搬具 18万円 / (貸方)資産除却債務 18万円

・決算時

(借方)減価償却費 50万円 / (貸方)減価償却累計額 50万円(300÷6)
(借方)減価償却費 3万円 / (貸方)減価償却累計額 3万円(18÷6)

・資産除去時(6年後に、予定通りの額で資産を除去した場合)

(借方)車両運搬具 318万円 / (貸方)現金 318万円
(借方)資産除去債務 18万円 / (貸方)現金18万円

資産除去債務のキャッシュ・フロー計算書上の取扱い

 

資産除去債務を履行した場合には、支出額は「投資活動によるキャッシュ・フロー」の項目として計上します。資産除去債務は、固定資産購入に伴ってかかる負担額なので、投資活動として捉えられるわけです。

先ほどの例の場合、投資活動によるキャッシュ・フローの欄に△18万円と計上します。なお、除去時の減価償却費は、毎決算期と同様営業キャッシュ・フローの欄に加算します。

・注記

資産除去債務の会計処理に関連して、重要性が乏しい場合を除き、注記をする必要があります。注記の内容については、「資産除去債務に関する会計基準」の第16項に規定されています。

資産除去債務は、金額が小さいときはその必要性はあまり感じられませんが、大規模な機械や設備の場合、解体や引取りに多額の費用がかかることは容易に想定されます。あらかじめ負債として計上しておくことは、適正な財務状況を示す上でとても重要なことです。

実際には、割引現在価値に引き直して、利息を計上するなどもっと複雑になりますが、今回は基本の仕組みを理解できるよう省略しました。興味のある人は、割引現在価値の処理についても勉強してみて下さい。

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